疾患解説
フリガナ | トクハツセイカンシツセイハイエン |
別名 | 特発性線維化間質性肺炎 |
臓器区分 | 呼吸器疾患 |
英疾患名 | Idiopathic Interstitial Pneumonia(IIP) |
ICD10 | J84.1 |
疾患の概念 | 原因が特定できない間質性肺炎の総称で、特発性肺線維症、特発性器質化肺炎、非特異性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎関連間質性肺炎、リンパ球性間質性肺炎、急性間質性肺炎の7つのサブタイプがあり、主に肺生検の病理組織像により区別される。これらのサブタイプは、間質の炎症および線維化を特徴とし、全て呼吸困難を引き起こし、高分解能CTでびまん性異常所見、また生検で炎症、線維化またはその両方がみられる。50歳以上に好発しやや男性に多い。 |
診断の手掛 |
自覚症状に先行(5年程度)して胸部X線写真で線維性変化を指摘されていることが多い。乾性咳嗽、体動・運動時の咳、坂道での息切れを訴える患者を診たら本症を疑う。 【診断基準:2015年厚労省】 1.主要項目(1)腫瘍症状、理学所見及び検査所見 ①主要症状及び理学所見として、以下の1を含む2項目以上を満たす場合に陽性とする。1.捻髪音 2.乾性咳嗽 3.労作時呼吸困難 4.ばち指。②血清学的検査としては、1~4の1項目以上を満たす場合に陽性とする。1.KL-6上昇 2.SP-D上昇 3.SP-A上昇 4.LDH上昇。③呼吸機能1~3の2項目以上を満たす場合に陽性とする。1.拘束性障害(%VC<80%) 2.拡散障害(%DLCO<80%) 3.低酸素血症(以下のうち1項目以上)安静時PaO2:80Torr未満 安静時AaDO2:20Torr以上 6分間歩行時SpO2:90%以下。④胸部X線画像所見としては、1を含む2項目以上を満たす場合に陽性とする。1.両側びまん性陰影 2.中下肺野、外側優位 3.肺野の縮小。 ⑤病理診断を伴わないIPFの場合は、下記の胸部HRCT画像所見のうち1及び2を必須条件とする。1.胸膜直下の陰影分布 2.蜂巣肺 3.牽引性気管支炎・細気管支拡張 4.すりガラス陰影 5.浸潤影(コンソリデーション)。 (2)鑑別診断:膠原病や薬剤誘起性、環境、職業性などの原因の明らかな間質性肺炎や、他のびまん性陰影を呈する疾患を除外する。 (3)診断:(1)の①~⑤に関して、下記の全項目を満たす確実、およびほぼ確実な症例をIPFと診断する。 ①確実:(1)の①~⑤の全項目を満たすもの。あるいは外科的肺生検病理組織診断がUIPであるもの。 ②ほぼ確実:(1)の①~⑤のうち⑤を含む3項目以上を満たすもの。 ③疑い:(1)の⑤を含む2項目しか満たさないもの。 |
主訴 |
息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 乾性咳|Dry cough 呼吸困難|Dyspnea 咳|Cough 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 痰|Sputum チアノーゼ|Cyanosis/Cyanopathy ばち指|Dubbed finger やせ|Weight loss 労作時呼吸困難|Exertional dyspnea |
鑑別疾患 |
膠原病肺 薬剤性肺炎 慢性過敏性肺炎 サルコイドーシス|Sarcoidosis 家族性肺線維症 好酸球性肺炎|Pulmonary Infiltration with Eosinophilia/Eosinophilic pneumomia 塵肺症 びまん性汎細気管支炎 多発性筋炎/皮膚筋炎|Polymyositis/Dermatomyositis |
スクリーニング検査 |
C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Eosinophils|好酸球 [/BAL Fluid] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/BAL Fluid, /S] Leukocytes|白血球数 [/B, /BAL Fluid] Lymphocytes|リンパ球 [/BAL Fluid] Neutrophils|好中球 [/BAL Fluid] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/BAL Fluid] |
異常値を示す検査 |
CA 19-9|CA19-9 [/S] CD4+:CD8+ Lymphocytes Ratio [/BAL Fluid] Cells [/BAL Fluid] Endothelin-1|エンドセリン [/P] Eosinophil Cationic Protein|好酸球塩基性蛋白/好酸球顆粒蛋白/好酸球陽イオン蛋白/好酸球陽性荷電蛋白 [/BAL Fluid] KL-6 Antigen|シアル化糖鎖抗原KL-6/KL-6 [/S] Macrophages|マクロファージ [/BAL Fluid] Mucin-associated Antigen|ムチン様癌関連抗原 [/S] Surfactant Protein A|サーファクタントプロテインA/肺サーファクタントプロテインA [/S] Surfactant Protein D|サーファクタントプロテインD/肺サーファクタントプロテインD [/S] Type III Procollagen Amino-terminal Peptide-related Antigen [/BAL Fluid] Type IV Collagen 7S Domain [/S] |
関連する検査の読み方 |
【サーファクタントプロテインA】【サーファクタントプロテインD】 肺上皮障害の特異的マーカーであり、増加する。 【抗核抗体】【リウマチ因子】【免疫複合体】 明らかな膠原病所見がない一部の患者に認められる。 【LD】 上昇するが非特異的所見である。 【アンジオテンシン変換酵素】 上昇していればサルコイドーシスを考える。ACEは主として肺の血管内皮と腎で産生される酵素で、アンジオテンシンIを加水分解しアンジオテンシンIIに転換する作用がある。異常値を認めたらレニン活性、アンジオテンシンI、IIを測定し値を比較する。臨床的にはSarcoidosisの肉芽腫で産生され、腫瘍の大きさと相関することからSarcoidosisの診断、治療効果判定、予後推定に用いられる。 【P-ANCA】 血管炎が疑われる場合には有用である。P-ANCAは好中球細胞質にあるα顆粒中の酵素(ミエロペルオキシダーゼ)に対する抗体で好中球の細胞質部分と反応する。この抗体は血管炎症候群の病態形成の主要因であり、血管炎症候群の診断、活動性評価に極めて有用とされている。臨床的には顕微鏡的多発血管炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、特発性半月体形成性糸球体腎炎が疑われる場合に用いる。これら疾患における陽性率は70~100%と高い。ただし、健常者でも5%程度の頻度で陽性になりうるので注意する。 【シアル化糖鎖抗原KL-6】 増加する。 【動脈血ガス分析】 PaO2は運動負荷で著しく低下する。PaO2は動脈血中に溶解しているO2の分圧で、その値は血液中のO2の利用度を反映している。血中O2濃度低下やCO2濃度上昇があれば、肺のガス交換機能や換気運動の障害を考える。体内の酸素予備能は1リットル程度で極めて少なく、数分の供給停止は死にいたる。臨床的にはpH、PCO2、So2、HCO3-などと同時に測定し、肺のガス交換能を評価する。 【一酸化炭素拡散能】 低下する。一酸化炭素拡散能は肺胞から肺毛細血管を通り、赤血球に至るガス運搬効率の指標で肺間質、肺血管、気道、毛細血管の血液量により値が左右される。 【生検】 肺生検は診断の確認に必要である。 【気管支肺胞洗浄】 鑑別診断、疾患進行状況の把握、治療効果判定に有用である。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、胸部CT検査、高分解能CT検査、呼吸機能検査 |