疾患解説
フリガナ |
マンセイカンエン |
別名 |
慢性B型肝炎 慢性C型肝炎 慢性D型肝炎 自己免疫性肝炎 薬物性肝炎
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臓器区分 |
消化器疾患
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英疾患名 |
Chronic Hepatitis
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ICD10 |
K73.9
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疾患の概念 |
肝の炎症が、少なくとも6ヶ月以上持続する状態で、肝機能異常とウイルス感染を伴っている。長期間の炎症持続により肝硬変へ進展し、肝癌発症のリスクが高まる。慢性肝炎の原因は、70%はC型肝炎ウイルス性、15%がB型肝炎ウイルス性で、A型およびE型肝炎ウイルスは原因とならない。HBV感染の慢性化率は、小児でより高く、感染した新生児の最大90%および幼児の30~50%が慢性化する。慢性肝炎は、自己免疫性肝炎と原発性胆汁性肝硬変や慢性ウイルス性肝炎の両方の特徴を併せもつオーバーラップ症候群と呼ばれる状態になることもある。また、イソニアジド、メチルドパ、ニトロフラントインまれにアセトアミノフェンが原因となりうる。その他、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、α1-アンチトリプシン欠損症、セリアック病、甲状腺疾患、ウィルソン病により慢性肝炎が発症することもある。慢性肝炎はかつて組織学的に慢性遷延性、慢性小葉性、慢性活動性肝炎に分類されていたが、最近の分類法では、病因、組織学的な炎症および壊死の程度および線維化の程度が規定されている。
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診断の手掛 |
最初の徴候は、無症候性のアミノトランスフェラーゼの上昇が多いため、偶然、健診などで発見される。初発症状は、全身倦怠感、食欲不振、易疲労感が多い。急性増悪期には黄疸を認めることがある。また、脾腫、くも状血管腫、手掌紅斑などの慢性肝疾患の徴候や門脈圧亢進症、腹水、脳症、肝硬変の合併症が、最初の所見となる事がある。若年女性の自己免疫性肝炎では、ざ瘡、無月経,関節痛、潰瘍性大腸炎、肺線維症、甲状腺炎、腎炎、溶血性貧血などの全身症状が見られる。慢性HCV感染症は、扁平苔癬、皮膚粘膜血管炎、糸球体腎炎、晩発性皮膚ポルフィリン症、B細胞性の非ホジキンリンパ腫を合併し、約1%の患者はクリオグロブリン血症を発症する。
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主訴 |
易疲労感|Fatigue 黄疸|Jaundice 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 肝腫大|Hepatomegaly 関節痛|Arthralgia 筋肉痛|Myalgia くも状血管腫|Vascular spider/Spider angioma 手掌紅斑|Palmer erythema 食欲不振|Anorexia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 背部痛|Backache 脾腫|Splenomegaly 腹痛|Abdominal pain 腹部不快感|Abdominal discomfort 不眠|Insomnia やせ|Weight loss
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鑑別疾患 |
アルコール性肝障害|Alcoholic Liver Disease ウィルソン病/肝レンズ核変性症|Wilson's disease/Hepatolenticular Degeneration 原発性胆汁性肝硬変|Primary Biliary Cirrhosis(PBC) 自己免疫性肝炎|Autoimmune Hepatitis 脂肪肝|Fatty Liver 非アルコール性脂肪肝炎|Nonalcoholic Steatohepatitis(NASH) 薬剤性肝障害|Drug-induced Liver Injury(DILI) α1-アンチトリプシン欠損症
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スクリーニング検査 |
