疾患解説
フリガナ | ヨウサンケツボウショウ |
別名 | |
臓器区分 | 代謝性疾患 |
英疾患名 | Folic Acid Deficiency |
ICD10 | E53.8 |
疾患の概念 | 葉酸の摂取不足(低栄養、アルコール中毒など)、需要増加(妊娠、授乳など)、吸収障害(熱帯性スプルー、セリアック病など)、薬物による吸収障害(フェニトイン、プリミドン、バルビタール酸塩など)によって発症する。欠乏は、巨赤芽球性貧血を発症するほか種々の精神神経症状を引き起こす。肝は葉酸を3~6ヶ月の供給分しか貯蔵出来ないため、アルコール中毒患者は、容易に葉酸欠乏を引き起こす。妊娠中の欠乏は、胎児の神経管欠損や脳障害のリスクファクターである。 |
診断の手掛 | 貧血症状、下痢、舌炎、脊髄障害、ニューロパチー、原因不明の精神神経症状を訴える患者を診たら本症を疑う。貧血は潜行性に発症するが、代償作用のため、症状よりも重度であることがあるので注意する。 |
主訴 |
下痢|Diarrhea 舌炎|Glossitis 体重減少|Weight loss 貧血症状|Anemic symptom |
鑑別疾患 |
悪性貧血|Pernicious Anemia アルコール依存症|Alcoholism 骨髄異形成症候群|Myelodysplastic Syndrome 赤白血病 |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Bilirubin|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Bilirubin,Indirect|間接ビリルビン/非抱合型ビリルビン [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Cholinesterase|コリンエステラーゼ/ブチルコリンエステラーゼ/偽コリンエステラーゼ [/S] Erythrocytes|赤血球数 [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Iron|鉄/血清鉄 [/Bone Marrow,/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/RBC,/S] Leukocytes|白血球数 [/B] MCH|平均赤血球ヘモグロビン量 [/B] MCV|平均赤血球容積 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B] Potassium|カリウム [/S] Uric Acid|尿酸 [/S,/U] |
異常値を示す検査 |
Acetylcholinesterase|アセチルコリンエステラーゼ/赤血球コリンエステラーゼ/真性コリンエステラーゼ [/RBC] Aldolase|アルドラーゼ/アルドラーゼアイソザイム [/S] Amino Acids|アミノ酸分析/アミノ酸41分画 [/Urine] Bleeding Time|出血時間 [/Patient] Cells [/Bone Marrow] Clot Retraction|血餅退縮能 [/B] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Copper|銅 [/S] Folate|葉酸/プテロイルモノグルタミル酸/ビタミンM/乳酸菌発育因子 [/S] Glucose-6-Phosphate Dehydrogenase|グルコース-6-リン酸脱水素酵素/ブドウ糖-6-リン酸脱水素酵素 [/RBC, /S] Hemoglobin F|ヘモグロビンF/胎児性ヘモグロビン/胎性ヘモグロビン [/B] Homocysteine|ホモシステイン/ホモシスチン/総ホモシステイン [/P, /U] Lactate|乳酸/ラクテート [/B] Lactate Dehydrogenase Isoenzyme-5|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S] Lactate Dehydrogenase Isoenzymes|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S] Lysozyme|リゾチーム/ムラミダーゼ/ムコペプタイド/グリコヒドロラーゼ [/S] Malate Dehydrogenase|リンゴ酸脱水素酵素 [/RBC, /S] Methylmalonate|メチルマロン酸 [/S] N-Formiminoglutamic Acid [/U] Osmotic Fragility|赤血球浸透圧抵抗試験(サンフォード法)(パルパート法)/赤血球抵抗試験/赤血球浸透圧脆弱性試験/食塩水浸透圧抵抗試験 [/B] Reticulocytes|網赤血球/レチクロサイト/網状赤血球数 [/B] Taurine|タウリン/アミノエチルスルホン酸 [/U] Vitamin B12 Binding Capacity|ビタミンB12結合能 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 白血球数と血小板数は減少する。網状赤血球は低値になる。 【血液像】 著明な赤血球大小不同と変形赤血球増加が見られ、本症に特有な大卵形赤血球も観察される。好塩基性斑点が存在し、有核赤血球が見られることがある。好中球の核の過分葉が特徴的な所見で、6分葉以上の細胞が一つでも見られたら、直ちに本症を疑うべきである。奇異な形の血小板も観察される。 【骨髄像】 過形成で、骨髄球:赤芽球比の減少と組織鉄の増加が見られる。赤血球前駆細胞は以上に大きく、核と細胞質の解離が見られる。核のクロマチンは分散しており、特徴的な有窓性パターンで濃縮している。 【MCV】 100fL以上なら巨赤芽球性貧血の存在を疑う。 【ビリルビン】【LD】 赤芽球の髄内破壊の亢進により、間接ビリルビンやLDが高値になる。 【葉酸】 3ng/mL未満なら臨床的に有意な欠乏と考える。赤血球葉酸値が150ng/mL未満なら診断の指標となる。葉酸はビタミンB複合体の一つで、緑色野菜、小麦、大豆、肝、牛肉、キノコなどに含まれ、体内では核酸合成の基質として生命の維持に大切なビタミンである。葉酸欠乏は細胞の分裂・増殖に大きな影響を与える。臨床的には末梢血中に過分葉好中球が出現し大球性貧血を呈する巨赤芽球性貧血を疑う場合に測定する。 【ビタミンB12】 基準範囲内である。ビタミンB12はビタミンB複合体の一種でDNA合成に関与している他、抗貧血因子として重要な働きを持っている。肝、卵黄、牛乳などに多量に含まれ、胃壁細胞から分泌される内因子と結合し小腸で吸収される。臨床的には欠乏症である巨赤芽球性貧血を疑う場合に測定するが、この貧血は葉酸欠乏でも起こるため両者の測定が必要である。 |
検体検査以外の検査計画 | 胃内視鏡検査 |