疾患解説
フリガナ | サイセイフリョウセイヒンケツ |
別名 | 低形成性貧血 |
臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
英疾患名 | Aplastic Anemia |
ICD10 | D61.9 |
疾患の概念 | 血球前駆細胞の減少により発症する正球性正色素性貧血で、骨髄の低形成と汎血球減少症を呈する症候群である。先天性としてFanconi貧血があり、後天性としては、原因不明の一次性、薬剤(抗腫瘍薬、抗菌薬、NSAIDs、抗痙攣薬、アセタゾラミド、金塩、ペニシラミン、キナクリン)と放射線による二次性がある。その他、特殊型として肝炎後再生不良性貧血、発作性夜間血色素尿症がある。幹細胞減少の機序としては、免疫学的機序と幹細胞自体の異常が考えられている。ファンコニ貧血は、稀な家族性の再生不良性貧血で、骨異常、小頭症、性腺機能低下症および皮膚の褐色色素沈着を伴う疾患で、染色体異常を有する小児に発症する。 |
診断の手掛 |
再生不良性貧血は、通常潜行性で始まり、原因物質への曝露から数週間または数カ月経過して発現することが多いが、時に急性の場合もあり、基礎疾患なしに骨髄細胞数減少を伴う末梢汎血球減少症が見られる。症状は重度の貧血、血小板減少による点状出血や出血傾向、白血球減少による易感染性などで、これらの症状が見られたら本症を疑う。約30%の患者は薬剤暴露、ウイルス感染(肝炎ウイルス、E-Bウイルス、サイトメガロウイルスなど)の既往がある。重度の血小板減少症では、点状出血、斑状出血と歯肉、結膜または他の組織への出血が生じることがある。無顆粒球症は生命を脅かす感染症を引き起こす。 【診断基準:2010年改訂】 1.臨床所見として、貧血、出血傾向、ときに発熱を認める。 2.次の3項目のうち、少なくとも二つを満たす:①ヘモグロビン濃度10.0g/dL未満 ②好中球1,500/μL未満 ③血小板10万/μL未満。 3.汎血球減少の原因となる次の疾患を認めない:白血病、骨髄異形成症候群、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、巨赤芽球性貧血、癌の骨髄転移、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、脾機能亢進症、SLE、血球貪食症候群、感染症など。 4.次の検査所見が加われば診断の確実性が増す:①網赤血球増加がない。 ②骨髄穿刺所見で、有核細胞は原則として減少するが、減少がない場合も巨核球の減少とリンパ球比率の上昇がある。造血細胞の異形成は顕著でない。 ③骨髄生検所見で造血細胞の減少がある。 ④血清鉄の上昇と不飽和鉄結合能の低下がある。 ⑤胸腰錐体のMRAで造血組織の減少と脂肪細胞の増加を示す所見がある。 【診断基準:1987年Lancet】 1.骨細胞密度<30%、染色体正常 2.末梢血で以下の2項目以上:好中球絶対数<500/μL、血小板数<20,000/μL 網状球数<40,000/μL 3.他の血液疾患が存在しない |
主訴 |
易感染性|Susceptibility to infection 息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 易疲労感|Fatigue 顔面蒼白|Pallor of face 歯肉出血|Gingival bleeding/Ulorrhagia 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 立ちくらみ|Faintness 点状出血|Petechiae 動悸|Palpitations 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 斑状出血|Ecchymosis 貧血症状|Anemic symptom 鼻出血|Nosebleed/Nasal hemorrhage/Epistaxis 微熱|Low grade fever/Febricula めまい|Dizziness |
鑑別疾患 |
転移性骨髄腫瘍 肝硬変|Cirrhosis of Liver 急性白血病|Acute Leukemia 巨赤芽球性貧血|Megaloblastic Anemia 骨髄異形成症候群|Myelodysplastic Syndrome 骨髄線維症|Myelofibrosis 全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE) 汎血球減少症 発作性夜間血色素尿症|Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria(PNH) 多発性骨髄腫|Multiple Myeloma 特発性門脈圧亢進症 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma Gaucher病 Niemann-Pick病 敗血症|Sepsis 粟粒結核 サルコイドーシス|Sarcoidosis 薬剤(抗腫瘍剤、抗生物質、NSAIDs、抗痙攣薬、アセタゾールアミド、金塩、ペニシラミン、キナクリン) 化学物質(ベンゼン、無機性砒素) 放射線障害|Radiation Injury |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/WBC] Erythrocytes|赤血球数 [/B, /Bone Marrow] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Iron|鉄/血清鉄 [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Lymphocytes|リンパ球 [/B, /Bone Marrow] MCV|平均赤血球容積 [/B] Monocytes|単球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B] TIBC|総鉄結合能 [/S] |
異常値を示す検査 |
2,3-Diphosphoglycerate|2,3-ジホスホグリセレート/2,3-ジホスホグリセリン/2,3-ビスホスホグリセリン酸 [/RBC] Bleeding Time|出血時間 [/Patient] Capillary Fragility|毛細血管抵抗試験 [/B] Cells [/Bone Marrow] Clot Retraction|血餅退縮能 [/B] Erythrocyte Survival|赤血球寿命 [/RBC] Erythropoietin|エリスロポエチン [/S, /U] Hemoglobin F|ヘモグロビンF/胎児性ヘモグロビン/胎性ヘモグロビン [/B] Interferon-γ|インターフェロン-γ [/S] Iron Saturation|鉄飽和度 [/S] Reticulocytes|網赤血球/レチクロサイト/網状赤血球数 [/B] Soluble Transferrin Receptor [/S, /S] Target Cells|標的赤血球 [/B] Thrombopoietin|トロンボポエチン [/P] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 通常は正色素性正球性貧血、大球性の場合もある。MCVとRDWは正常、変形赤血球はみられない。白血球は常に好中球減少(好中球絶対数1,500/μL以下)があり、しばしば単球も減少する。リンパ球は基準範囲内だが末期には減少する。血小板は15万/μL以下に減少するが、しばしば5万/μLを下回る。経過観察のため頻回に測定する。網状赤血球は減少するか、消失する。 【血漿鉄消失半減期】 赤血球造血能の低下で延長する。 【血小板寿命】【血小板回転】 血小板寿命は正常、血小板回転が低下する。 【骨髄生検】 診断に不可欠である。骨髄は低形成のため骨髄細胞は減少するが、異常細胞は認められない。生検は白血病、骨髄異形成症候群、悪性腫瘍の除外のために必ず行う。骨髄標本上の細胞形態は、低形成性MDSや発作性夜間ヘモグロビン尿症と鑑別が困難な場合がある。 【血清鉄】 増加する。 |
検体検査以外の検査計画 | 骨髄シンチグラフィー、MRI検査 |