疾患解説
| フリガナ | コツズイセンイショウ |
| 別名 | 特発不明性骨髄様化生 |
| 臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
| 英疾患名 | Myelofibrosis |
| ICD10 | D75.8 |
| 疾患の概念 | 骨髄に広範な膠原線維の増殖を認める慢性疾患で、原因不明の特発性と慢性骨髄性白血病、血小板血症、悪性腫瘍の骨髄転移などによる続発性に分けられる。骨髄線維化、脾腫、肝腫と赤芽球や涙滴赤血球、骨髄芽球を伴う貧血が特徴的な所見である。本症は高齢者に多く、初発時の平均年齢は約61歳で、男/女比は1:4で男性に多い。 |
| 診断の手掛 |
脾腫、脾梗塞、貧血症状、全身倦怠感、体重減少や原因不明のLD上昇が見られたら本症を疑う。動悸、息切れ、全身倦怠感などの貧血症状は、45%の患者に、また腹部症状は、30%の患者に見られる。脾と肝の腫大があれば髄外造血を強く疑う。血液像で涙滴赤血球、白赤芽球性血液、巨大血小板の3徴候は骨髄線維症を強く示唆する。 【診断基準:2008年WHO】 大項目:(すべてを満たす) 1.細網線維またはコラーゲン線維化を伴った巨核球の増殖と異型があること、あるいは、細網線維の増殖が認められない場合は、巨核球の増殖と異型に加え、しばしば赤芽球系の抑制を特徴とする骨細胞成分の増加を伴うこと。 2.慢性骨髄性白血病、真性多血症、骨髄異形成症候群、他の骨髄系腫瘍の診断基準を満たさない。 3.JAK2V617F変異やMPLW515K/Lのような、造血細胞のクローン性増殖を示す所見がある、あるいは、クローン性増殖が認められない場合は、骨髄の線維化や変化が、感染症、自己免疫疾患、慢性炎症、ヘアリー細胞白血病や他のリンパ系腫瘍、転移性腫瘍、中毒による骨髄障害などによる、反応性の変化ではないこと。 小項目:4つのうち2つを満たす。 1.末梢血に赤芽球、骨髄芽球が出現 2.血清LDの増加 3.貧血 4.触知可能な脾腫 *大項目3つ全てと小項目4つのうち2つを満たすものを原発性骨髄線維症と診断する。 |
| 主訴 |
息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 肝腫大|Hepatomegaly 食欲不振|Anorexia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 動悸|Palpitations 脾腫|Splenomegaly 貧血症状|Anemic symptom 腹痛|Abdominal pain 腹部膨満感|Sense of Abdominal fullness やせ|Weight loss リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
| 鑑別疾患 |
骨髄炎|Osteomyelitis 真性赤血球増加症 多発性骨髄腫|Multiple Myeloma 慢性骨髄性白血病|Chronic Myeloid Leukemia(CLM) 急性白血病|Acute Leukemia 全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE) 肺結核|Pulmonary Tuberculosis 脾梗塞 脾腫|Splenomegaly 非ホジキンリンパ腫|Non-Hodgkins Lymphoma(NHL) 貧血 ホジキンリンパ腫|Hodgkin's Disease 本態性血小板血症|Essential Thrombocythemia(ET) 再生不良性貧血|Aplastic Anemia 放射線障害|Radiation Injury 化学物質(ベンゼン、二酸化トリウム) |
| スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [ Basophils|好塩基球 [ Eosinophils|好酸球 [ Erythrocytes|赤血球数 [ Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [ Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [ Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [ Leukocytes|白血球数 [ Monocytes|単球 [ Platelets|血小板 [ Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [ Uric Acid|尿酸 [ |
| 異常値を示す検査 |
