疾患解説
フリガナ | ダウンショウコウグン |
別名 |
21トリソミー Gトリソミー |
臓器区分 | 小児疾患 |
英疾患名 | Down's Syndrome |
ICD10 | Q90.9 |
疾患の概念 | ダウン症候群は、21番染色体の異常で、ヒトの常染色体異常のうち最も多い疾患である。疾患責任部位は21番染色体長腕遠位部21q22.2付近にあり、21番染色体が正常より1本多いトリソミーが95%を占めている。残りの5%は,46本の正常な数の染色体を有するが、21番染色体の過剰部分が他の染色体上に転座している。出生頻度は約1/650~1000で、母親の年齢が高くなると増加し、ほぼ全例が母親由来である。この疾患では、複数の器官に構造的異常と機能的異常の両方が見られるが、全ての患者に全ての異常が見られるわけではない。大部分の症例で、認知障害があり、重度(IQ20~35)から軽度(IQ50~75)までに及ぶ。粗大運動や言語発達遅滞も生後早期から見られる。身長は有意に低く、肥満のリスクが高く、新生児の約40~50%に先天性心疾患が認められるが、疾患としては、心室中隔欠損症と心内膜床欠損症が最も多い。比較的若年時からアルツハイマー病のリスクが高く、成人の剖検では、脳に典型的な顕微鏡所見が認められる。この疾患は、老化が早まる傾向にあり、死亡年齢の中央値は49歳である。 |
診断の手掛 | 新生児期に特徴的顔貌(短頭、扁平な顔、瞼裂斜上、内眼角贅皮、鞍鼻)、幼児期に易感染性、精神・運動発達遅滞、言語発達遅滞、成人期に抑うつ、早期老化の症状がある患者を診たら本症を疑う。40%の患者は心室中隔欠損や心内膜床欠損などの先天性心疾患を合併しているので、見逃してはいけない。また、患者の多くが甲状腺機能低下症を発症する。 |
主訴 |
易感染性|Susceptibility to infection 運動発達遅滞|Delayed motor development 言語障害|Language disorder/Allophasis 構音障害|Dysarthria 精神発達遅滞|Mental retardation 特異的顔貌|Specific face 哺乳力不良|Sucking disorder |
鑑別疾患 |
先天性心疾患 甲状腺機能低下症|Hypothyroidism アルツハイマー病|Alzheimer's Disease |
スクリーニング検査 |
α-Fetoprotein|α-フェトプロテイン [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Iron|鉄/血清鉄 [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] MCV|平均赤血球容積 [/B] TIBC|総鉄結合能 [/S] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S] Uric Acid|尿酸 [/S] |
異常値を示す検査 |
Acid Phosphatase|酸性ホスファターゼ [/S] CA 125|CA125 [/S] Carnitine|カルニチン分画/ビタミンBT [/S] Copper|銅 [/S] Copper Zinc Superoxide Dismutase|スーパーオキサイドディスムターゼ/スーパーオキサイドジスムターゼ [/RBC] Copper:Zinc Ratio [/S] Dopamine β-Hydroxylase|ドーパミンβ-水酸化酵素 [/S] Estriol, Unconjugated|エストリオール/E3 [/P] Folate|葉酸/プテロイルモノグルタミル酸/ビタミンM/乳酸菌発育因子 [/RBC, /S] Hemoglobin F|ヘモグロビンF/胎児性ヘモグロビン/胎性ヘモグロビン [/B] Homocysteine|ホモシステイン/ホモシスチン/総ホモシステイン [/P] Human Chorionic Gonadotropin|ヒト絨毛性ゴナドトロピン/絨毛性ゴナドトロピン [/S] Immunoglobulin G1|免疫グロブリンG1 [/S] Immunoglobulin G2|IgG2 [/S] Immunoglobulin G3|IgG3 [/S] Immunoglobulin G4|IgG4 [/S] Inhibin|インヒビン [/P] Insulin-like Growth Factor-I|インスリン様成長因子-1/ソマトメジンC [/S] Pregnancy-associated Protein A [/S, /S] Pregnancy-specific Glycoprotein|妊娠特異性β1糖蛋白/α2糖蛋白/妊娠関連α2糖蛋白/α2-妊娠関連糖蛋白 [/S, /S] Pro-aC Inhibin [/P] Propranolol [/S] Selenium|セレン/セレニウム [/S] Soluble β-Amyloid Peptide 40 [/S] Soluble β-Amyloid Peptide 42 [/S] Zinc|亜鉛 [/S] β-Chorionic Gonadotropin|ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット [/P] β-Chorionic Gonadotropin, Free [/P] |
関連する検査の読み方 |
【染色体分析】 確定診断は、絨毛採取や羊水穿刺による核型分析を行う。95%が21番染色体のトリソミー型、3~4%が転座型、1~2%がモザイク型である。 【遊離胎児DNA】 母体血液から採取した遊離胎児DNAは、21トリソミーの出生前診断に用いる。 【AFP】 妊娠中期の前半に母体血清中に増加するので、スクリーニングに有用である。 【エストリオール】 高値になる。 【ヒト絨毛性ゴナドトロピン】 【インヒビン】 出生前診断に用いる。高値になる。インヒビンは主に性腺で産生され下垂体前葉に働き卵胞刺激ホルモンの分泌を抑制している。臨床的には癌抑制機構との関連が指摘されており、顆粒膜細胞腫や絨毛性疾患の腫瘍マーカーとして有用とされている。 【尿中尿酸】 血中には増加するが尿中排泄は0.3g/日以下に低下する。 【血液像】 好中球の平均分葉数が少ない。 【リンパ球刺激試験】 PHAとConAが低値である。リンパ球にレクチンの一種であるPHAやCon-Aを加え培養すると、リンパ球は活性化され大型の芽球様細胞になる。PHAとCon-AはT細胞を活性化し、PHAはCD4陽性細胞を、Con-AはCD陽性細胞をより強く活性化する。この現象を利用してリンパ球の免疫機能を見るのがリンパ球幼若化検査である。異常値を認めたらリンパ球ポピュレーション比率、免疫グロブリン値・産生能、免疫電気泳動などを行う。 【羊水穿刺】 穿刺で得た細胞の核型分析で診断を確定する。 【合併症のスクリーニング検査】 1.心エコー検査:妊婦健診時または出生時 2.甲状腺スクリーニング:TSHまたはTSH値のフォローアップを伴うT4を出生時、生後6カ月、12カ月その後は1年毎 3.聴力検査:出生時、その後は正常な聴力が確立されるまで6カ月毎、それ以降は1年毎 4.眼科検査:生後6カ月までに、その後は5歳まで1年毎、13歳までは2年毎、21歳までは3年毎 5.成長:毎回の健診時に身長、体重、頭囲をダウン症候群用の発育曲線にプロットする 6.4歳までに閉塞性睡眠時無呼吸症の評価を完了する。 |
検体検査以外の検査計画 | 胎児超音波検査 |