疾患解説
フリガナ | カカンキショウコウグン |
別名 | |
臓器区分 | 呼吸器疾患 |
英疾患名 | Hyperventilation Syndrome |
ICD10 | F45.3 |
疾患の概念 | 過換気症候群は、心理的要因で発作的に頻回の吸気と換気を繰り返し、結果としてPaCO2の低下、呼吸性アルカローシスを発症する疾患で、呼吸困難、手足のしびれ、胸痛、めまいなどの全身症状と強い不安状態を呈する。過換気は、換気ドライブ、呼吸筋力の活動、分時換気量の増加を介して起こるので、典型的な症状は呼吸困難である。過換気症候群はパニック症と重複する部分があるが、別の疾患である。しかし、パニック症患者の約1/2は過換気症候群を有し、過換気症候群患者の1/4はパニック症を有する。 |
診断の手掛 | 呼吸困難と頻呼吸を呈する若年女性を診たら本症を強く疑うが、男女を問わずあらゆる年齢に起こることを頭に入れておく。呼吸困難は、患者が症状を窒息にたとえるほど、時に非常に重度になる。随伴症状として、興奮、恐怖感、胸痛、末梢および口周囲の錯感覚、指または腕の硬直、失神前状態または失神などがあるが、これら全ての所見を併せ持つこともある。 |
主訴 |
息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 意識障害|Memory impaiment 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 過呼吸|Hyperpnea 胸痛|Chest pain 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure 胸部絞扼感|Zonesthesia of chest 呼吸困難|Dyspnea 四肢のしびれ|Sensory disturbance of Extremities 動悸|Palpitations 頻呼吸|Tachypnea 頻脈|Tachycardia 不安|Anxiety めまい|Dizziness |
鑑別疾患 |
肺炎|Pneumonia 気管支喘息 肺塞栓症|Pulmonary Embolism(PE) 間質性肺炎 気胸 胸膜炎 急性心筋梗塞|Acute Myocardial Infarction(AMI) 心不全|Heart Failure 脳血管障害 脳炎|Encephalitis 髄膜炎|Meningitis 脳腫瘍|Cerebral Tumor てんかん|Epilepsy 低血糖症|Hypoglycemia, Unspecified 糖尿病性ケトアシドーシス|Diabetic Ketoacidosis(DKA) 甲状腺機能亢進症|Hyperthyroidism 褐色細胞腫|Pheochromocytoma ポルフィリン症 副甲状腺機能亢進症|Hyperparathyroidism 肝不全|Hepatic Failure 一酸化炭素中毒|Toxic Effects of Carbon Monoxide 一過性脳虚血発作|Transient Ischemic Attack(TIA) |
スクリーニング検査 | Phosphate|無機リン [/S] |
異常値を示す検査 |
Carbon Dioxide Partial Pressure|動脈血CO2分圧/炭酸ガス分圧/CO2分圧/PCO2/PaCO2 [/B] Ionized Calcium|イオン化カルシウム/Caイオン [/S] pH|尿pH [/B] |
関連する検査の読み方 |
【パルスオキシメーター】 100%またはそれに近い値の酸素飽和度を示す。 【PaCO2】 PaCO2は30Torr以下に低下する。動脈血中に溶解しているCO₂の分圧で、肺でのガス交換の効率を示すため、呼吸機能検査の一つとして用いられる。CO₂分圧は肺胞の換気量に逆比例するため換気が不足すればPco₂は上昇、過換気であれば低下する。臨床的には呼吸性アシドーシス、アルカローシス、代謝性アシドーシスの診断と病勢判断、筋疾患での換気状態の判定に用いる。検査に当たってはpH、HCO₃⁻、PO₂などと同時に測定する必要がある。 【動脈血pH】 上昇していれば一次性の呼吸アルカローシス、低下していれば一次性の代謝アシドーシスに対する代償である。血液ガス分析の一つでO₂分圧(Po₂)、CO₂分圧(Pco₂)と同時に測定し、酸塩基平衡の全体的な評価を行う。臨床的には動脈血が酸血症かアルカリ血症かを知り、酸塩基平衡に異常をきたしている患者のコントロールに用いる。健常者のpHは7.35から7.45の狭い範囲内に維持されているため、7.00以下、7.80以上では生命維持ができない。 【重炭酸イオン】 減少していれば異常は慢性的と考える。HCO₃-は血液ガス分析値(pHとPco₂)から算定される電解質で、血液中の陰イオンではCl⁻に次いで量が多く、酸・塩基平衡の代謝性因子として重要な役割がある。重炭酸イオンの約90%は重炭酸塩の形で存在し、酸の中和作用を持つ。臨床的には代謝性アルカローシスとアシドーシスの診断に用いる。 【電解質】 iPが低下するが、その他の電解質は基準範囲内である。 【Dダイマー】 肺塞栓症を除外するために必要である。線溶現象で分解された安定化フィブリンのプラスミン分解産物の一つで、安定化フィブリンの分解によってのみ産生される二次線溶に特異的な物質である。このためDダイマーの増加があれば二次線溶の亢進と判断してよい。ただし、二次線溶が亢進している時は一次線溶も亢進しているので、FDPも同時に測定することが望ましい。 |
検体検査以外の検査計画 | パルスオキシメトリー、胸部X線検査、心電図検査、脳波検査、ヘリカルCT検査 |