疾患解説
フリガナ | コツソショウショウ |
別名 | |
臓器区分 | 運動器疾患 |
英疾患名 | Osteoporosis |
ICD10 | M81.9 |
疾患の概念 | 骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し、骨強度が低下することで、骨折のリスクが高くなる進行性の代謝性骨疾患で、閉経や加齢に基づく原発性と疾患やステロイドなどの薬剤による続発性に分けられるが、95%は原発性である。実際には、骨密度が平均値より標準偏差の2.5倍異常低下した状態(Tスコアーが平均値の-2.5以下)を骨粗鬆症と定義している。骨量を決める因子は、骨形成と骨吸収で、両者は非常によく均衡している。骨の有機基質を形成して骨を無機化する骨芽細胞と骨を吸収する細破骨細胞は、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、エストロゲン、ビタミンD、サイトカイン、プロスタグランジンによって調節されている。骨量は、男女共に20代半ばまでにピークに達するが、プラトーが約10年間続き、その後、年に0.3~0.5%の割合で減少する。女性の場合、骨量減少は閉経と共に始まり、数年間に約3~5%/年まで減少が加速し、その後減少率が鈍る。原発性骨粗鬆症は、女性の骨粗鬆症の95%以上、男性の骨粗鬆症の約80%を占める。殆どの症例は、閉経後女性と高齢男性に発症し、性腺機能不全が男女共に重要な因子とされている。その他の原因として、Ca不足、ビタミンD低値、副甲状腺機能亢進症などがある。続発性骨粗鬆症は、女性の骨粗鬆症の5%未満を占め、男性ではより多いと考えられている。原因は、多発性骨髄腫などの悪性腫瘍、慢性腎臓病、内分泌疾患、高Ca尿症などである。骨粗鬆症は、骨量は減少するが、骨基質量に対する骨塩量の比率は正常である。 |
診断の手掛 |
骨粗鬆症患者は、骨折が起こらない限り無症状である。高齢者に腰背部痛、身長低下、円背などが見られたら本症を疑う。身長の高さ以下からの落下(転倒など)と同じ外力で骨折した場合は骨粗鬆症の存在を強く疑う。 【診断基準:2012年日本骨代謝学会・骨粗鬆症学会】 1.脆弱性骨折がある場合:①椎体骨折または大腿骨近位部骨折あり②その他の脆弱性骨折(肋骨、骨盤、上腕骨、橈骨遠位端、下腿骨)があり、骨密度がYAMの80%未満。 2.脆弱性骨折がない場合:骨密度がYAMの70%以下または2.5SD以下、複数部位で測定した場合はより低い値をさいようする。 |
主訴 |
円背|Humpback/Round back 骨折|Fracture 骨変形|Bone deformity 身長低下|Body height decreased 背部痛|Backache 病的骨折|Pathological fracture 腰痛|Low back pain/Lumbago ラセーグ徴候|Lasegue sign |
鑑別疾患 |
転移性骨腫瘍 下垂体機能低下症 クッシング症候群|Cushing's Syndrome 骨軟化症|Osteomalacia 神経性食欲不振症 脊椎症 多発性骨髄腫|Multiple Myeloma 副甲状腺機能亢進症|Hyperparathyroidism 閉経 |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Calcium|カルシウム [/S, /U, /U] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Eosinophils|好酸球 [/Bone Marrow] Lymphocytes|リンパ球 [/Bone Marrow] Magnesium|マグネシウム [/S] |
異常値を示す検査 |
25-Hydroxy Vitamin D3|25-ヒドロキシビタミンD3 [/S] Acid Phosphatase, Tartrate Resistant|骨型酒石酸抵抗性フォスファターゼ [/S] Alkaline Phosphatase, Bone Isoenzyme|骨型アルカリホスファターゼ/骨性ALP [/S] Cells [/Bone Marrow] Deoxypyridinoline|デオキシピリジノリン [/U] Dipyridinoline [/U] Galactosyl-Hydroxylysine [/U] Hydroxyproline|総ヒドロキシプロリン/ヒドロキシプロリン [/U] Insulin-like Growth Factor