疾患解説
フリガナ | テイリンケッショウ |
別名 | 低リン酸血症 |
臓器区分 | 電解質代謝疾患 |
英疾患名 | Hypophosphatemia |
ICD10 | E83.3 |
疾患の概念 | 血中リン値が2.5mg/dL以下が低リン血症で、2.0mg/dL以下になると血球系、神経系、筋肉、骨組織に様々な症状が見られる。原因は1.腸管からのリン吸収減少 2.PTHやアルコールによる尿へのリン喪失 3.インスリン投与やインスリン分泌刺激により、細胞外から細胞内へのリン移動などである。リンは無機リン酸化合物として存在し、そのうちイオンとしてはHPO₄²-とH₂PO⁴-無機リンがあり、存在比は4:1である。血清リン酸濃度は、赤血球ATP値に影響するため、0.5mg/dL未満になると赤血球ATPが枯渇し、2,3-ジホスホグリセリン酸欠乏、酸素解離曲線左方移動、グルコース利用の減少、乳酸産生増加などにより、硬い非変形性の赤血球が産生される。この小型の球状赤血球は毛細管で損傷を受けやすく、溶血性貧血を引き起こす。 |
診断の手掛 | 通常は無症状であるが、慢性欠乏状態で発症する食欲不振、筋力低下、骨軟化症を訴える患者を診たら本症を疑う。体内のリンの大部分は細胞内にあり、細胞外は1%程度である。血清でのリン測定値の判定は、臨床症状を伴っているかどうかで慎重に行う。臨床的に意義のある低リン血症は、糖尿病性ケトアシドーシスの回復期、急性アルコール中毒、アルコール依存症、重症熱傷、完全静脈栄養療法実施中の患者、慢性呼吸性アルカローシス、制酸薬を服用している透析患者などで見られる。 |
主訴 |
筋力低下|Weakness 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure 言語障害|Language disorder/Allophasis 構音障害|Dysarthria 呼吸困難|Dyspnea 昏睡|Coma 昏迷|Stupor しびれ|Numbness 食欲不振|Anorexia |
鑑別疾患 |
PTHrP産生腫瘍 ウィルソン病/肝レンズ核変性症|Wilson's disease/Hepatolenticular Degeneration 骨軟化症|Osteomalacia シスチン尿症 腫瘍性くる病 腎不全 先端巨大症|Acromegaly 多発性骨髄腫|Multiple Myeloma 低K血症|Hypokalemia 低Mg血症|Hypomagnesemia ビタミンD欠乏症|Vitamin D Deficiency ファンコニー症候群|Fanconi syndrome 副甲状腺機能亢進症|Hyperparathyroidism 薬剤性尿細管障害 神経性食欲不振症 アルコール依存症|Alcoholism 下痢症|Diarrhea 吸収不良症候群|Malabsorption 呼吸性アルカローシス|Respiratory Alkalosis |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S, /WBC] Calcium|カルシウム [/S] Phosphate|無機リン [/S] |
異常値を示す検査 |
Alkaline Phosphatase, Bone Isoenzyme|骨型アルカリホスファターゼ/骨性ALP [/S] Factor IX|第IX因子活性/クリスマス因子 [/P] Hydroxyproline|総ヒドロキシプロリン/ヒドロキシプロリン [/U] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/P] Phosphoethanolamine [/P, /U] Pyridoxal Phosphate|ビタミンB6/ピリドキサールリン酸 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【血小板機能】 低下する。 【赤血球】 溶血が起こる。 【2,3-ジホスグリセレート】 2,3-DPG産生低下により機能低下が起こる。 2,3-DPGは解糖系の中間代謝産物で赤血球内に存在し1:1のモル比でヘモグロビンと結合し、ヘモグロビンの酸素解離曲線を左右にシフトして組織への酸素供給を調節している。増加するとBohr効果によりヘモグロビンの酸素解離曲線が右にシフトしヘモグロビンから酸素が解離し易くなり、この生理作用により組織への酸素供給が調節される。臨床的には赤血球酵素異常、アシドーシスによる解糖系の抑制、甲状腺ホルモン異常などの病態を見た場合に測定する。 【無機リン】 2.5mg/dL以下である。0.1~0.2mg/dLの重度の低リン血症では、赤血球脆弱性の増大による溶血性貧血や白血球走化性障害による易感染性、血小板機能障害による点状出血が起こり得る。 【最大尿細管再吸収率(TmP/GFR)】 リン酸塩の尿細管での再吸収が評価できる。TmP/GFR=血清リン酸濃度-(尿中リン酸塩濃度×尿量)÷GFR 基準範囲は2.5~4.5mg/dL |
検体検査以外の検査計画 | 単純X線検査、骨塩量測定 |