疾患解説
フリガナ | カンドウミャクシッカン |
別名 | 動脈硬化性冠動脈疾患 |
臓器区分 | 循環器疾患 |
英疾患名 | Coronary Artery Disease(CAD) |
ICD10 | I25.1 |
疾患の概念 | アテロームが原因の冠動脈の血流障害で、臨床像として、無症候性心筋虚血、狭心症、急性冠症候群(不安定狭心症,心筋梗塞)、心臓突然死などがある。表在冠動脈の内腔に50%以上の狭窄がある場合を冠動脈疾患と呼んでいるが、血栓が形成される症例の50%は、狭窄が内腔の40%以下である。狭窄部に血栓形成物質が付着すると、血小板と凝固カスケードが活性化し血栓を生じるが、2/3の患者は、自然に血栓が溶解し、24時間血栓性閉塞が認められる症例は30%に過ぎない。しかし、血栓形成を来したほぼ全ての症例に組織壊死が認められる。安定狭心症が、冠動脈疾患の半数近くに見られる。アテローム性プラークが狭窄の最大の原因であるが、その他の原因として先天性冠動脈異常、心筋ブリッジによる冠動脈圧迫、血管炎、放射線療法後、コカイン使用、大動脈弁狭窄症、肥大型心筋症、冠攣縮、自然冠動脈解離、メタボリック症候群などがある。 |
診断の手掛 | 息切れ、易疲労感が前駆症状であるが、30歳以上の男性、40歳以上の女性が胸部不快感、胸骨下の疼痛、圧迫感を訴えるたら積極的に心電図検査、負荷試験、冠動脈造影、心筋マーカー検査を行う。 |
主訴 |
易疲労感|Fatigue 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 胸骨下疼痛|Infrasternal pain 胸痛|Chest pain 胸部圧迫感|Cest oppression 胸部不快感|Cest discomfort 呼吸困難|Dyspnea 発汗異常|Dyshidrosis/Paridrosis めまい|Dizziness |
鑑別疾患 |
安定労作性狭心症 不安定狭心症 非ST上昇型心筋梗塞 ST上昇型心筋梗塞 うっ血性心不全 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S, /S] Creatinine|クレアチニン [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S] LDL-Cholesterol|LDL-コレステロール/低比重リポ蛋白コレステロール [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Lymphocytes|リンパ球 [/B] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S] Uric Acid|尿酸 [/S] |
異常値を示す検査 |
Adiponectin|アディポネクチン [/S] Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/S] Anti-Chlamydia Pneumoniae Antibodies|クラミジア・ニューモニエ抗体/抗クラミジア・ニューモニエ抗体 [/S] Anticardiolipin Antibodies|抗リン脂質抗体/抗PL抗体/抗カルジオリピン(CL)抗体/ループスアンチコアグラント(LA)/リン脂質抗体 [/S] Antiphospholipid Antibodies|抗リン脂質抗体/抗PL抗体/抗カルジオリピン(CL)抗体/ループスアンチコアグラント(LA)/リン脂質抗体 [/S] Antithrombin III|アンチトロンビンIII/アンチトロンビン [/P] Apolipoprotein A-I|アポリポ蛋白A-I [/S] Apolipoprotein A-II|アポリポ蛋白A-II [/S] Apolipoprotein B|アポリポ蛋白B [/S] Apolipoprotein B-100 [/S] Apolipoprotein C-II|アポリポ蛋白C-II [/S] Apolipoprotein C-III|アポリポ蛋白C-III [/S, /S] Apolipoprotein E|アポリポ蛋白E [/S] Apolipoproteins|アポリポ蛋白 [/U] Ceruloplasmin|セルロプラスミン/フェロオキシダーゼ [/S] Cholesterol, Esterified|エステル型コレステロール/コレステロールエステル [/S] Cholesterol, Nonesterified|遊離型コレステロール/遊離コレステロール [/S] Factor VII|第VII因子活性/安定因子/プロコンバーチン [/P] Factor VIII|第VIII因子活性/抗血友病因子 [/P] Folate|葉酸/プテロイルモノグルタミル酸/ビタミンM/乳酸菌発育因子 [/S, /S] Haptoglobin|ハプトグロビン [/S] HDL-Cholesterol:Cholesterol Ratio [/S] HDL2-Cholesterol|HDL2,3-コレステロール/HDLコレステロール亜分画 [/S] HDL2a-Apolipoprotein A-I [/S] HDL2b-Apolipoprotein A-I [/S] HDL3-Apolipoprotein A-I [/S] HDL3-Cholesterol|HDL2,3-コレステロール/HDLコレステロール亜分画 [/S] Heparin-releasable Platelet Factor 4 [/P] Hexosamine|ヘキソサミン [/S, /S] High Sensitive CRP|高感度CRP [/S] Homocysteine|ホモシステイン/ホモシスチン/総ホモシステイン [/P] Lactate|乳酸/ラクテート [/P] LDL-Cholesterol,Oxidized|酸化LDL/マロンジアルデヒド修飾LDL [/S] Lecithin:Cholesterol Acyltransferase Ratio [/S] Lipoprotein A-I [/S] Lipoprotein Lp (a)|リポ蛋白(a)/リポプロテイン(a) [/S] Mean Platelet Volume|平均血小板容積 [/Platelets] Preβ1-HDL-Apolipoprotein AI [/S] Protein C|プロテインC/プロテインC抗原量 [/P] Pyridoxal Phosphate|ビタミンB6/ピリドキサールリン酸 [/S] Thiobarbituric Acid-reacting Substances [/S] Tissue Plasminogen Activator Antigen [/P] Tissue Plasminogen Activator:Plasminogen Activator Inhibitor-1 Complex|組織プラスミノゲンアクチベータ・プラスミノゲンアクチベータインヒビター1複合体/t-PA・PAI-1複合体 [/P] Vitamin B12|ビタミンB12/コバラミン/シアノコバラミン [/S, /S] VLDL-Cholesterol [/S] von Willebrand Factor Antigen|第VIII因子様抗原/第VIII因子関連抗原/フォンウィルブランド因子抗原量 [/P] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/S] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/S, /S] α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [/S, /S] α2-Plasmin Inhibitor [/P] |
関連する検査の読み方 |
【アディポネクチン】 低値である。アディポネクチンは脂肪細胞で産生されるアディポサイトカインの一つで、内臓脂肪量と逆相関し肥満者は血中濃度が減少する。この蛋白はインスリン抵抗性の改善、血糖値・中性脂肪値の低下、血管の拡張による血圧低下、抗動脈硬化作用があり、また肥満により発現が低下するという特徴がある。臨床的には糖尿病、高血圧、肥満、メタボリック症候群で低アディポネクチン血症が見られるため、これら患者管理に有用とされる。また、喫煙者では非喫煙者に比べ約30%ほど低値になる。 【アポリポ蛋白】 A-I:B比動脈硬化の危険予測のために有用である。1.0では男女ともに相対危険度が3倍である。アポリポ蛋白はリポ蛋白の主要構成蛋白で、水に溶けにくい脂質と結合してリポ蛋白を作り血清中に溶け込んでいる。リポ蛋白はVLDL、LDL、HDLと食後一過性に血中に出現するカイロミクロンと中間型リポ蛋白(IDL)に分けられる。アポリポ蛋白のリポ蛋白への分布により、A-I、A-II、B、C-II、C-III、Eに分類されているが、臨床的には動脈硬化の危険因子としてA-IとBが測定される。 【リポ蛋白(a)】 動脈硬化と関連が深く、高値を示す。Lp(a)はアポ蛋白Bにアポ蛋白(a)が結合しているリポ蛋白である。虚血性心疾患、脳梗塞など各種の動脈硬化性疾患との関連が知られているが、構造上プラスミノゲンに類似していることから、血栓形成の促進にも関与していると考えられている。Lp(a)濃度は0.1~100mg/dLまで個人差が大きいが、同一個人では殆ど一定の値を示し大きな変動はない。濃度分布は低値に偏った分布を示し、現時点でのカットオフ値は30~40mg/dLとされている。臨床的には動脈硬化性疾患の危険因子の評価として測定する。 【ホモシステイン】 15.9μmol/L(基準範囲5~15μmol/L)以上の増加は心筋梗塞のリスクを3倍高める。Hcyはメチオニンの代謝産物でシステインと結合して血中に存在する。臨床的には脳血管障害の危険因子として動脈硬化症との関連が注目されている。脳卒中、心筋梗塞、動脈硬化症、深部静脈血栓症とHcyの血中濃度の間には優位の相関が認められるので、これら疾患の発症予測、経過観察に用いる。異常値を認めたらメチオニンとHcyの代謝に関連するシスタチオニンβ-シンターゼを測定する。 【マロンジアルデヒド修飾LDL/酸化LDL】 高値である。動脈硬化惹起性リポ蛋白である酸化LDL量の指標である。酸化LDLは動脈硬化の形成、進展に関与している酸化ストレスマーカーで、動脈硬化巣から様々な脂質酸化物と共に検出される。この物質は血管内皮下に容易に侵入し、マクロファージに取り込まれることで動脈硬化の初期病変であるプラーク形成と深い関係がある動脈硬化惹起性のリポ蛋白に一種である。 【高感度CRP】 リスクの高い患者では低濃度域を測定することで、発症が予知できる。健常人の血清中のCRP濃度は約600ng/mL(0.06mg/dL)であるが、通常法の基準範囲は0.1~0.3mg/dL以下である。高感度CRPは0.30mg/dL以下まで測定できるため従来健常者とされてきた慢性炎症の存在を知ることが出来る。慢性炎症は動脈硬化の危険因子であり、動脈硬化の予測因子として高感度CRPは重要な意義を持つ。 【リスク増加因子】 総コレステロールとLDL-コレステロールの増加、HDL-コレステロールの低下はリスク因子である。また、高血圧、糖尿病、肥満、若年発症のCAD、喫煙も危険因子である。 |
検体検査以外の検査計画 | 運動負荷試験、心電図検査、冠動脈造影検査、血管内超音波検査、CT血管造影検査、MR血管造影検査、冠血流予備能測定、心筋血流イメージング、心超音波検査、MRI検査、薬物負荷試験 |