疾患解説
フリガナ | キュウセイハッケツビョウ |
別名 | |
臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
英疾患名 | Acute Leukemia |
ICD10 | C95.0 |
疾患の概念 | 骨髄の造血幹細胞や前駆細胞が腫瘍化し増殖する疾患で、腫瘍化した細胞の系統により、急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病に分けられる。異常な骨髄系細胞とリンパ系細胞は、正常な骨髄組織や造血細胞を置換し、貧血、血小板減少症および顆粒球減少症を引き起こす。また、白血病細胞は血液由来であるため、肝臓、脾臓、リンパ節、中枢神経系、腎臓、性腺などの臓器に浸潤し、様々な病態を呈する。発症は小児と高齢者に多く、人口10万人に対し年間で約4人発症する。 |
診断の手掛 | 貧血、易感染性、易出血性などの造血障害による症状は、診断の通常数日から数週前からしか見られないので、非特異的な初発症状(易疲労感、全身倦怠感、発熱など)を見逃さない。典型的な症状としては、1.造血障害により貧血、感染、紫斑、出血傾向が見られる。2.貧血および代謝亢進状態により非特異的症状として、蒼白、易疲労感、発熱、全身倦怠感、体重減少、頻脈、胸痛などが見られる。3.顆粒球減少症は、急速に進行して生命を脅かす細菌感染症につながるが、発熱の原因は不明なことが多い。4.出血は点状出血、紫斑、鼻出血、歯肉出血または月経不順として現れるが、血尿および消化管出血は稀である.5.白血病細胞の骨髄浸潤は、骨痛と関節痛が生じるが、この症状は特にALLの小児に多く見られる。6.白血病細胞の髄外浸潤はリンパ節腫脹、脾腫、肝腫大、皮膚発疹などを発症する。また、AMLでは、歯肉増生が著明な場合がある。 |
主訴 |
易感染性|Susceptibility to infection 易疲労感|Fatigue 肝腫大|Hepatomegaly 関節痛|Arthralgia 胸骨殴打痛|Percussion tenderness of sternum 骨痛|Osteodynia/Bone pain/Ostalgia 歯肉腫脹|Swelling of gingiva 歯肉出血|Gingival bleeding/Ulorrhagia 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 点状出血|Petechiae 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 脾腫|Splenomegaly 貧血症状|Anemic symptom 鼻出血|Nosebleed/Nasal hemorrhage/Epistaxis リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
Ph1陽性急性リンパ性白血病 移植片対宿主病|Graft versus Host Disease(GVHD) カンジダ症 骨髄異形成症候群|Myelodysplastic Syndrome 骨髄線維症|Myelofibrosis 骨髄増殖性疾患 急性混合性白血病 再生不良性貧血|Aplastic Anemia 伝染性単核球症|Infectious Mononucleosis 肺炎|Pneumonia 敗血症|Sepsis 慢性骨髄性白血病|Chronic Myeloid Leukemia(CLM) |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Complement CH50|補体価/CH50 [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S] |
異常値を示す検査 |
1-Methylinosine [/U] Alanine|アラニン [/U] Amino Acids|アミノ酸分析/アミノ酸41分画 [/U] Anti-Lactoferrin Antibodies [/S] Aspartic Acid|アスパラギン酸 [/U] Complement C1|補体第1成分/C1 [/S] Complement C2|補体第2成分/C2 [/S] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Complement C4|補体第4成分/β1Eグロブリン/C4 [/S] Complement C5|補体第5成分/C5 [/S] Complement C7|補体第7成分/C7 [/S] Complement C8|補体第8成分/C8 [/S] Complement C9|補体第9成分/C9 [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S] Cysteine|システイン [/U] Deoxythymidine Kinase Activity|デオキシチミジンキナーゼ活性/チミジンキナーゼ活性 [/S] Ferritin|フェリチン [/S] Glutamic Acid|グルタミン酸 [/U] Glycine|グリシン [/U] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Isoleucine|イソロイシン [/U] Lactate Dehydrogenase Isoenzymes|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S] Lactoferrin|ラクトフェリン [/P] Leucine|ロイシン [/U] Lysine|リジン [/U] Lysozyme|リゾチーム/ムラミダーゼ/ムコペプタイド/グリコヒドロラーゼ [/S] Methionine|メチオニン [/U] N2,N2-Dimethylguanosine [/U] Phenylalanine|フェニルアラニン [/U] Phospholipase A2 [/S] Proline|プロリン [/U] Pseudouridine|シュードウリジン [/U] Serine|セリン [/U] Sialyltransferase [/S] Soluble E-Selectin|可溶性E-セレクチン/可溶性CD62E/可溶性ELAM-1 [/S] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S] Threonine|トレオニン [/U] Tissue Factor Antigen|組織因子/組織トロンボプラスチン [/P] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] Tyrosine|チロシン [/U] Valine|バリン [/U] VLDL-Cholesterol [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 正球性、進行性の貧血が臨床症状の出現時に殆ど常に存在する。白血球が100,000/μL以上は稀で、基準範囲内か以下が普通に認められる。血小板は臨床症状出現時には低下しており、進行性に悪化する。 【血液像】 芽球が出現し、白血病裂孔を認める。AMLではAuer小体を認めることがある。 【骨髄像】 芽球は末梢血に見られなくとも骨髄中には存在する。骨髄中の芽球は25~95%である。骨髄球系:赤血球系細胞の比は増加する。 【白血球細胞化学】 ベルリン青反応、エステラーゼ染色が陽性である。 【エステラーゼ染色】 AMLの分類と単球系細胞の同定に用いる。エステラーゼ染色は細胞に特異的エステラーゼ染色と非特異的エステラーゼ染色の二重染色をすることで、顆粒球系細胞と単球系細胞を分類するものである。特異的エステラーゼ染色では顆粒球細胞は強陽性に染色されるが、単球系細胞は陰性である。一方、非特異的エステラーゼ染色では顆粒球は陰性だが、単芽球、前単球、単球、血小板は強陽性に染色される。臨床的にはこの染色の違いを利用して、急性骨髄単球性白血病(M4)、単球性白血病(M5)の単芽球の同定を行う。また、急性白血病のM2とM4、M5の鑑別に利用される。 【鉄染色】 異常鉄芽球が増加する。鉄染色は骨髄塗抹標本上の赤芽球中の非ヘモグロビン鉄を細胞化学的に染色して検出するもので、鉄染色顆粒が細胞質内に認められた赤芽球を鉄芽球と呼び、赤芽球100個に対する割合を%で表わす。 【LD】【AST】【ALT】 AMLではいずれも増加することがある。 【デオキシチミジンキナーゼ活性】 患者の93%で高値である。TKは細胞のDNA合成期に上昇するため、細胞再生、ウイルス感染細胞など細胞回転が早くDNA合成の盛んな細胞で高い。この性質を利用し各種悪性腫瘍の細胞増殖の状態、治療効果判定などの指標として用いる。臨床的には各種悪性腫瘍、ウイルス感染症で高値になるが疾患特異性はない。 【尿酸】 しばしば増加する。 【フェリチン】 高頻度で基準範囲上限以上である。フェリチンはフェリチン鉄を貯蔵している蛋白で、大部分が細胞内に存在し、トランスフェリンにより運ばれてくる鉄を細胞内に貯蔵する働きがある。血清Fer 1ng/mLは貯蔵鉄8~10mgに相当し、鉄欠乏性貧血では貯蔵鉄量が減少するため、血清鉄減少、総鉄結合能増加に加え血清フェリチンが低下する。臨床的には貧血症状のない鉄欠乏性貧血の全段階での潜在的鉄欠乏の把握、鉄過剰状態の診断に用いる。また、悪性腫瘍では組織崩壊によると思われる血清フェリチンの増加がしばしば見られ、腫瘍マーカーとして悪性腫瘍の治療に対する効果判定、再発の指標として有用性が認められている。 【リゾチーム】 M-4、M-5では増加する。LZMは殆ど全ての組織、体液、分泌液中に存在し生体防御反応に関与している。特に涙、唾液、鼻汁、好中球、単球やマクロファージなどに多量に存在し、抗菌・抗ウイルス作用、抗炎症作用や白血球貪食能増進作用などの生理作用がある。臨床的には単球性白血病で血中・尿中に増加するため診断に有用性がある。 【併発する疾患】 発症時にDICを併発することがある。 【p53遺伝子】 遺伝子変異を認める。p53遺伝子の変異はヒトのあらゆる組織の腫瘍で認められる。変異は多くの場合17番染色体短腕(17p)の一方のアレル欠失と点突然変異である。この遺伝子の変異はヒトのあらゆる組織由来の腫瘍で認められる。 【UN】【クレアチニン】 増加は白血病細胞の腎への浸潤を反映する。 【WT1 mRNA】 WT1 mRNAが高頻度に発現する。WT1遺伝子はWilmus腫瘍の原因遺伝子の一つとして単離された。この腫瘍はWT1遺伝子の欠損や突然変異がみられる。この遺伝子は白血病や種々の固形癌に高率に発現している為、これら疾患の診断に用いる。 【予後因子】 AML予後良好:t(8;21),t(15;17)及びinv(16)(p13;q22)、予後不良:5番と7番の欠失及び複合異常 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、CT検査、MRI検査、腹部超音波検査 |