疾患解説
フリガナ |
クローンビョウ |
別名 |
限局性腸炎 肉芽腫性回腸炎 回結腸炎
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臓器区分 |
消化器疾患
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英疾患名 |
Crohn's Disease
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ICD10 |
K50.9
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疾患の概念 |
主として10歳代後半から20歳代に発症する原因不明の消化管の浮腫、潰瘍を伴う全層に及ぶ慢性肉芽腫性炎症で、消化管のどの部位にも起こるが、回腸末端と結腸が好発部位である。大腸病変を有する患者は結腸・直腸癌のリスクがある。この疾患は陰窩炎および陰窩膿瘍として始まり、小さなアフタ様潰瘍に進行し、この粘膜病変は、潰瘍間の粘膜浮腫を伴う深い潰瘍へと進展し、腸管は特徴的な敷石象を呈する。炎症が腸壁全層に進展すると、リンパ浮腫と腸壁・腸間膜の肥厚が起こり、腸間膜の脂肪組織は、腸管の漿膜面上に広がる。腸間膜リンパ節は腫大する。広範な炎症は粘膜筋板の肥厚、線維化および狭窄形成をひきおこし、腸閉塞の原因となる。腹腔内疾患とは無関係に、肛門周囲の瘻孔、膿瘍が25~33%の症例に起こる。腸管の病変部は隣接するskip areaと呼ばれる正常な領域と明確に区別できるので、限局性腸炎と呼ばれている。症例の約35%は、病変が回腸に限局し、約45%は回結腸炎症として右側結腸に好発する。また、約20%は肉芽腫性大腸炎として結腸に限局し直腸は侵さない。
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診断の手掛 |
消化管に炎症性または閉塞性の病変のある患者、肛門周囲の瘻孔や膿瘍のある患者や説明のつかない関節炎、結節性紅斑、発熱、貧血などを訴える患者を診たらCrohn病を疑う。Crohn病の家族歴がある患者に消化器症状が見られたら積極的に検査を進める。10~20%の患者は病変が大腸に限局しているので、潰瘍性大腸炎との鑑別が困難であり分類不能の大腸炎とも呼ばれている。 【診断基準:2014年難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班】 (1)主要所見:A.縦走潰瘍 B.敷石像 C.非乾酪性類上皮細胞肉芽腫 (2)副所見:a.消化管の広範囲に認められる不整形~類円形潰瘍またはアフタ b.特徴的な肛門病変 c.特徴的な胃・十二指腸病変 確診例:1.主要所見のAまたはBを有するもの。2.主要所見のCと副所見のaまたはbを有するもの。3.副所見のa,b,cすべてを有するもの。 疑診例:1.主要所見のCと副所見のcを有するもの。2.主要所見AまたはBを有するが、潰瘍性大腸炎や腸型ベーチェット病、単純性潰瘍、虚血性腸炎 鑑別ができないもの。:1.主要所見のCの実を有するもの。2.副所見のいずれか2つまたは1つのみを有するもの。
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主訴 |
息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 易疲労感|Fatigue 下腹部痛|Hypogastric pain 関節痛|Arthralgia 下痢|Diarrhea 紅斑|Erythema/Rubedo 肛門痛|Anal pain 肛門膿瘍|Anal abscess/Periproctal abscess 肛門瘻孔|Anal fistula 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 動悸|Palpitations 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 貧血症状|Anemic symptom 腹痛|Abdominal pain やせ|Weight loss
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鑑別疾患 |
直腸癌 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma 回腸炎 潰瘍性大腸炎|Ulcerative Colitis 急性虫垂炎|Acute Appendicitis 強直性脊椎炎|Ankylosing Spondylitis 肛門周囲膿瘍 痔ろう ストレス アメーバ症 多発動脈炎 腸結核 腸閉塞|Intestinal Obstruction 腸Behcet病 肉芽腫 虚血性大腸炎|Ischemic Colitis 単純性腸潰瘍 感染性腸炎 薬剤性腸炎 アミロイドーシス|Amyloidosis
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スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S, /WBC] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Calcium|カルシウム [/U] CEA|癌胎児性抗原 [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B, /F] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Iron|鉄/血清鉄 [/Bone Marrow, /S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] LDL-Cholesterol|LDL-コレステロール/低比重リポ蛋白コレステロール [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /F] Magnesium|マグネシウム [/S] MCH|平均赤血球ヘモグロビン量 [/B] MCHC|平均赤血球ヘモグロビン濃度 [/B] MCV|平均赤血球容積 [/B, /B] Monocytes|単球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B] Potassium|カリウム [/S] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S] Sodium|ナトリウム [/S] TIBC|総鉄結合能 [/S] Tri-Iodothyronine (T3)|総トリヨードサイロニン/総T3/トリヨードサイロニン/トリヨードチロニン [/S] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S] Uric Acid|尿酸 [/U] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S, /S] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S]
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異常値を示す検査 |
