疾患解説
フリガナ | テツガキュウセイヒンケツ |
別名 | |
臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
英疾患名 | Sideroblastic Anemia |
ICD10 | D64.3 |
疾患の概念 | 鉄芽球性貧血は、骨髄異形成症候群の一部である鉄利用障害性貧血で、鉄量が十分に存在するか増加しているにもかかわらず、ヘモグロビン合成のための骨髄での鉄利用が不十分なため、赤血球ミトコンドリア内へ異常な鉄沈着を来す疾患である。環状鉄芽球が、骨髄で増殖し無効造血の状態になり貧血となる。鉄芽球性貧血の特徴は、多染性の斑点を持つ標的赤血球(担鉄赤血球)の存在である。この疾患の殆どは、骨髄異形成症候群であるが、遺伝性、クロラムフェニコール、サイクロセリン、イソニアジド、ピラジナミドなどによる薬物性、またはエタノールや鉛によって二次的に発症する場合もある。網状赤血球産生低下、赤血球の骨髄内での破壊、骨髄赤芽球過形成および異形性が起こり、低色素性赤血球が産生されるが、他の赤血球は大型で、赤血球指数は正色素性を示すことがある。結果として、赤血球の大きさは二相性になり、赤血球分布幅(RDW)が高値となる。 |
診断の手掛 | 貧血の症状を訴える患者に、RDWが高い正球性-正色素性貧血、または小球性-低色素性貧血、血清鉄増加、フェリチン増加、トランスフェリン飽和度増加のデータを得たら本症を疑う。原因が薬剤とアルコールによる場合は、原因物質を除去すると回復する。末梢血では、赤血球は二相性を示し、赤血球に斑点がみられる。骨髄では、赤芽球過形成が認められ、鉄染色で、赤芽球の核近くに鉄で満たされたミトコンドリアが見られる環状鉄芽球が認められる。また、染色体異常などの骨髄異形成が見られることが多い。鉄芽球性貧血の原因が不明の場合は、血清鉛を測定する必要がある。 |
主訴 |
息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 易疲労感|Fatigue 顔面蒼白|Pallor of face 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 脱力感|Weekness 動悸|Palpitations 貧血症状|Anemic symptom |
鑑別疾患 |
アルコール依存症|Alcoholism 骨髄異形成症候群|Myelodysplastic Syndrome 特発性ヘモクロマトーシス サラセミア|Thalassemia 異常ヘモグロビン症 鉛中毒|Toxic Effects of Lead and Its Compounds 薬物(エタノール) 薬剤(クロラムフェニコール、サイクロセリン、イソニアジド、ピラジナミド) |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/WBC] Erythrocytes|赤血球数 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Iron|鉄/血清鉄 [/Bone Marrow, /S] Leukocytes|白血球数 [/B] MCH|平均赤血球ヘモグロビン量 [/B, /B] MCHC|平均赤血球ヘモグロビン濃度 [/B] MCV|平均赤血球容積 [/B, /B] Monocytes|単球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B, /B] TIBC|総鉄結合能 [/S] |
異常値を示す検査 |
Anisocytes|赤血球大小不同 [/B] Basophilic Stippling|好塩基性斑点 [/B] Cells [/Bone Marrow] Coproporphyrin|コプロポルフィリン [/RBC] Folate|葉酸/プテロイルモノグルタミル酸/ビタミンM/乳酸菌発育因子 [/S] Iron Saturation|鉄飽和度 [/S] Osmotic Fragility|赤血球浸透圧抵抗試験(サンフォード法)(パルパート法)/赤血球抵抗試験/赤血球浸透圧脆弱性試験/食塩水浸透圧抵抗試験 [/RBC] Poikilocytes|赤血球大小不同 [/B] Protoporphyrin|プロトポルフィリン [/RBC, /RBC] Reticulocytes|網赤血球/レチクロサイト/網状赤血球数 [/B, /B] Target Cells|標的赤血球 [/B] Volume [/RBC] Xanthurenic Acid|キサンツレン酸 [/U] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 二相性貧血で、少数の低色素性赤血球を伴う、中等度の正球性あるいは大球性貧血である。鉄染色陽性球がみられる。白血球は形態学的な変化を示すこともあるが、通常は正常である。 【血液像】 血小板形態異常を認めることがある。 【骨髄像】 赤芽球過形成を示し、45~95%は鉄染色で環状鉄芽球である。20%の患者に葉酸欠乏による巨赤芽球性変化を認める。環状鉄芽球の存在は診断的意義がある。 【血漿鉄消失時間】 60分以下と著明に短縮する。59Feを静注し放射能が1/2になるまでの時間で、鉄の消費速度を把握する。基準範囲は60~120分である。 【赤血球鉄利用率】 基準範囲は80~100%であるが80%以下になる。この検査は投与した鉄の内何%が赤血球産生に利用されたかを見る検査である。 【赤血球寿命】 やや短縮する。赤血球は骨髄から出た網状赤血球が成熟赤血球になり、約120日で寿命を終える。しかし赤血球の崩壊が亢進する溶血などでこの寿命は短縮する。この検査は赤血球をアイソトープで標識し体内に戻し、血液中のγ線を測定し、赤血球の崩壊の状態と崩壊が起きている臓器を知るために行う。 【赤血球浸透圧抵抗試験】 抵抗が増大する。赤血球浸透圧抵抗試験は血液像で赤血球形態に異常が見られ、家族歴などから遺伝性の溶血性貧血が疑われる場合に、赤血球の浸透圧に対する抵抗性を見る検査で、サンフォード法とパルパート法の2法がある。サンフォード法は生理食塩液の希釈列を、パルパート法はリン酸緩衝液食塩液の系列を用いる。測定精度はパルパート法がサンフォード法より良いとされている。臨床的には溶血性貧血を鑑別診断する直接クームス検査、砂糖水試験、HAM試験などと共におこなう。 【鉄染色】 プルシアンブルー染色で、鉄顆粒陽性のPappenheim小体が認められる。シデロサイトと鉄芽球が低値を示す。鉄染色は骨髄塗抹標本上の赤芽球中の非ヘモグロビン鉄を細胞化学的に染色して検出するもので、鉄染色顆粒が細胞質内に認められた赤芽球を鉄芽球と呼び、赤芽球100個に対する割合を%で表わす。臨床的には鉄代謝異常の診断に用いるが、特に鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、Hemochromatosisの診断に有用である。異常値を見た場合は血清鉄、フェリチン、TIBC、UIBC、トランスフェリンなどを測定する。 【赤血球利用率】 低下する。 【血清鉄】 高値になる。 【トランスフェリン飽和度】 高値になる。トランスフェリンは1分子当たり三価鉄イオン2個を結合できる。このトランスフェリンのうち鉄と結合している部分の比率をトランスフェリン飽和度(TSAT)といい、血清鉄/総鉄結合能×100で計算される。健常人の血液中では30%程度のトランスフェリンしか鉄で飽和されていないが、鉄過剰になるとこの値は上昇し、鉄欠乏状態では20%未満になる。TSAT<20%は鉄欠乏に対する感度は90%と高いが、特異度は約40%と低い。 【鉛】 原因が不明の場合に測定する。 【併発する疾患】 患者の約10%gが急性白血病を発症する。 |
検体検査以外の検査計画 | 骨髄・肝・脾臓CT検査、骨髄・肝・脾臓MRI検査 |