疾患解説
フリガナ | プロラクチノーマ |
別名 |
高プロラクチン血症 下垂体性PRL分泌亢進症 プロラクチン分泌下垂体腺腫 |
臓器区分 | 内分泌疾患 |
英疾患名 | Prolactinoma |
ICD10 | D35.2 |
疾患の概念 | 下垂体前葉からのプロラクチンの分泌過剰で、男女共に性腺機能低下症を発症するが、患者は女性が多く、無月経、乳汁分泌を訴える。女性は、プロラクチン分泌性下垂体ミクロアデノーマか特発性高プロラクチン血症、男性は、大部分がプロラクチン分泌性マクロアデノーマである。下垂体腫瘤病変が、下垂体茎を圧迫し、プロラクチンの阻害作用を持つドパミン活性が抑制されることで、プロラクチン値が上昇することもある。フェノチアジン系薬剤、精神病薬、αメチルドパ、オピオイドなどで、高プロラクチン血症および乳汁漏出症が引き起こされることもある。原発性甲状腺機能低下症により高プロラクチン血症および乳汁漏出症が発症することがあるが、これは甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンの上昇が、甲状腺刺激ホルモンのみならずプロラクチンの分泌を増加させることが原因である。 |
診断の手掛 |
授乳していない女性に異常乳汁分泌、顔面紅潮、月経不順、無月経、不妊が見られたら本症を疑う。男性では頭痛、視野障害、性欲減退、勃起不全が見られたら本症を疑う。 【診断基準:2015年厚労省】 1.主要項目:(1)主症状:①女性:月経不順・無月経、不妊、乳汁分泌、頭痛、視野視力障碍 ②男性:性欲低下、陰萎、頭痛、視野視力障碍、女性化乳房、乳汁分泌 (2)検査所見:血中PRL基礎値の上昇:複数回、安静時に採血し、いずれも20ng/mL以上を確認する。 2.鑑別診断:薬物服用によるプロラクチン分泌過剰、原発性甲状腺機能低下症、異所性プロラクチン産生腫瘍、慢性腎不全、胸壁疾患。 3.診断基準:確実例:(1)の1項目を満たし、かつ(2)を満たすもの。 |
主訴 |
インポテンツ|Impotence 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 顔面紅潮|Facial suffusion 月経不順|Paramenia 視野障害|Disturbance in visual field 女性化乳房|Gynecomastia 頭痛|Headache/Cephalalgia 乳汁漏出|Nipple discharge 不妊|Stenility/Infertility 勃起障害|Erectile dysfunction 無月経|Amenorrhea 両耳側半盲|Bitemporal hemianopia |
鑑別疾患 |
下垂体腫瘍|Pituitary Tumor 肝硬変|Cirrhosis of Liver Chiari-Frommel症候群 甲状腺機能低下症|Hypothyroidism 先端巨大症|Acromegaly 慢性腎不全|Chronic Renal Failure 視床下部腫瘍 骨粗鬆症|Osteoporosis 薬剤(ドパミン受容体拮抗剤、α-メチルドパ、レセルピン、エストロゲン) |
スクリーニング検査 | Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/U] |
異常値を示す検査 |
11β-Hydroxy Androstanediol [/U] 11β-Hydroxy Etiocholanolone [/U] 16,17-Epiestriol [/U] 16-Epiestriol [/U] 16-Ketoestradiol [/U] 16α-Hydroxy Dehydroepiandrosterone [/U] 16α-Hydroxyestrone [/U] 17-Epiestriol [/U] 17α-Estradiol [/U] 17β-Estradiol|エストラジオール/E2 [/U] 2,3-Dimethoxyestradiol [/U] 2-Hydroxyestradiol-3-Methylether [/U] 2-Hydroxyestrone|2-ヒドロキシエストロン [/U] 2-Methoxyestradiol [/U] 2-Methoxyestrone [/U] 4-Methoxyestradiol [/U] 5-Androstenediol [/U] 5β-Tetrahydrocortisol [/U] 6-Dehydroestrone [/U] 6-Ketoestradiol [/U] 6-Ketoestriol [/U] 6α-Hydroxycortisol [/U] 6α-Hydroxyestriol [/U] Androsterone|アンドロステロン [/U] Dehydroepiandrosterone|デヒドロエピアンドロステロン [/U] Estriol|エストリオール/E3 [/U] Estrone|エストロン/E1 [/U] Etiocholanolone|エチオコラノロン [/U] Gonadotropins|ヒト絨毛性ゴナドトロピン/絨毛性ゴナドトロピン [/S] Prolactin|プロラクチン/乳汁分泌ホルモン [/P] Pyridinoline|ピリジノリン [/U] α-Subunit of Glycoprotein Hormones [/P] β-Chorionic Gonadotropin|ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット [/P] δ4-Androstenedione [/U] |
関連する検査の読み方 |
【プロラクチン:50ng/mL】 下垂体腫瘍の可能性25%。PRLは下垂体前葉から分泌されるポリペプチドで産褥期の乳汁分泌促進、成長ホルモン様作用、腎尿細管での水・電解質再吸収促進などの生理作用を持つ。臨床的には妊娠・産褥期以外に高値になれば全て病的状態と考える。臨床的にはProlactinomaを疑う場合、月経異常や男性性器異常を見た場合の必須検査である。300ng/mL以上あれば、ほぼプロラクチノーマと考えてよい。 【プロラクチン:40~85ng/mL】 頭蓋咽頭腫、甲状腺機能低下症、神経遮断薬、抗精神病薬の効果で認められる。 【プロラクチン:100ng/mL】 下垂体腫瘍の可能性50%。 【プロラクチン:200ng/mL以下】 下垂体圧迫の可能性が強い。 【プロラクチン:200~300ng/mL】 ほぼ100%下垂体腫瘍の可能性がある。 【ヒト絨毛性ゴナドトロピン】 低値または基準範囲内である。 【エストラジオール】 低値または基準範囲内である。E2は最も強いエストロゲン作用を持つホルモンで、卵巣と胎盤で産生され、卵巣の成熟に伴い増加し更年期になると減少する。正常月経周期を持つ女性では黄体形成ホルモンサージの一日前にピークを示し、排卵日頃に一度低下した後、黄体期に再び上昇する性周期を示す。卵巣から分泌されるE2は、下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)により分泌が調節されるが、LHとFSHの分泌を調節するネガティブフィードバック機構もある。臨床的にはFSHと共に卵巣機能の評価に用いられる。また、尿中E2は血中E2と良く相関することから一日単位の分泌量の推定の際に測定する。 【プロラクチン反復測定】 午前の遅い時間か午後の早い時間の値が、男性と非授乳期女性で、基準範囲の3~5倍に増加していれば下垂体腺腫を考える。 【TRH負荷試験】 TRH負荷でプロラクチンの増加率低下は本症の可能性が高い。薬剤性プロラクチノーマでは増加反応を認める。健常者ではTRH投与にGHは反応しないが、先端巨大症の約2/3はGHの上昇がみられ、樹状は不明であるが奇異反応とされている。また、TRHは下垂体前葉のPRL産生細胞に作用し、PRLの分泌を促進する。このため、TRHに対するPRLの反応低下は、視床下部障害ではなく、下垂体自体に原因がある下垂体機能低下症であることが分かる。TRHに対するTSHの反応低下は甲状腺機能亢進状態や下垂体機能低下症で見られる。 |
検体検査以外の検査計画 | トルコ鞍高分解能CT検査、トルコ鞍MRI検査、下垂体MRI検査、視野検査 |