疾患解説
フリガナ | コウコレステロールケッショウ |
別名 | 家族性高コレステロール血症 |
臓器区分 | 代謝性疾患 |
英疾患名 | Hypercholesterolemia |
ICD10 | E78.0 |
疾患の概念 | 血清中のコレステロール濃度が、220mg/dL以上に上昇した状態で、遺伝子異常や原因不明の原発性と肥満、糖尿病、ネフローゼ症候群などに合併する続発性に分けられる。原発性高コレステロール血症には、家族性高コレステロール血症、家族性複合型高脂血症、特発性高コレステロール血症があり、家族性高コレステロール血症はLDL受容体の欠陥とLDLクリアランスの低下が原因で、有病率はヘテロ接合体が1/500、ホモ接合体が1/1,000,000である。臨床的特徴は、ヘテロ接合体では総コレステロール濃度が250~500mg/dLで、腱黄色腫、角膜輪、30~50歳発症の冠動脈疾患、60歳未満の心筋梗塞の原因の約5%を占める。ホモ接合体では、総コレステロール濃度が500mg/dL以上になり、扁平黄色腫、腱黄色腫、結節性黄色腫、若年性(18歳未満)の冠動脈疾患を発症する。家族性複合型高脂血症は、複合的な遺伝子欠損が原因と考えられ、有病率は1/50~1/100である。総コレステロール濃度は250~500mg/dL、中性脂肪は250~750mg/dL、アポ蛋白の増加が見られ、若年性冠動脈疾患、60歳未満発症の心筋梗塞の原因の約15%を占める。特発性高コレステロール血症は、家族性高コレステロール血症と家族性複合型高脂血症を除く原因不明の高コレステロール血症である。続発性高脂血症は、高脂血症全体の約40%を占めるとされ、特に糖尿病、薬剤性、甲状腺機能低下症、腎疾患に続発することが多い。 |
診断の手掛 | 黄色腫(皮膚、腱)が見られることがある家族性高コレステロール血症以外は、臨床症状に乏しく、検査により偶然発見されることが多い。日本動脈硬化学の診断基準では、コレステロール220mg/dL以上(LDL-コレステロール140mg/dL以上)を高コレステロール血症としている。 |
主訴 |
黄色腫|Xanthoma 肝腫大|Hepatomegaly 脾腫|Splenomegaly 腹痛|Abdominal pain |
鑑別疾患 |
高血圧症|Hypertension シトステロール血症 心筋梗塞 動脈硬化症|Arteriosclerosis 脳腱黄色腫症 肥満症|Obesity 原発性胆汁性肝硬変|Primary Biliary Cirrhosis(PBC) ネフローゼ症候群|Nephrotic Syndrome クッシング症候群|Cushing's Syndrome 急性ポルフィリン症 閉塞性動脈硬化症 褐色細胞腫|Pheochromocytoma |
スクリーニング検査 |
Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/Neutrophils, /S, /S] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S, /S] LDL-Cholesterol|LDL-コレステロール/低比重リポ蛋白コレステロール [/S] Lymphocytes|リンパ球 [/B] Sodium|ナトリウム [/S] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S] Thyroid Stimulating Hormone|甲状腺刺激ホルモン [/S] |
異常値を示す検査 |
Apolipoprotein A-I|アポリポ蛋白A-I [/S] Apolipoprotein B|アポリポ蛋白B [/S] Carnitine|カルニチン分画/ビタミンBT [/S] Carnitine, Free|カルニチン分画/ビタミンBT [/S] CD4+ Lymphocytes [/B] CD8+ Lymphocytes [/B] Cholesterol Ester Transfer|コレステロールエステル転送蛋白/コレステリルエステル転送蛋白 [/S] Cholesterol Ester Transfer Protein|コレステロールエステル転送蛋白/コレステリルエステル転送蛋白 [/S] Coenzyme Q10|補酵素Q10 [/S] Endothelin-1|エンドセリン [/P] Interleukin-2|インターロイキン-2 [/S] Lipoprotein Lp (a)|リポ蛋白(a)/リポプロテイン(a) [/S] Lymphocyte T-Cells|T細胞 [/B] Norepinephrine|カテコールアミン総 [/P] Phospholipids|リン脂質 [/S] Remnant Like Particles-Cholesterol|レムナント様リポ蛋白コレステロール/RLP-コレステロール [/S] Ubiquinone|ユビキノン [/S] Vitamin E|ビタミンE/トコフェロール/α-トコフェロール [/RBC, /S] α-Tocopherol:Lipids Ratio [/S] |
関連する検査の読み方 |
【LDL-コレステロール】 IIa型で増加する。LDL-Cは低比重リポ蛋白(LDL)に含まれるコレステロールで、末梢組織へのコレステロールの輸送と、末梢組織でのコレステロールの代謝調節を担当している。血清コレステロールの約50%はLDL-Cで、最も強い動脈硬化惹起性を持つLDLは動脈硬化症の発症と進展に関与していると考えられている。臨床的には高脂血症、低脂血症、動脈硬化性疾患の診断と治療の指標に使われる。2007年に総コレステロールに代わり、LDL-Cを脂質異常症の診断基準にすることが決められ、総コレステロールはあくまで参考とすることとなった。臨床的には高コレステロール血症の鑑別、高・低脂血症の診断と治療効果判定、動脈硬化症の診断と治療の指標のために測定する。 【LDL-コレステロール】【VLDL-コレステロール】 IIb型ではともに増加する。 【トリグリセリド】 増加する。IIb型とIII型ではコレステロールとともに増加する。 【リン脂質】 IIa、IIb、III、IV型高脂血症で高値のことがある。PLはグリセロリン脂質とスフィンゴリン脂質に分けられ、コレステロールと共に細胞膜の構成成分として重要な役割を果たしている。このほか、コレステロールエステルの生成、凝固第X因子活性化やミトコンドリア酵素活性化などの生理作用を持つ。臨床的には肝のミクロソームで産生されることから、間接的な肝機能の把握に用いるほか、胆汁うっ滞の原因把握に用いる。 【レムナント様リポ蛋白コレステロール】 III型で増加する。RLP-CはカイロミクロンやVLDLがリポ蛋白リパーゼによって分解され生じる中間代謝物の総称で、トリグリセリド、アポ蛋白B、C-II、C-III、Eと正の相関がある。動脈硬化の基礎病変の一つである粥状硬化症の原因物質の一つとされているため、レムナント粒子の動態は動脈硬化性疾患の病態解析に有用とされる。臨床的には動脈硬化性疾患の危険因子として、またIII型高脂血症の簡易検査法として測定する。異常値を見た場合はリポ蛋白分画、アポ蛋白の測定を行う。 |
検体検査以外の検査計画 |