疾患解説
フリガナ | スイトウ/タイジョウホウシンウイルスカンセンショウ |
別名 |
水痘瘡 急性後根神経節炎 |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Herpes Zoster Infection |
ICD10 |
水痘:B01.9 帯状疱疹ウイルス感染症:B02.9 |
疾患の概念 | 水痘は、水痘ウイルス(ヒトヘルペスウイルス3)の初感染により全身の皮膚(頭部有髪部、顔面、体幹に好発)に水泡を形成したものである。また帯状疱疹は、知覚神経節に潜伏していたウイルスが、再活性化され神経支配領域の皮膚に水泡を生じたものである。成人が罹患すると重症化することがある。水痘はウイルスの急性侵襲期で、帯状疱疹は潜伏期からの再活性化を意味する。水痘は極めて感染性が強く、感染飛沫の吸入たは接触で伝播し、前駆期および発疹早期が最も感染しやすい。最初の皮膚病変発現の48時間前から最後の病変部位が痂皮化するまで感染性がある。流行は冬から春前半に3~4年周期で起こる。一部の乳児は、胎盤を介して獲得した免疫を生後6カ月まで維持している。入院例は5類感染症である。 |
診断の手掛 | 水痘は、軽度の全身症状を訴える小児が、斑状疹、丘疹、小水疱などの皮膚病変を発症したら、ほぼ診断は確定する。最初の発疹は、斑状で、一過性の紅潮を伴い、数時間以内に丘疹になり、その後は、疾患に固有の涙滴状小水疱が、強いそう痒を伴う発赤部の上に見られる。この病変は膿疱となり、後に痂皮化する。病変は、まず顔面および体幹に発生し、次々に発疹が群発し、前の発疹が痂皮化し始める頃に、新たな斑状発疹が出現する。新たな病変は通常5日目までには現れなくなり、6日目までに痂皮化し、殆どの痂皮は、発症後20日未満で消失する。神経系の合併症として、急性小脳性運動失調があり、小児の1/4000症例で発症するとされている。ライ症候群は稀ではあるが、重度の小児期合併症で、発疹出現の3~8日後に発症することがあり、アスピリンがそのリスクを高める。帯状疱疹は刺すような痛み、しびれた痛みが発生した場所に2~3日以内に、紅斑上に小水疱が散在する発疹が現れる。病変部は片側性なのが特徴的である。膝神経節帯状疱疹(ラムゼイ-ハント症候群)は、膝神経節(顔面神経膝状部)が侵され、耳痛、顔面神経麻痺および回転性めまいが生じる。耳帯状疱疹は小水疱性の発疹が外耳道に生じ、舌の前側3分の2で味覚が失われることがある。眼部帯状疱疹は三叉神経節が侵されることで発症し、第5脳神経の眼部分枝分布領域である眼の内部と周囲に疼痛小水疱が見られる。鼻の先端の小水疱(Hutchinson徴候)は鼻毛様体神経分枝への病変波及を示し、重度の眼疾患を来すリスクが高いことを示唆する。 |
主訴 |
丘疹|Papule 紅斑|Erythema/Rubedo 紫斑|Purpura しびれ|Numbness 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 食欲不振|Anorexia 水疱|Bulla/Blister 疼痛|Pain/Ache 膿疱|Pustule 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 浮腫性紅斑|Edematous erythema 発疹|Eruption/Exanthema リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
サル痘 小児ストロフルス 単純ヘルペスウイルス感染症|Herpes Simplex Infection(HSV) 手足口病 伝染性膿痂疹 天然痘|Smallpox 白血球減少症 白血病 風疹|Rubella Infection ホジキンリンパ腫|Hodgkin's Disease 麻疹|Measles 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B, /P] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /CSF] Lymphocytes|リンパ球 [/B, /CSF] Monocytes|単球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] β-Globulin|β-グロブリン [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
5-Hydroxyindoleacetic Acid|5-ヒドロキシインドール酢酸 [/CSF] Anti-Varicella Zoster Virus IgG Antibodies|水痘・帯状疱疹ウイルス抗体/VZV抗体/抗水痘・帯状疱疹ウイルス抗体 [/CSF] Antibodies to Human Leukocyte Interferon [/S] Cells [/CSF] Complement Fixation [/S] Homovanillic Acid|ホモバニリン酸 [/CSF] IgG Index|IgG合成比 [/CSF] Neopterin|ネオプテリン [/S] Neutralizing Antibodies [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 白血球は基準範囲内か減少するが二次的な細菌感染があれば増加する。 【水痘・帯状疱疹ウイルス抗体】 水痘・帯状疱疹ウイルスは初感染では水痘の、再活性化では帯状疱疹の原因ウイルスである。小児期に感染したウイルスは生涯にわたり神経節に存在し、免疫力の低下などにより再活性化して帯状疱疹を発症する。現在、数種の測定法があるがそれぞれに特徴があるので、目的に応じた選択が必要である。補体結合反応:CF抗体:発疹1週後に陽性となり、3週間前後に最高値に達し、1年後には検出できなくなる。単純ヘルペスウイルスとの交差反応を示すので注意する。EIA:発疹1週間以内にIgM抗体が出現し、2週位に最高値となり2ヶ月後には低値になる。IgG抗体は1週後から上昇し始め、2~4週後に最高値になり長期間抗体価が維持される。この検査はVZV感染症が初感染または再活性化であるか、既感染状態であるかの判定に用いる。また、ワクチン接種後の効果判定にも使われる。 【水痘・帯状疱疹ウイルス抗原】 痂皮化した部分を免疫蛍光染色するとウイルス抗原が証明される。急性期の診断に有用。培養検査より感度がいい。 【Tzanck試験】 水疱内容や水疱底部の顕微鏡による観察で核内に封入体を持つ巨大上皮細胞がみられる。単純ヘルペスでも同様な所見を認める。水疱の水痘蓋を破り、スライドを水痘底にあて検体を採取し、Giemsa染色で変性した細胞(Tzanck cell)を確認する。 【髄液一般検査】 帯状疱疹患者の40%は髄液中に単核細胞が増加する。 【リンパ球刺激試験】 PHAとConAが低値である。リンパ球にレクチンの一種であるPHAやCon-Aを加え培養すると、リンパ球は活性化され大型の芽球様細胞になる。PHAとCon-AはT細胞を活性化し、PHAはCD4陽性細胞を、Con-AはCD陽性細胞をより強く活性化する。この現象を利用してリンパ球の免疫機能を見るのがリンパ球幼若化検査である。異常値を認めたらリンパ球ポピュレーション比率、免疫グロブリン値・産生能、免疫電気泳動などを行う。 【急性期の診断】 免疫蛍光法、EIA、補体結合反応はいずれも急性期の診断には有用性が低い。 |
検体検査以外の検査計画 |