疾患解説
フリガナ | ジンコウカショウ |
別名 |
良性高血圧性細動脈硬化症 悪性高血圧性細動脈硬化症 |
臓器区分 | 腎・泌尿器疾患 |
英疾患名 | Renal Sclerosis |
ICD10 | N26 |
疾患の概念 | コントロール不良の慢性高血圧が原因の、主として微小血管、糸球体、尿細管および間質組織に硬化性病変を生じた病態の総称で、高血圧性心疾患や尿濃縮能の障害を来す。良性高血圧性細動脈腎硬化症と悪性高血圧性細動脈腎硬化症がある。前者は慢性高血圧が原因の進行性腎機能障害で、後者は高血圧緊急症に続発する腎機能の急激な悪化である。危険因子は高齢、コントロール不良の高血圧、糖尿病性腎症などである。 |
診断の手掛 | 良性高血圧性細動脈腎硬化症は、長期にわたる高血圧患者に蛋白尿(0.5g/日未満)が見られたら発症を疑う。進行すると糸球体濾過量が減少する。悪性高血圧性細動脈腎硬化症の場合は、高血圧緊急症に続発する腎機能の急激な悪化が特徴的である。症状は慢性腎臓病の症状と類似し、食欲不振、悪心、嘔吐、そう痒、傾眠または錯乱、体重減少、口腔内の不快な味などを訴える。また、高血圧関連の臓器障害の徴候が眼、皮膚、中枢神経系、末梢神経系に見られることがある。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 高血圧|Hypertension 呼吸困難|Dyspnea 錯乱|Confusion 視力障害|Blurred vision/Visual impairment 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 蛋白尿|Proteinuria 頻尿|Pollakiuria/Pollakisuria |
鑑別疾患 |
IgA腎症|IgA Nephropathy 尿細管間質疾患 虚血性腎症 高血圧症|Hypertension 腎不全 巣状分節性糸球体硬化症|Focal Segmental Glomerular Sclerosis(FSGS) 慢性腎不全|Chronic Renal Failure 急性糸球体腎炎|Acute Glomerulonephritis 腎動脈狭窄 腎血管炎 褐色細胞腫|Pheochromocytoma 原発性アルドステロン症|Primary Aldosteronism クッシング症候群|Cushing's Syndrome 糖尿病性腎症|Diabetic Nephropathy |
スクリーニング検査 | Creatinine|クレアチニン [/S] |
異常値を示す検査 |
Active Plasma Renin|活性型レニン/血漿レニン活性/総レニン [/P] Arginine|アルギニン [/P] Creatine|クレアチン [/S] Estimated Glomerular Filtration Rate|推算GFR [/S] Guanidine|グアニジン [/S] Guanidinoacetic Acid [/S] Guanidinosuccinic Acid|グアニジノコハク酸 [/S] Inulin Clearance|イヌリンクリアランス [/Specimen] Methylguanidine|メチルグアニジン/グアニジノ化合物 [/S] pH|尿pH [/U] Urinary Microalbumin|尿中微量アルブミン [/U] β-Guanidinopropionic Acid [/S] |
関連する検査の読み方 |
【eGFR】 低値になる。eGFRは日本腎臓学会が示したCKDガイドラインに記載されているGFRの算定法で、イヌリンクリアランスで求めたGFRと酵素法で測定した血清クレアチニン値から計算式で求められる。eGFRは簡便な方法であるが、スクリーニングや疫学研究を目的に作成されているので、実際の臨床の場で個々の患者を評価するためにはイヌリンクリアランスやクレアチニンクリアランスを用いることが薦められている。臨床的には糸球体濾過量の推定とCKDの病期分類に用いる。個々の患者評価:eGFR=0.719×Ccr(実測クレアチニンクリアランス。薬物投与調節:eGFR=0.719×Cin(実測イヌリンクリアランス) 【UN】【クレアチニン】 進行すると増加する。 【イヌリンクリアランス】 低値である。イヌリンは生体内で合成されず、糸球体で100%濾過され尿細管で再吸収されないことから、Cinは真の糸球体濾過量(GFR)を表す最良のマーカーとされている。臨床的にはGFRのゴールドスタンダードとして慢性腎疾患(CKD)のステージ分類や血液透析導入時の正確な腎機能評価に用いられる。 【尿一般検査】 潜血は陰性である。0.5g/日未満の蛋白を認める。 【尿沈渣】 硝子様円柱を認めることがあるが、活動性の腎障害を示す尿沈渣所見は認められない。尿細管上皮細胞を認める。 【尿中微量アルブミン】 増加する。健常者では一日に30mg/日未満のアルブミンが尿中に排泄されているが、糸球体の濾過機能が障害されると尿中にアルブミンを主成分とする蛋白の排泄量が増加する。特に糖尿病性腎症の初期には蛋白排泄量の微増が知られており、これを微量アルブミン尿と呼ぶ。微量アルブミンの排泄量は30~300mg/日とされており、尿試験紙では検出が困難で、免疫比濁法などの好感度検出法で測定する。 【血漿レニン活性】 安静時で2ng/mL以上になる。レニンは腎糸球体輸入臍動脈壁に存在する傍糸球体細胞で産生されるタンパク分解酵素である。検査は血漿中のレニン活性を有するARC濃度を特異的なモノクローナル抗体を用いて測定する。血圧や水・電解質の調節に重要な役割を持つレニン・アンジオテンシン系の評価には血漿レニン活性が測定されてきたが、ARCの直接測定により、レニンの分泌状態がより正確に判断できる。異常値を示したらアルドステロン濃度(PAC)を測定しPAC:PRA比を評価する。臨床的には腎疾患、高血圧、浮腫、腹水などの症状を持つ患者やミネラルコルチコイド異常が疑われる場合に測定する。 【腎生検】 確定診断に必要である。糸球体には一次性の病変は無く、腎小動脈に内膜の肥厚と硝子化を認める。 |
検体検査以外の検査計画 | 血圧測定、腎超音波検査、腎動脈造影CT検査 |