疾患解説
フリガナ | コツナンカショウ |
別名 | くる病 |
臓器区分 | 運動器疾患 |
英疾患名 | Osteomalacia |
ICD10 | M83.9 |
疾患の概念 | 骨基質の石灰化が障害され、骨脆弱性を来す疾患の総称で、原因はビタミンDの作用不全と尿細管でのリンの再吸収不全に大別される。類軟骨組織の石灰化障害が特徴で、類骨組織縫合線の厚みの増加と石灰化率の低下が認められる。石灰化骨の減少により、骨強度が低下し、骨が軟化するが、骨端線の閉鎖以前に発症するものは、特にくる病と呼ばれる。 |
診断の手掛 |
臨床症状は骨粗鬆症に似ているが、男性、若年者、青壮年にも発症する。重度のビタミンD不足とビタミンD代謝異常が原因である。症状は筋肉痛、近位筋筋力低下、全身性骨痛、骨折傾向、アヒル歩行が一般的に見られる。 【ビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症診断基準:2015年厚労省】 1.くる病 大項目:a)単純X線像でのくる病変化 b)高ALP血症 小項目:a)低リン血症または低Ca血症 b)臨床症状:O脚・X脚などの骨変形、脊柱の湾曲、頭蓋癆、大泉門の解離、肋骨念珠、関節腫脹のいずれか。 くる病:大項目2つと小項目の2つを満たすもの。 くる病の疑い:大項目2つと小項目2つのうち1つを満たすもの。 除外診断:ビタミンD欠乏症、ビタミンD依存症1型、2型、低ホスファターゼ症、骨幹端骨異形成症、Blount病、副甲状腺機能低下症、偽副甲状腺機能低下症 2.骨軟化症 大項目:a)低リン血症または低Ca血症 b)高骨型ALP血症 小項目:c)臨床症状:筋力低下又は骨痛 d)骨密度:若年成人平均値(YAM)の80%未満 e)画像所見:骨シンチグラフィーでの肋軟骨などへの多発取り込み、または単純X線像でのLooser's zone 骨軟化症:大項目2つと小項目の3つを満たすもの。 骨軟化症の疑い:大項目2つと小項目の2つを満たすもの。 除外すべき疾患:骨粗鬆症、癌の多発骨転移、多発性骨髄腫、腎性骨異栄養症、 原発性副甲状腺機能亢進症、ビタミンD欠乏症 【ビタミンD依存性くる病/骨軟化症1型診断基準:2015年厚労省】 1.低Ca血症 2.低リン血症 3.血中PTH高値 4.血中ALP高値 5.血中1,25(OH)₂D低値 6.骨X線像でくる病/骨軟化症の存在 *確実例:1~7の全ての項目を満たす。疑い例:1~7のうち6つの項目を満たす。25水酸化ビタミンD1α水酸化酵素還元遺伝子異常が証明されれば、1~7のうち2つの項目を満たすと本症の確実例と診断できる。 【ビタミンD依存性くる病/骨軟化症2型診断基準:2015年厚労省】 1.低Ca血症 2.低リン血症 3.血中PTH高値 4.血中ALP高値 5.血中1,25(OH)₂D高値 6.血中25ODH正常 7.骨X線像でくる病/骨軟化症の存在。 参考所見:ビタミンD受容体遺伝子異常、禿頭の存在 *確実例:1~7のすべての項目を満たす。疑い例:1~7のうち6つの項目を満たす。ビタミンD受容体遺伝子異常が証明されれば、1~7のうち2つの項目を満たすと本症に確実例と診断できる。参考:高Ca血症を伴う遺伝性低リン血症性くる病とは、ビタミンD依存性くる病では、低Ca血症となること、高Ca血症を呈さないことで鑑別できる。 |
主訴 |
筋肉痛|Myalgia 筋力低下|Weakness 骨折|Fracture 骨痛|Osteodynia/Bone pain/Ostalgia 骨変形|Bone deformity 成長障害|Growth disorder 病的骨折|Pathological fracture |
鑑別疾患 |
