疾患解説
フリガナ | カンフゼン |
別名 | |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Hepatic Failure |
ICD10 | K72.9 |
疾患の概念 | 重症の急性あるいは慢性肝疾患に伴う高度の肝機能障害により、肝性脳症などの多彩な臨床症状を示す症候群で、予後不良である。急性肝不全はウイルス(B型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型など)や薬物(アセトアミノフェン、アモキシシリン、ハロタン、鉄化合物、NSAIDsなど)が原因である。また、慢性肝不全は、非代償性肝硬変や肝癌の末期にみられる。進行した肝不全は、酸塩基平衡の異常をもたらし、代謝性アルカローシスを引き起こす。 |
診断の手掛 | 肝炎ウイルスの感染者が、症状が強く重篤感のある全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、発熱などを発症し、黄疸出現後も症状が続く場合は本症を疑う。甘いアンモニア臭の肝性口臭があれば門脈-体循環シャントを疑う。急性肝不全の原因は、アセトアミノフェンとウイルス性肝炎が最多であるが、20%の患者は明らかな原因が見つからない。高ビリルビン血症がある患者でのPT延長、脳症の臨床像、ASTとALT値の上昇が認められる患者や、すでに肝疾患が存在している患者で、急な増悪がみられた場合には、急性肝不全を強く疑う。 |
主訴 |
黄疸|Jaundice 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea かゆみ|Itching 昏睡|Coma 昏迷|Stupor 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 消化管出血|Gastrointestinal bleeding 食欲不振|Anorexia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 腹水|Ascites 浮腫|Edema/Dropsy |
鑑別疾患 |
悪性腫瘍 アルコール依存症|Alcoholism ウィルソン病/肝レンズ核変性症|Wilson's disease/Hepatolenticular Degeneration 肝炎 肝硬変|Cirrhosis of Liver 肝性脊髄症 高ビリルビン血症 認知症|Dementia 敗血症|Sepsis 劇症肝炎|Fulminant Hepatitis Budd-Chiari症候群 過換気症候群|Hyperventilation Syndrome |
スクリーニング検査 |
α-Fetoprotein|α-フェトプロテイン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Erythrocytes|赤血球数 [/U] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] GFR|糸球体濾過量 [/U] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/U] Magnesium|マグネシウム [/S] Phosphate|無機リン [/S] Platelets|血小板 [/B] Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P] Sodium|ナトリウム [/S, /U, /S, /U] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S, /S] |
異常値を示す検査 |
Ammonia|アンモニア [/B] Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/S] Biliprotein [/S] Carbon Dioxide Partial Pressure|動脈血CO2分圧/炭酸ガス分圧/CO2分圧/PCO2/PaCO2 [/B] Factor II|第II因子活性/プロトロンビン [/P] Factor V|第V因子活性/不安定凝固因子/プロアクセレリン/Acグロブリン [/P] Factor VII|第VII因子活性/安定因子/プロコンバーチン [/P] Glucose Tolerance|ブドウ糖負荷試験/グルコース負荷試験 [/S] Haptoglobin|ハプトグロビン [/S] Hepatocyte Growth Factor|肝細胞増殖因子 [/S] Hyaline Casts|円柱 [/U] Insulin-like Growth Factor-I|インスリン様成長因子-1/ソマトメジンC [/S] Ketone Bodies,Fractionation|ケトン体分画 [/AcAc:3-HBA] Leucine|ロイシン [/U] Nickel|ニッケル [/S] pH|尿pH [/B] β-Glucuronidase|β-グルクロニダーゼ [/S] |
関連する検査の読み方 |
【AST】【ALT】 急性期は1,000IU/L以上と著しく増加するが末期には急激に低下する。 【ビリルビン】 進行性に高値を示す。直接型:総ビリルビン比が低下したら重症である。 【総蛋白】【アルブミン】 低下する。 【CBC】 白血球は2/3の患者で10,000~50,000/μL程度に増加する。 【APTT】【PT】 第II、VII、IX、X因子活性が低下しPT、APTTは延長する。PT-INRは1.5以上である。 【フィブリノゲン】 著しく低下する。 【アンチトロンビンIII】 低下する。 【アミノ酸】 分枝鎖アミノ酸が低下し、芳香族アミノ酸が増加する。 【総分枝鎖アミノ酸:チロシンモル比】 著しく低下する。 【フィッシャー比】 1.8以下に著しく低下する。 【肝細胞増殖因子】 早期予測に用いる。HGFは肝、腎、脾、肺等で産生されるが、肝では最も強力な増殖因子として働いている。また、細胞増殖促進のほか、運動促進、器官形成誘導、抗アポトーシス作用など多彩な生理機能を有する。臨床的には急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などの肝疾患で高値となるが、特に劇症肝炎では著明に高値となるため診断的価値が高いとされる。臨床的には劇症肝炎の発症予測と予後推定に用いる。 【ケトン体分画】 アセト酢酸:3-ヒドロキシ酪酸の比が0.7以下に著しく低下する。ケトン体分画は静脈血中のアセト酢酸(AcAc)、3-ヒドロキシ酪酸(3-HBA)、総ケトン体と動脈血中のアセト酢酸/3-ヒドロキシ酪酸比(ケトン体比)を測定するもので、糖代謝障害、飢餓状態、悪液質などの際のケトン血症の診断に用いる。AcAcや3-HBAが血中に増加した状態をケトン血症と呼び、濃度が腎閾値を超えるとケトン尿になる。また、ケトン体はインスリンと逆相関にあり、インスリン作用が低下し血糖が上昇すると血中ケトン体は上昇する。 【ウロビリノゲン】 陰性化することがある。 【PaCO2】 過換気によりPaCO2が40Torr以下になる。 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部超音波検査、腹部・頭部CT検査、脳波検査 |