α-Fetoprotein|α-フェトプロテイン [/S] Albumin|アルブミン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Amylase|アミラーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase:Alanine Aminotransferase Ratio|AST:ALT比 [/S, /S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S, /S] Calcium|カルシウム [/U] CEA|癌胎児性抗原 [/S] Chloride|クロール [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Cholinesterase|コリンエステラーゼ/ブチルコリンエステラーゼ/偽コリンエステラーゼ [/S] Ferritin|フェリチン [/S] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S, /S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Hepatitis B Surface Antigen|HBs抗原 [/S] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Iron|鉄/血清鉄 [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Magnesium|マグネシウム [/RBC, /S] Platelets|血小板 [/B] Potassium|カリウム [/S] Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P, /P] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S] TIBC|総鉄結合能 [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S]
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異常値を示す検査 |
2',5'-Oligoadenylate Synthetase|2-5A合成酵素/2-5オリゴアデニレートシンターゼ [/S] 5'-Nucleotidase|5'-ヌクレオチダーゼ [/S] Amino-terminal Propeptide of Type III Procollagen [/S] Ammonium Ions|アンモニウムイオン [/U] Anion Gap|アニオンギャップ [/U] Anti-Hepatitis C Antibodies|C型肝炎ウイルス抗体/C100-3抗体/抗C型肝炎ウイルス抗体 [/S] Anti-Liver Cytosolic Antigen [/S] Anti-Mitochondrial Antibodies|抗ミトコンドリア抗体 [/S] Anti-Smooth Muscle Antibodies|抗平滑筋抗体 [/S] Antibody Titer [/S] Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S] Antithrombin III|アンチトロンビンIII/アンチトロンビン [/P] Apolipoprotein A-I|アポリポ蛋白A-I [/S] Aspartate Aminotransferase:Alanine Aminotransferase Ratio|AST:ALT比 [/S, /S] Basic Fibroblast Growth Factor|塩基性線維芽細胞成長因子 [/S] Bile Acids|総胆汁酸 [/S] Biotin|ビオチン [/S] BSP Retention|BSP test/ブロムサルファレイン試験 [/S] CA 125|CA125 [/S] CA 15-3|CA15-3 [/S] CA 19-9|CA19-9 [/S] CA 242 [/S] Carbohydrate-deficient Transferrin|糖鎖欠損トランスフェリン [/S] Carbon Dioxide Partial Pressure|動脈血CO2分圧/炭酸ガス分圧/CO2分圧/PCO2/PaCO2 [/B] Carcinoembryonic Antigen|癌胎児性抗原 [/S] CD8+ Lymphocytes [/B] Ceruloplasmin|セルロプラスミン/フェロオキシダーゼ [/S, /S] Chenodeoxycholic Acid|ケノデオキシコール酸 [/S] Cholic Acid [/S] Citrate|クエン酸/クエン酸塩 [/U] Complement Fixation [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S] Coombs' Test|クームス試験 [Positive/S] Copper Zinc Superoxide Dismutase|スーパーオキサイドディスムターゼ/スーパーオキサイドジスムターゼ [/S] Cryoglobulins|クリオグロブリン [/S] Cytokeratin 19 Fragment|サイトケラチン19フラグメント/シフラ/シフラ21-1/CYFRA [/S] Descarboxyprothrombin [/S] Endothelin-1|エンドセリン [/P] Endotoxin|エンドトキシン/内毒素/リポ多糖体/リポポリサッカライド [/S] Factor IX|第IX因子活性/クリスマス因子 [/P] Factor X|第X因子活性/シュチュワート・プロワー因子 [/P] Free Fatty Acids|遊離脂肪酸/非エステル型脂肪酸/FFA [/S, /S] Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [/P] Follistatin, Free|フォリスタチン [/S] Globulin|グロブリン [/S] Glutathione|グルタチオン [/P] Glutathione S-Transferase [/S] Glycated Protein|糖化蛋白 [/S] Haptoglobin|ハプトグロビン [/S] Hepatitis B Surface Antigen|HBs抗原 [/S] Hepatitis C Virus RNA|HCV核酸増幅定量/HCVアンプリコア定量/HCVモニター/Amplicorモニター [/S] HLA Antigens|HLA抗原 [Present/B] Hyaluronic Acid|ヒアルロン酸 [/S] Immunoglobulins|免疫グロブリン [/S] Interferon-γ|インターフェロン-γ [/S] Interleukin-1|インターロイキン-1/インターロイキン-1α/インターロイキン1β [/S] Interleukin-1β|インターロイキン-1β [/S] Interleukin-2|インターロイキン-2 [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Interleukin-8|インターロイキン-8 [/S] International Normalized Ratio|プロトロンビン-INR [/P] Laminin|ラミニン [/S] Laminin P1 [/S] LE Cells|LE細胞/LE現象 [Positive/B] Lidocaine Index [/S] Lidocaine Index:Monoethylglycinexylidide Index Ratio [/S] Lipase|リパーゼ/膵リパーゼ [/S] Lymphocyte T-Cells|T細胞 [/B] Lysyl Oxidase [/S] Macrophage Colony Stimulating Factor|マクロファージコロニー刺激因子 [/S] Malondialdehyde [/RBC] Manganese|マンガン [/S] Manganese Superoxide Dismutase [/S] Metallopanstimulin [/S] Mitochondrial Aspartate Aminotransferase|ミトコンドリア・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/ミトコンドリア・グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Monoethylglycinexylidide Index [/S] N-terminal Peptide of Type III Procollagen [/S] Neopterin|ネオプテリン [/S, /U] Net Acid Excretion|総酸排泄量 [/U] Osmolal Gap|浸透圧ギャップ [/U] pH|尿pH [/U] Plasma Cells|形質細胞 [/B, /Bone Marrow] Porphyrins, Total|ポルフィリン [/S] Proapolipoprotein A-I [/S] Procollagen Type III Peptide|プロコラーゲンIIIペプチド [/S] Procollagen Type IV Peptide [/S] Proline Hydroxylase|プロリンヒドロキシラーゼ/プロリン水酸化酵素 [/S] Prolyl Hydroxylase [/S] Protein C|プロテインC/プロテインC抗原量 [/P] Protein Z|プロテインZ/プロテインゼット [/P] Soluble CD14+ [/S] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S] Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor-p55 [/S] Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor-p75 [/S] Soluble Vascular Cell Adhesion Molecule-1|可溶性VCAM-1/可溶性CD106/可溶性血管細胞接着分子-1 [/S] Superoxide Dismutase|スーパーオキサイドディスムターゼ/スーパーオキサイドジスムターゼ [/B] Tissue Inhibitor of Metalloproteinase-1|組織メタプロテアーゼインヒビター/コラゲナーゼインヒビター1 [/S] Tissue Plasminogen Activator|組織プラスミノゲンアクチベータ [/P] Tissue Polypeptide Antigen|組織ポリペプチド抗原 [/S] Transthyretin|トランスサイレチン/プレアルブミン [/S] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] Type IV Collagen 7S Domain [/S] Type IV Collagen, Triple-helix Domain [/S] Vitronectin [/S] VLDL-Cholesterol [/S] Zinc|亜鉛 [/S] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/S] α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [/S] β-Chorionic Gonadotropin|ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット [/P] β1-Integrin|β1-インテグリン [/S] β2-Macroglobulin [/S] β3-Integrin|CD61/GPIIIa/β3インテグリン [/S]