くる病 急性尿細管壊死|Acute Tubular Necrosis(ATN) 低Ca血症|Hypocalcemia 低K血症|Hypokalemia 副甲状腺機能亢進症|Hyperparathyroidism 低リン血症|Hypophosphatemia 胃切除後症候群|Postgastrectomy Syndrome |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Calcium|カルシウム [/S, /U] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/U] Phosphate|無機リン [/S] Uric Acid|尿酸 [/U] |
異常値を示す検査 |
25-Hydroxy Vitamin D|25-ヒドロキシビタミンD/25OHビタミンD [/S] 25-Hydroxy Vitamin D3|25-ヒドロキシビタミンD3 [/S] Acid Phosphatase, Tartrate Resistant|骨型酒石酸抵抗性フォスファターゼ [/S] Alkaline Phosphatase, Bone Isoenzyme|骨型アルカリホスファターゼ/骨性ALP [/S] Amino Acids|アミノ酸分析/アミノ酸41分画 [/U] Deoxypyridinoline|デオキシピリジノリン [/U] Hydroxyproline|総ヒドロキシプロリン/ヒドロキシプロリン [/U] Intact Type I Procollagen-N-Propeptide|インタクトI型プロコラーゲン-N-プロペプチド [/S] Osteocalcin|オステオカルシン [/S] Parathyroid Hormone C-Terminal|副甲状腺ホルモンC末端 [/S] Parathyroid Hormone,Intact|副甲状腺ホルモンインタクト/インタクト副甲状腺ホルモン [/S] pH|尿pH [/B] |
関連する検査の読み方 |
【ALP】 94%の患者で軽度~中等度に増加し、ALP3(骨性ALP)が優位である。 【インタクトI型プロコラーゲン-N-プロペプチド】 著しく増加する。インタクトI型コラーゲン-N-プロペプチドはI型プロコラーゲンがI型コラーゲンとしてコラーゲン線維に組み込まれる際に生成される物質で、その濃度はI型コラーゲンの合成量、すなわち骨形成を反映すると考えられる。 【活性型ビタミンD】 30%の患者で低下し、15ng/mL以下なら本症を強く示唆する。 【Ca】【IP】 低Ca血症、低Ca尿症、低リン酸血症が見られる。 【血清Ca×IP】 27以下である場合が多い。 【副甲状腺ホルモン-C末端】 軽度~中等度に増加する。副甲状腺ホルモンは血中Ca濃度維持に必須のペプチドホルモンで副甲状腺から分泌され肝や腎で代謝される。血中には84個のアミノ酸からなる全長PTHの他にN端、C端、中央部など様々なフラグメントが存在する。PTH-CはC端に対する抗体を用いた測定法で全長PTHとC端フラグメントを測定する。臨床的には血清Ca値が異常の患者を見た場合に、原因疾患の鑑別に用いるが、評価にあたっては必ず血清Ca濃度を測定する。 【副甲状腺ホルモンインタクト】 軽度~中等度に増加する。続発性副甲状腺機能亢進症が見られる。副甲状腺ホルモンインタクトは全長副甲状腺ホルモンのみを測定する検査で、生物学的活性を有さないものまで測定しているため測定値は副甲状腺ホルモン(PTH-whole)測定値よりも高値になる。また、慢性腎不全ではC端フラグメントの半減期が延長するため、PTH-wholeとPTH-intactの値の乖離が見られる。臨床的には血清Ca値に異常が見られた患者の原因疾患鑑別に用いるが、PTH-wholeとPTH-intactのどちらが優れているかは定説がない。PTHの測定に際しては必ず血清Caを同時に測定し、両者の値より病態を判断する。 【骨生検】 類骨組織の増加が認められたら診断は確定する。 |
検体検査以外の検査計画 | 二重エネルギーX線吸収測定検査、骨単純X線検査 |