疾患解説
フリガナ | タンジュンヘルペスウイルスカンセンショウ |
別名 | |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Herpes Simplex Infection(HSV) |
ICD10 | B00.9 |
疾患の概念 | 単純ヘルペスウイルス(1型、2型)による感染で、初感染では感染部に水泡を形成し、口内炎、泌尿生殖器系疾患、顔面神経麻痺から脳炎まで様々な疾患を引き起こす。重篤な合併症として脳炎、肺炎、重症角膜炎がある。このウイルスは感染後、後根神経節細胞内に潜伏し、免疫力低下などで再活性化する。HSV-1およびHSV-2は、口腔感染症または性器感染症を引き起こしうる。ほとんどの場合、HSV-1は歯肉口内炎、口唇ヘルペス、ヘルペス角膜炎を発症し、HSV-2は、性器病変を発症する。HSVの感染は、活発にウイルスを排出しているヒトとの接触により、初感染後、ウイルスは神経節に入り、そこから周期的に出現して反復感染症を引き起こす。再発性のヘルペス発疹は、日光への曝露、熱性疾患、ストレス、免疫抑制または原因不明の刺激により誘発される。 |
診断の手掛 | 皮膚粘膜感染症が最も多い。口の周囲や唇などにヒリヒリする不快感の前駆症状の後に、小水疱の集合体が現れたら診断は容易である。小水疱は有痛性で、紅斑性上に集合体として観察される。集合体の大きさは0.5~1.5cmと様々で、互いに融合することがある。小水疱は数日間持続し、その後破裂して乾燥し、薄く黄色い痂皮を形成し8~12日後に治癒する。眼疾患としてはヘルペス性角膜炎、眼瞼炎、角結膜炎を引き起こす。頭痛、発熱、行動障害を訴えたら脳炎を考える。性器ヘルペスは、先進国では最も頻度の高い性感染症で、通常HSV-2により引き起こされるが、10~30%の症例はHSV-1が関与している。病変部は、男性は包皮、亀頭および陰茎、女性は陰唇、陰核、会陰、腟および子宮頸部に見られる。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea かゆみ|Itching 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure 紅斑|Erythema/Rubedo 歯肉腫脹|Swelling of gingiva 歯肉出血|Gingival bleeding/Ulorrhagia 水疱|Bulla/Blister 頭痛|Headache/Cephalalgia 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 発疹|Eruption/Exanthema リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
角膜炎 眼炎 水痘/帯状疱疹ウイルス感染症|Herpes Zoster Infection 髄膜炎|Meningitis 脳炎|Encephalitis 膿痂疹 風疹|Rubella Infection 突発性発疹 伝染性紅斑 マイコプラズマ感染症|Mycoplasma Infection オウム病|Psittacosis ライム病|Lyme Disease リケッチア症 手足口病 接触皮膚炎 スティーブンス-ジョンソン症候群|Stevens-Johnson Syndrome(SJS) 黄色ブドウ球菌感染症 |
スクリーニング検査 |
Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Erythrocytes|赤血球数 [/CSF] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Platelets|血小板 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF] Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P] |
異常値を示す検査 |
Cells [/CSF] Complement Fixation [/S] Complement-fixing Antibodies [/CSF, /PlF, /S, /Synovial Fluid] Factor II|第II因子活性/プロトロンビン [/P] Factor IV|第IV因子活性/フリーCaイオン [/P] Herpes Simplex Virus Antibodies|単純ヘルペスウイルス抗体/HSV抗体/抗単純ヘルペスウイルス抗体 [/S] Herpes Simplex Virus Antigen|単純ヘルペスウイルス抗原 [/Blisters Fluid] Neutralizing Antibodies [/S] Prothrombin Consumption [/B] |
関連する検査の読み方 |
【尿沈渣】 核内封入体細胞を認める。 【単純ヘルペスウイルス抗体】 感染初期から数週間は検出できる。単純ヘルペスウイルスは初感染後、生涯にわたり三叉神経節、仙骨神経節に潜伏感染しているが、疲労、外傷、熱性疾患、妊娠などにより活性化され口唇部や陰部の皮膚に水泡を作るウイルスである。また、性器ヘルペスは出産時に新生児に感染すると重篤な症状をきたすため迅速診断が必要になる。臨床的には角結膜炎、口内炎、ヘルペス脳炎、性器ヘルペスなどで単純ヘルペス感染を疑う場合に測定する。また、回復期血清で高値が認められない場合は、1~2週間後に再検する。 【Tzanck試験】 小水疱の基底部の擦過細胞に水痘/帯状疱疹ウイルス感染症と同じ多核巨細胞を認める。 【EIA】【直接蛍光抗体法】 水疱からウイルス抗原を検出するもので迅速でTzanck試験より感度も特異度も高い。 【PCR】 組織や細胞中のウイルスを迅速に高感度で検出できる。 【ウェスタンブロット法】 亜分画の決定に用いる。 【ウイルス培養】 水疱や潰瘍部から採取した検体を培養して特異抗体で染色する方法が感度と特異度が最も高い。これによりウイルスの同定とHSV-1と2の鑑別が可能である。 |
検体検査以外の検査計画 | |