疾患解説
フリガナ | キュウセイカンエン |
別名 | |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Acute Hepatitis |
ICD10 | K72.0 |
疾患の概念 | ウイルス、薬剤、薬毒物、自己免疫などで発症する急性の肝細胞障害で、大半はウイルス性と考えられる。現在、肝炎ウイルスはA,B,C,D,Eの5種類が確認されている。 |
診断の手掛 | ウイルス性、薬剤性、中毒性、アルコール性などがあり原因によって発症様式は異なる。黄疸がなくウイルス以外の原因による肝炎が疑われる場合は、積極的に肝機能検査を行う。急性肝炎の診断アプローチには診断アルゴリズムを利用する。これは急性肝炎を疑う患者すべてにHBs抗原、IgM HAV抗体、IgM HBc抗体、HCV抗体検査を行うもので、これ等の検査が陰性ならば、異種抗体や伝染性単核球症、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、コクサッキーウイルス、トキソプラズマ症の検査を進める。また、全ての薬物服用暦を慎重にかつ完全に聴取しなければならない。 |
主訴 |
黄疸|Jaundice 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 肝腫大|Hepatomegaly 関節痛|Arthralgia 感冒様症状|Symptomes of common cold 結膜黄染|Conjunctival xanthosis 食欲不振|Anorexia 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 着色尿|Chromaturia 濃染尿|Hyperchromic urine 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 腹痛|Abdominal pain |
鑑別疾患 |
転移性肝癌|Metastatic Neoplasm to Liver/Secondary Cancer of Liver アルコール依存症|Alcoholism 肝虚血 肝硬変|Cirrhosis of Liver 肝性昏睡 高コレステロール血症|Hypercholesterolemia 高尿酸血症 硬膜下血腫 そう痒症 糖尿病性昏睡 脳血管障害 閉塞性黄疸 溶血性貧血 ウィルソン病/肝レンズ核変性症|Wilson's disease/Hepatolenticular Degeneration |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Cholinesterase|コリンエステラーゼ/ブチルコリンエステラーゼ/偽コリンエステラーゼ [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] α1-Globulin|α1-グロブリン [/S] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
Alcohol Dehydrogenase|アルコール脱水素酵素 [/S] CA 19-9|CA19-9 [/S] Isocitrate Dehydrogenase|イソクエン酸脱水素酵素/イソクエン酸デヒドロゲナーゼ [/S] Gelsolin [/S] Glycocholic Acid|グリココール酸/グリシン抱合型コール酸 [/S] Multiubiquitin Chains [/S] Neopterin|ネオプテリン [/S] Soluble E-Selectin|可溶性E-セレクチン/可溶性CD62E/可溶性ELAM-1 [/S] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S] Soluble Vascular Cell Adhesion Molecule-1|可溶性VCAM-1/可溶性CD106/可溶性血管細胞接着分子-1 [/S] Sulfated Bile Acids|硫酸抱合型胆汁酸(尿) [/U] Zinc|亜鉛 [/U] |
関連する検査の読み方 |
【ALP】 基準範囲上限からの上昇率は、ウイルス性95%は3倍以下、薬剤性50%は3倍以上、中毒性2倍以下、アルコール性25%は3倍以上。 【ALPアイソザイム】 肝性ALP(ALP2)が増加する。 【AST】【ALT】 著しく増加する。 【AST:ALT比】 ウイルス性、薬剤性、中毒性は1未満。発症後1~2日で1以上になり、極期では40以上である。アルコール性は2以上。 【ALTの上限】 基準範囲上限からの上昇率は、ウイルス性8~40倍以上、薬剤性3~40倍以上、中毒性10~100倍以上、アルコール性3~5倍。 【A型肝炎ウイルスマーカー1.2】 A型肝炎ウイルス感染の有無の評価に用いる。 【HBウイルスDNA】 B型肝炎でウイルス量の測定により治療効果を判定する。 【B型肝炎ウイルスマーカー3.4.5.6.7.8】 B型肝炎の病期・病態の評価に用いる。 【E型肝炎ウイルスマーカー】 HEV抗体、HEV-RNAを検査する。 【HBVプレコア・コアプロモーター変異】 B型肝炎で陽性である。 【HCV肝炎ウイルスマーカー9.10.11.12】 C型肝炎ウイルスの感染状態の把握に用いる。 【CEA】 軽度に増加することがある。 【AFP】 軽度~中等度に増加することがある。 【DU-PAN-2】 増加することがある。 【LAP】 70~200IU/L程度に増加する。 【LD】【LDアイソザイム】 増加し、LD5優位である。 【α2-HSグリコプロテイン】 回復期に増加する。 【イソクエン酸脱水素酵素】 著しく増加する。 【グリココール酸】 肝障害マーカーとしてはビリルビンより鋭敏で高値を示す。 【グルタミン酸脱水素酵素】 肝細胞の壊死、破壊の程度が強く、ミトコンドリアまで障害されると血中に逸脱する。 【膠質反応】 TTTとZTTは基準範囲上限以上である。 【PT】 PT-INRの基準範囲上限値に対する延長率は、ウイルス性:3倍以下。薬剤性:3倍以下。中毒性:4倍以上は予後不良。アルコール性:3倍以下。 【フィブリノゲン】 100~200mg/dL程度に低下する。 【ビリルビン】 ウイルス性では増加の程度は様々。薬剤性は高値のことがある。中毒性は通常5mg/dL以下、アルコール性で5mg/dL以上は予後不良である。 【黄疸の頻度】 ウイルス性10~70%、薬剤性20~30%、中毒性10%以下、アルコール性50~70%。 【ビリルビン】【ウロビリノゲン】 尿中ビリルビンとウロビリノゲンは増加する。ビリルビン尿ではしばしば大量の黄染した尿細管上皮細胞を認める。 【総胆汁酸】 10~40μmol/L程度に増加する。 【尿硫酸抱合型胆汁酸】 急性肝炎の極期では著しく増加、回復とともに低下する。 【ASTアイソエンザイム】 増加する。 【総分枝鎖アミノ酸:チロシンモル比】 3以下に低下する。 【フィッシャー比】 著しく低下する可能性がある。 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部超音波検査、肝CT検査 |