Alkaline Phosphatase, Bone Isoenzyme|骨型アルカリホスファターゼ/骨性ALP [/S] Alkaline Phosphatase, Fast Liver Isoenzyme [/S] Alkaline Phosphatase, Intestinal [/S] Alkaline Phosphatase, Liver Isoenzyme|アルカリホスファターゼアイソザイム/ALPアイソザイム [/S] Amylase, Pancreatic Isoenzyme|膵アミラーゼ/膵型アミラーゼ [/S] Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/S] Anti-Endomysial IgA Antibodies|抗筋肉膜IgA抗体 [/S] Anti-Endothelial Cell Antibodies|抗内皮細胞抗体 [/S] Anti-Neutrophil Cytoplasm Antibodies|抗好中球細胞質プロテナーゼ-3抗体/抗好中球細胞質抗体/好中球細胞質抗体/C-ANCA/PR-3ANCA [/S] Anti-Saccharomyces cerevislae Antibodies [/S] Antibody Titer [/S] Bile Acids|総胆汁酸 [/S] C4b-Binding Protein [/S] Carotene|カロチン/プロビタミンA/カロチノイド [/S] Cells [/Synovial Fluid] Cortisol|コルチゾール [/P] D-Dimer|Dダイマー/フィブリン分解産物Dダイマー [/P] Factor XIII Activity|第XIII因子活性/フィブリン安定化因子 [/P] Fat|脂肪(糞便) [/F] Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [/P] Folate|葉酸/プテロイルモノグルタミル酸/ビタミンM/乳酸菌発育因子 [/S] Glutathione|グルタチオン [/B] Glutathione Peroxidase [/S] Haptoglobin|ハプトグロビン [/S] HLA Antigens|HLA抗原 [Present/B] IgA Anti-Neutrophil Cytoplasm Antibodies [/S] IgA Anti-Saccharomyces cerevisiae Antibodies [/S] IgG Anti-Saccharomyces cerevisiae Antibodies [/S] Immunoglobulin G1|免疫グロブリンG1 [/S] Immunoglobulin G2|IgG2 [/S] Immunoglobulin G3|IgG3 [/S] Immunoglobulin G4|IgG4 [/S] Insulin-like Growth Factor-I|インスリン様成長因子-1/ソマトメジンC [/S] Interferon-γ|インターフェロン-γ [/S] Interleukin-1 Receptor Antagonist [/S] Interleukin-10|インターロイキン-10 [/S] Interleukin-1β|インターロイキン-1β [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Interleukin-8|インターロイキン-8 [/S] Iron Saturation|鉄飽和度 [/S] Lysozyme|リゾチーム/ムラミダーゼ/ムコペプタイド/グリコヒドロラーゼ [/S, /U] Neopterin|ネオプテリン [/U] Neutrophil Elastase|顆粒球エラスターゼ/好中球エラスターゼ [/F] Occult Blood|潜血反応(便)/グアヤック法/o-トリジン法/ラテックス凝集法 [/F] Oxalate|シュウ酸/エタン二酸 [/U] Pancreatic Functional Diagnostant Test|PFDテスト/Bentiromide試験/BT-PABA試験 [/U] p-Antineutrophil Cytoplasmic Autoantibodies|抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体/核周囲型抗好中球細胞質抗体/MPO-ANCA/P-ANCA [/S] Phospholipase A2 [/S] Phospholipase A2 Type II [/S] α2-Plasmin Inhibitor-Plasmin Complex|α2-プラスミンインヒビター-プラスミン複合体/プラスミンインヒビターアンチプラスミン [/P] Plasminogen Activator Inhibitor-1|プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1 [/P] Protein S, Free|プロテインS/プロテインS抗原量 [/P] Prothrombin Fragment 1,2|プロトロンビンフラグメント1+2 [/P] Pyridinoline|ピリジノリン [/Synovial Fluid] Retinol|ビタミンA/レチノール [/S] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S] Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] Thyroxine Binding Globulin|サイロキシン結合グロブリン/チロキシン結合グロブリン [/S] Tissue Transglutaminase Antibodies [/S] Transthyretin|トランスサイレチン/プレアルブミン [/S] Tryptophan|トリプトファン [/P] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] Urokinase Plasminogen Activator|ウロキナーゼプラスミノゲンプロアクチベータ [/P] Vitamin A|ビタミンA/レチノール [/S] Vitamin B12|ビタミンB12/コバラミン/シアノコバラミン [/S] Vitamin C|ビタミンC/アスコルビン酸 [/S] Vitamin D [/S] Zinc|亜鉛 [/Lymphocytes, /Monocytes, /RBC, /S] α-Tocopherol [/S] α-Tocopherol:Lipids Ratio [/S] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/S] α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/S] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/F] β-Endorphin|β-エンドルフィン [/WBC] β-Galactosidase [/F]
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関連する検査の読み方 |
【BT-PABA試験】 70%以下のことがある。 【CBC】 鉄、ビタミンB12、葉酸の欠乏により貧血を認める。 【第XIII因子活性】 30~70%に低下する。巨核球や単球で産生されるAサブユニットと、肝で産生されるBサブユニットからなり、フィブリンを安定化することから、フィブリン安定化因子とも呼ばれている。臨床的には血小板、出血時間、PT、APTTが正常であるが、持続する出血や創傷治癒の遅延などが認められる場合は、この因子の欠乏を疑い検査する。また、後天的には肝不全、白血病、播種性血管内凝固症候群、Crohn病などで減少が認められる。 【P-ANCA】 潰瘍性大腸炎では60~70%の患者で陽性であるが、本症は5~20%の患者が陽性である。 【抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体】 本症に比較的特異性が高い抗体である。 【ESR】【CRP】 赤沈の亢進、CRPの増加を認める。疾患活動性のモニターとしても有用である。 【蛋白分画】 アルブミンが減少し、α2-グロブリン、γ-グロブリンが増加する。 【糞便一般検査】 潜血反応が陽性である。患者はC.difficile腸炎を合併する頻度が高いので、微生物検査は重要である。免疫抑制剤投与中の患者はサイトメガロウイルス感染が起こりやすい。 【ビタミンB12】【ビタミンD】 慢性の吸収不良により、栄養欠乏症(特にビタミンDおよびB12)を引き起こすことがある。 【合併する疾患による検査所見】 下痢による代謝性アシドーシスやNa、K、Mgの低下、胆管周囲炎によるALPの増加を認める。
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検体検査以外の検査計画 |
上部消化管内視鏡検査、大腸内視鏡検査、腹部X線検査、腹部CT検査、超音波検査、上部消化管造影検査、注腸X線検査
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