疾患解説
フリガナ |
サイキンセイズイマクエン |
別名 |
化膿性髄膜炎
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臓器区分 |
感染性疾患
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英疾患名 |
Bacterial Meningitis
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ICD10 |
A00.9
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疾患の概念 |
一般的には、細菌が血流を介して、くも膜下腔および髄膜に達して発症する疾患で、結核性、梅毒性を除いた細菌による髄膜の化膿性炎症を発症する。起炎菌は、成人では髄膜炎菌、肺炎球菌、ブドウ球菌が、また生後2ヶ月間はB群連鎖球菌が最も一般的である。臨床上は髄膜脳炎の形をとることが多い。髄液には、白血球、免疫グロブリン、補体が少量しか存在しないため、感染初期には炎症を起こすことなく細菌が増殖し、その後、増殖した細菌が内毒素、タイコ酸などをを放出し、これが白血球やTNFなどを媒介として炎症反応を起こす。結果として、髄液中では蛋白は増加するが、ブドウ糖は細菌が消費するので、濃度が減少する。発症の原因は患者年齢、侵入経路、免疫状態によって異なる。小児および若年成人は、髄膜炎菌と肺炎球菌の頻度が高い。中年成人および高齢者の髄膜炎は、肺炎球菌が最も頻度の高いが、髄膜炎菌も中年成人および高齢者に髄膜炎を引き起こす可能性がある。細菌の侵入経路は血行性感染、副鼻腔、中耳、乳様突起などの感染巣、穿通性の外傷、脳神経外科手術後と先天性または後天性の頭蓋骨または脊椎の欠損などである。免疫状態では易感染性患者で頻度が高いが、原因菌は、肺炎球菌、L. monocytogenes、緑膿菌、結核菌、髄膜炎菌、グラム陰性細菌などである。
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診断の手掛 |
先行する呼吸器疾患、咽頭痛に続き、発熱、頭痛、項部硬直の典型的な3徴が見られたら本症の可能性が高い。発症は非特異的症状が3~5日間潜行的に進行することで始まるので注意する。典型的な髄膜炎の症状と徴候は、発熱、頻脈、頭痛、羞明、嗜眠,昏迷などの精神状態の変化、項部硬直などであるが、黄色ブドウ球菌が原因の場合は背部痛もみられる。急性細菌性髄膜炎の小児では、最大40%の患者に初期に痙攣発作が見られる。Kernig徴候およびBruzinski徴候が患者の半数に見られる。また、髄膜炎菌血症による皮疹や点状出血を見逃さない。
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主訴 |
意識障害|Memory impaiment 咽頭痛|Pharyngodynia 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 顔面神経麻痺|Facial paralysis/Facial palsy 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure ケルニッヒ徴候|Kernig sign 高熱|High fever/Hyperthermia 項部硬直|Nuchal stiffness/Stiffness of neck/Stiff neck 昏睡|Coma 昏迷|Stupor 髄膜刺激症状|Meningeal irritation sign 頭痛|Headache/Cephalalgia 点状出血|Petechiae 動眼神経麻痺|Oculomotor paralysis 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 皮疹|Eruption/Exanthema ブルジンスキー徴候|Brudzinski sign
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鑑別疾患 |
インフルエンザ|Influenza エイズ/HIV感染症|Acquired Immune Deficiency Syndrome(AIDS) 関節炎 腎炎 心筋炎|Myocarditis 水頭症|Hydrocephalus 髄膜症 熱性痙攣 脳腫瘍|Cerebral Tumor 肺炎|Pneumonia 敗血症|Sepsis ライ症候群|Reye's Syndrome 単純ヘルペスウイルス脳炎|Herpes Simplex Encephalitis ウイルス性脳炎|Viral Encephalitis リステリア症
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スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/CSF] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Chloride|クロール [/CSF, /S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/CSF, /S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] GFR|糸球体濾過量 [/U] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/CSF, /CSF, /S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/CSF] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/CSF, /S] Leukocytes|白血球数 [/B, /CSF] Lymphocytes|リンパ球 [/CSF] Neutrophils|好中球 [/B, /CSF] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/CSF] Sodium|ナトリウム [/S, /U] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] Uric Acid|尿酸 [/CSF, /S, /U] α2-Globulin|α2-グロブリン [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/CSF]