Binding Protein-3|インスリン様成長因子結合蛋白-3型/IGF結合蛋白-3 [/S] Insulin-like Growth Factor-I|インスリン様成長因子-1/ソマトメジンC [/S] Insulin-like Growth Factor-II|インスリン様成長因子-2 [/S] Intact Type I Procollagen-N-Propeptide|インタクトI型プロコラーゲン-N-プロペプチド [/S] Interleukin-1 Receptor Antagonist [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Osteocalcin|オステオカルシン [/S, /S] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/P] Plasma Cells|形質細胞 [/Bone Marrow] Pyridinoline Cross-linked Telopeptide of Type I Collagen [/S] Pyridinoline|ピリジノリン [/U] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] Type I Procollagen-N-propeptide|I型プロコラーゲン-N-プロペプチド [/S] Type I Collagen Cross-linked N-telopeptide|I型コラーゲン架橋N末端テロペプチド [/U] β-Crosslaps|β-クロスラプス [/U] |
関連する検査の読み方 |
【ALP】 骨折の直後でなければ基準範囲内である。骨軟化症では高値になる。骨型ALP増加は閉経期骨粗鬆症で認められる。 【Ca】 本症では基準範囲内であるが、無症候性副甲状腺機能亢進症を除外するために測定する。 【FT4】【TSH】 甲状腺機能亢進を調べるために測定する。二次性骨粗鬆症では高値を示す。 【I型コラーゲン架橋N末端テロペプチド】 コラーゲンの分解の程度により高値を示すことがある。治療の有効性の評価に有用である。 【インタクトI型コラーゲン-N-プロペプチド】 著しく増加する。インタクトI型コラーゲン-N-プロペプチドはI型プロコラーゲンがI型コラーゲンとしてコラーゲン線維に組み込まれる際に生成される物質で、その濃度はI型コラーゲンの合成量、すなわち骨形成を反映すると考えられる。臨床的には骨粗鬆症の経過観察、治療効果判定などに用いられる。 【β-クロスラプス】 病態評価と治療効果判定に用いる。 【オステオカルシン】 高回転骨粗鬆症で増加し、低回転骨粗鬆症で低下する。 【副甲状腺ホルモン】 Caの吸収低下と高Ca尿症II型では増加する。 【副甲状腺ホルモンC末端】 基準範囲内である。 【高感度副甲状腺ホルモン】 ビタミンD服用中の患者で低下する。 【低カルボキシル化オステオカルシン】 ビタミンK2剤の治療効果判定に用いる。オステオカルシンは骨芽細胞で産生されるビタミンK依存性のCa結合蛋白質で骨の形成には必須の物質である。オステオカルシン分子内のグルタミン酸残基がγ-カルボキシルグルタミン酸残基に変換されると活性型オステオカルシンになり、Caを骨に蓄積する。一方ビタミンKが不足するとグルタミン酸残基がγ-カルボキシルグルタミン酸残基に変換されないため、骨に取り込まれずに低カルボキシル化オステオカルシンとなり血中に放出される。臨床的には骨におけるビタミンKの不足状態を反映し骨粗鬆症の治療におけるビタミン製剤の指標として有用性が認められている。 【銅】 老齢骨粗鬆症で低値を示す。 【デオキシピリジノリン】 尿中の値はコラーゲンの分解程度により高値を示す。治療の有効性の評価に有用である。 【無機リン】 基準範囲内であるが骨軟化症では低下する。 【骨密度測定】 DEXAによるスキャンニングが診断、骨折の危険性予測、治療への反応の追跡に有効である。 【臨床的に使用される骨代謝マーカー】 1.骨形成マーカー:骨特異型ALP、オステオカルシン、Ⅰ型プロコラーゲンプロペプチド 2.骨吸収マーカー:尿中・血清架橋N末端テロペプチド/C末端テロペプチド、尿中遊離デオキシピリジノリン、尿中ヒドロキシプロリン、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ、骨シアロ蛋白、尿ヒドロキシリシングリコシド |
検体検査以外の検査計画 | 骨単純X線検査、二重エネルギーX線吸収測定検査(DEXA) |