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関連する検査の読み方 |
【CBC】 単球が増加する。 【A/G比】 基準範囲下限以下である 【AFP】 AFP-L3が10%以上に増加する。 【ALP】 軽度~中等度に増加する。アイソザイムはALP2(肝性ALP)が優位である。 【ミトコンドリアAST】 総ASTに対する比率は1.1~16.1%である。殆どの酵素には臓器別のアイソザイムがあるが、ASTは可溶性(AST-s)とミトコンドリア(AST-m)のアイソザイムに分けられ臓器別のアイソザイムは存在しない。組織が障害されると通常は可溶性分画のAST-sが血中に逸脱するが、障害や壊死の程度が高度になるとミトコンドリアからAST-mが逸脱してくる。ASTが高値にも関わらず臓器障害を疑う症状がない場合は、免疫グロブリン結合型ASTを考える。臨床的には組織や細胞障害の重症度の評価や予後の推定に用いる。 【AST:ALT比】 ALT優位で0.87以下である。AST/ALT比を算定することにより肝の病態評価に用いる。1.急性肝炎:大量の肝細胞が破壊されるためAST,ALTは500U/L以上になるが、肝細胞の含有量を反映し初期はAST>ALTとなる。極期を過ぎると半減期の長いALTが残るためAST<ALTとなる 2.劇症肝炎:肝細胞壊死が高度であるためAST,ALTは2,000U/Lを超える。肝含有量とAST-mの逸脱でAST>ALTとなる 3.慢性肝炎、脂肪肝:AST,ALTは中等度に上昇するが半減期の差によりAST<ALTとなる 4.肝硬変:肝細胞が減少するのでAST,ALTの上昇は軽度であり、更に細胞内のALT活性が低下するためAST>ALTになる 5.アルコール性肝障害:障害がミトコンドリアにも及ぶためAST>ALTとなる。 【クリオグロブリン】 慢性C型肝炎で陽性のことがある。 【グルタミン酸脱水素酵素】 急性増悪で高値を示す。GLDHは酸化還元酵素の一種で、細胞内のアミノ酸代謝、蛋白代謝に重要な役割を持つ。肝に多量に存在するが、腎、脳、大腸などにも分布している。細胞内では大部分がミトコンドリアに存在するため、ミトコンドリア障害の指標として用いられる。臨床的には細胞障害がミトコンドリアまで及ぶ急性肝炎劇症化の推定の際に検査される。GLDHはミトコンドリア内に分布し、細胞膜透過性の亢進などの軽度の細胞障害では血中に遊出しないため、血中で高値になれば障害がミトコンドリアまで及んだ証明となる。また、AST/GLDHの比を求めると急性肝炎>慢性肝炎>肝硬変>うっ血肝の順になるので、急性肝炎劇症化の指標となる。 【TTT】【ZTT】 TTTとZTTは基準範囲上限以上である。 【コリンエステラーゼ】 急性増悪で低値を示す。 【HBe抗原】 発症初期にHBs抗原に続いて血中に出現し、HBs抗原の陰性化に先立って陰性化する。HBe抗原陽性、HBe抗体陰性の場合は血中ウイルス量が多く感染力が強い。HBVの活動性を示す指標の一つである。 【HBe抗体】 B型肝炎ウイルスの状態把握に必要。Be抗体はHBe抗原に対する液性抗体で、B型急性肝炎の後期から回復期にかけて、HBe抗原の陰性化に引き続いて出現する。HBV無症候性キャリアや慢性B型肝炎患者の多くは、経過中にHBe抗体が陽性になり肝炎は沈静化する。臨床的にはHBe抗原からHBe抗体へのセロコンバージョンの確認、慢性B型肝炎や無症候性キャリアの経過観察、母子間感染の 【HBs抗原】 B型慢性肝炎で陽性。 【HBVプレコア・コアプロモーター変異】 陽性である。 【HCV抗体】 C型慢性肝炎で陽性。 【総分枝鎖アミノ酸:チロシンモル比】 3以下に著しく低下する。 【フィッシャー比】 1.8以下に著しく低下する。 【肝生検】 病期の確定に必要な検査である。 【異常値を示す割合】 AST増加:100%、γ-グロブリン増加:90%、ALP増加:90%、ビリルビン増加:90%、IgG増加:80%、抗平滑筋抗体陽性:80%、PT-INR延長:50%、IgM増加:50%、アルブミン低下:50%、IgA増加:30%、抗核抗体陽性:30%、抗ミトコンドリア抗体:20%、HBs抗原:10~60%。 【診断基準】 1)ASTとALTの異常が6ヶ月間持続する。2)HCV-RNA陽性またはHBs抗原陽性である。3)慢性肝炎の組織像を認める。4)自己免疫性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎を否定できる。
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腹部超音波検査
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