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異常値を示す検査 |
Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [/CSF] Albumin Index [/CSF] Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/CSF] Arginine Vasopressin|アルギニンバゾプレッシン/抗利尿ホルモン/バゾプレシン [/P] Cells [/CSF] Cryofibrinogen|クリオフィブリノゲン [/P] Culture [Positive/B, Positive/CSF] Immunoglobulins|免疫グロブリン [/CSF, /PlF] Insulin-like Growth Factor Binding Protein-3|インスリン様成長因子結合蛋白-3型/IGF結合蛋白-3 [/CSF] Interleukin-1β|インターロイキン-1β [/CSF] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/CSF, /S] Interleukin-8|インターロイキン-8 [/CSF] Isocitrate Dehydrogenase|イソクエン酸脱水素酵素/イソクエン酸デヒドロゲナーゼ [/CSF] Lactate|乳酸/ラクテート [/CSF] Lactate Dehydrogenase Isoenzyme-5|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/CSF] Lactate Dehydrogenase Isoenzymes|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/CSF, /S] Lysozyme|リゾチーム/ムラミダーゼ/ムコペプタイド/グリコヒドロラーゼ [/CSF] Nerve Growth Factor|神経成長因子 [/CSF] Nitroblue Tetrazolium Test|ニトロブルー・テトラゾリウム試験/白血球殺菌能試験 [/B] Oligoclonal Banding|オリゴクローナルバンド [/CSF] Procalcitonin|プロカルシトニン [/P] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/CSF, /S] Thromboplastin Time [/CSF] Tumor Necrosis Factor|腫瘍壊死因子-α [/CSF] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/CSF] Tumor Necrosis Factor-β|腫瘍壊死因子-β/リンホトキシン [/CSF] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/CSF, /S] α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/CSF] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/CSF, /S] α1-Microglobulin|α1-ミクログロブリン/α1-マイクログロブリン [/CSF] α2-Ceruloplasmin [/CSF, /S] α2-Haptoglobin [/CSF, /S] α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [/CSF] β-Trace Protein [/CSF] β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [/CSF, /S]
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関連する検査の読み方 |
【腫瘍壊死因子-α】【腫瘍壊死因子-β】 αとβが高値を示す。腫瘍壊死因子-αは腫瘍部位に出血性壊死をもたらすサイトカインで、生理的には免疫・炎症などの各種生体反応のメディエーターでもある。単球、リンパ球、好中球、マクロファージ、NK細胞などで産生されT細胞の増殖、B細胞からの抗体産生の誘導、腫瘍細胞に対する障害作用を持ち、種々のサイトカインの産生にも関与している。腫瘍壊死因子-βは抗原刺激によって活性化されたリンパ球から産生される細胞障害因子でリンホトキシンとも呼ばれている。TNF-βはTNF-αと発生学的にも生理作用の面でも多くの相同性を持っているが疾患の関連は知られていない。 【髄液一般検査】 グルコースは低下するが、基準範囲内でも髄液:血清比は低下する。蛋白は1.72g/L以上に増加する。白血球は38%の患者で2,000/μL以上、多核白血球が1,180/μL以上である。著明な頭蓋内圧亢進または腫瘤を示唆する徴候を認める患者は、腰椎穿刺は禁忌である。 【髄液細菌検査】 90%の患者は髄液中に起炎菌が同定できる。 【髄液中ヘモフィルス・インフルエンザ抗原】 尿中抗原とともに高頻度に陽性である。この他に肺炎球菌、B群溶連菌、髄膜炎菌を検索する。 【髄液微生物PCR】 髄液培養で微生物が検出されなかった場合に有用である。 【血液培養】 抗生剤未使用なら血液培養は通常陽性である。 【リムルス試験】 グラム陰性菌による髄膜炎のエンドトキシン検出に有用である。
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検体検査以外の検査計画 |
CT検査、MRI検査
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