Acid Phosphatase|酸性ホスファターゼ [ Anisocytes|赤血球大小不同 [ Calmodulin|カルモジュリン [ CD34 Positive Cells|CD34陽性細胞 [ Coombs' Test|クームス試験 [Positive/S] Cryofibrinogen|クリオフィブリノゲン [ Extracellular Growth Factor [ Folate|葉酸/プテロイルモノグルタミル酸/ビタミンM/乳酸菌発育因子 [ Glutathione|グルタチオン [ Glutathione, Reduced [ Hyaluronic Acid|ヒアルロン酸 [ Interleukin-2|インターロイキン-2 [ Iron Stein|鉄染色/ベルリン青染色/プルシアンブルー染色 [ Lactate Dehydrogenase Isoenzyme-5|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [ Leukocyte Alkaline Phosphatase Stein|アルカリホスファターゼ染色/NAPスコア/好中球ALP染色/白血球ALP染色 [ Lysozyme|リゾチーム/ムラミダーゼ/ムコペプタイド/グリコヒドロラーゼ [ Metamyelocytes|後骨髄球 [ Myelocytes|骨髄球 [ Naphthol-As-D-Chloroacetate Esterase [ Neopterin|ネオプテリン [ Osmotic Fragility|赤血球浸透圧抵抗試験(サンフォード法)(パルパート法)/赤血球抵抗試験/赤血球浸透圧脆弱性試験/食塩水浸透圧抵抗試験 [ Phospholipase A|ホスホリパーゼA [ Procollagen Type III Peptide|プロコラーゲンIIIペプチド [ Pseudouridine|シュードウリジン [ Thrombopoietin|トロンボポエチン [ Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [ Vitamin B12|ビタミンB12/コバラミン/シアノコバラミン [ Vitamin B12 Binding Capacity|ビタミンB12結合能 [ α2-HS Glycoprotein|α2-HSグリコプロテイン [ β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [ |
| 関連する検査の読み方 |
【CBC】 白血球増加、白赤芽球症、類白血病反応、有核赤血球、奇形赤血球症(赤血球大小不同症、涙滴赤血球)、巨核球を認める。Hb 10g/dL未満の貧血を70%に認める。芽球が5%を超えたら急性白血病(M7)への移行を疑う。疾患の進行に伴い血小板の減少がみられることがある。 【骨髄像】 骨髄穿刺で骨髄細胞が殆どみられない。生検では骨髄線維化がみられ細胞数は著しく減少している。多くの症例はdry tapで骨髄液を吸引できない。 【骨髄生検】 著明な線維化と骨硬化を認める。 【NAPスコア】 2/3の患者で高値を示し、残りは基準範囲内である。末梢血液塗抹標本の好中球に存在するアルカリホスファターゼを化学的に染色して検出する検査で、アルカリホスファターゼが好中球の成熟とともに増加することから、細胞の成熟度を知るために行われる検査でNAP(neutrophil alkaline phosphatase) scoreと呼ばれている。 【鉄染色】 異常鉄芽球が増加する。鉄染色は骨髄塗抹標本上の赤芽球中の非ヘモグロビン鉄を細胞化学的に染色して検出するもので、鉄染色顆粒が細胞質内に認められた赤芽球を鉄芽球と呼び、赤芽球100個に対する割合を%で表わす。臨床的には鉄代謝異常の診断に用いるが、特に鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、Hemochromatosisの診断に有用である。異常値を見た場合は血清鉄、フェリチン、TIBC、UIBC、トランスフェリンなどを測定する。 【染色体分析】 約40%の症例で、染色体異常を認める。del(20),del(13),+8などの異常が多い。Ph染色体は稀である。 【CD34陽性細胞】 増加する。CD34は膜貫通型糖蛋白で多機能幹細胞などの未熟な造血幹細胞に発現している。臨床的には造血前駆細胞のマーカーとして測定されるが、白血病細胞でも発現することから、血液腫瘍性疾患の診断に用いる。また、末梢血幹細胞移植(Peripheral Blood Stem Cell Transplantation:PBSCT)で採取された造血幹細胞数測定にもCD34定量検査として利用される。 【LD】 原因不明のLD増加と脾腫、脾梗塞、貧血がみられたら本症を疑う。 【脾機能の亢進】 脾機能が亢進すると30%の患者で血小板減少、15%で白血球減少がみられる。3細胞系統の髄外増殖を認める。 【髄外造血】 肝・脾に髄外造血を認める。 |
| 検体検査以外の検査計画 |