疾患解説
フリガナ | ノウシュヨウ |
別名 |
悪性腫瘍(脳) 悪性腫瘍(中枢神経) |
臓器区分 | 神経・筋疾患 |
英疾患名 | Cerebral Tumor |
ICD10 |
良性:D33.9 悪性:C71.9 |
疾患の概念 | 頭蓋内に発生する新生物の総称で、脳実質、下垂体、髄膜、脳神経、結合組織などから発生する。脳実質由来は、神経膠腫、髄芽腫、脳室上衣腫が、また神経外構造に由来するものは髄膜腫、聴神経鞘腫、シュワン細胞腫が挙げられる。原発性腫瘍と転移性腫瘍があり、通常、成人期初期または中年期に発症するが、高齢者の頻度が増加している。原発性腫瘍は、脳に原発するもので、神経膠腫、髄芽腫、上衣腫などの脳実質または髄膜腫、聴神経腫瘍、神経鞘腫などの脳内神経外構造物に由来する。転移性脳腫瘍は脳以外の組織が原発で、脳に転移したもので、原発性腫瘍の約10倍多く見られる。 |
診断の手掛 | 数ヶ月~数年に亘り徐々に進行する頭蓋内圧亢進症状、てんかん様症状や脳の局所的機能障害である片麻痺、失語症、失行、失書、視野障害などを訴える患者を診たら本症を疑う。最もよく見られる症状は、頭痛で、特に朝から頭痛がするとか、いつもと違う頭痛を訴えたら強く疑う。典型的な例では、頭痛は数分の間に急速に悪化し、20~40分持続し、その後急速に消失する。また、担癌患者は常に脳への転移を考えて診察する。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 片麻痺|Hemiplegia 言語障害|Language disorder/Allophasis 構音障害|Dysarthria 四肢のしびれ|Sensory disturbance of Extremities 視野障害|Disturbance in visual field 視力障害|Blurred vision/Visual impairment 頭痛|Headache/Cephalalgia 聴力障害|Hypoacusis てんかん発作|Epileptic stroke/Epileptic seizure 複視|Diplopia めまい|Dizziness |
鑑別疾患 |
脳膿瘍|Brain Abscess 多発性硬化症|Multiple Sclerosis(MS) 神経Behcet病 脳出血 脳梗塞|Cerebral Infarction |
スクリーニング検査 |
Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/CSF, /S] Eosinophils|好酸球 [/B] Erythrocytes|赤血球数 [/B] GFR|糸球体濾過量 [/U] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/CSF] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/CSF, /S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/CSF] Lymphocytes|リンパ球 [/B] Monocytes|単球 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF] Sodium|ナトリウム [/S, /U] Transferrin|トランスフェリン [/S] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
3,3'-Di-iodothyronine [/S] Aldolase|アルドラーゼ/アルドラーゼアイソザイム [/S] Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/CSF] Arginine Vasopressin|アルギニンバゾプレッシン/抗利尿ホルモン/バゾプレシン [/P] Arylsulfatase A|アリルスルファターゼA [/S] Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/S] Cells [/CSF] Creatine Kinase BB-Isoenzyme|CK-BB [/S] Erythropoietin|エリスロポエチン [/S] Isocitrate Dehydrogenase|イソクエン酸脱水素酵素/イソクエン酸デヒドロゲナーゼ [/CSF] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/CSF] Lead|鉛 [/CSF] Metallopanstimulin [/S] Metanephrines, Total|メタネフリン/メタアドレナリン/メタネフリン総 [/U] MYCN Gene|MYCN遺伝子/N-myc遺伝子検査 [Positive/Tissue] Neuron-Specific Enolase|神経特異エノラーゼ [Positive/S] p53 Gene|p53遺伝子/p53関連検査 [Deletion/B] Tenascin-C [/S] Zinc|亜鉛 [/CSF] α1-Microglobulin|α1-ミクログロブリン/α1-マイクログロブリン [/CSF] β-Galactosidase [/S] |
関連する検査の読み方 |
【N-myc遺伝子検査】 神経芽細胞腫の50%で陽性である。MYCN遺伝子は細胞内の癌原遺伝子であるmyc遺伝子群の一つで神経芽細胞腫から分離・同定された。臨床的にはMYCN増幅例の神経芽細胞腫は、予後が悪いことが明らかにされているので、疾患の予後推定に用いる。 【p53遺伝子】 星状細胞腫で変異を認める。p53遺伝子の変異はヒトのあらゆる組織の腫瘍で認められる。変異は多くの場合17番染色体短腕(17p)の一方のアレル欠失と点突然変異である。この遺伝子の変異はヒトのあらゆる組織由来の腫瘍で認められる。臨床的には癌の悪性度の評価や予後推定に有用である。 【エリスロポエチン】 小脳腫瘍で高値のことがある。 【神経特異エノラーゼ】 神経芽細胞腫の70%で陽性である。NSEは神経組織と神経内分泌細胞に特異的に存在する解糖系酵素の一つである。中枢神経、末梢神経に多量に存在するが、下垂体、甲状腺、副腎髄質、膵、肺などの神経内分泌細胞にも分布している。 【髄液一般検査】 圧は亢進する。腫瘍細胞を認める。グルコースが増加する。 【IgG合成比】 基準範囲上限以上である。炎症性神経疾患では中枢神経系の組織でIgGの合成が起こっているが、このIgGの合成量を知るために髄液と血清中のIgGとアルブミンの量からIgG合成比として算定する。臨床的にはIgGの値により炎症性神経疾患、感染症の診断、経過観察に用いる。IgG合成比=(髄液IgG×血清アルブミン)÷(血清IgG×髄液アルブミン) 異常値を認めたらオリゴクロナールIgGバンドの検索、髄液中の免疫グロブリンκ/λ比、IgGサブクラス、IgA Index、IgM Indexの測定を行う。 【動脈血ガス分析】 PaCO2が増加し、pHは7.4以下になる。 【細胞診】 迅速診断に有用である。 |
検体検査以外の検査計画 | 脳波検査、CT検査、MRI検査、PET検査、骨シンチグラフィー、胸部X線検査 |