疾患解説
フリガナ | センモウチュウショウ |
別名 | トリヒナ症 |
臓器区分 | 寄生動物疾患 |
英疾患名 | Trichinosis |
ICD10 | B75 |
疾患の概念 | 旋毛虫(Trichinella spiralis)または近縁の旋毛虫類による感染症で、感染動物(豚、イノシシ、熊が一般的)の生肉または加熱不完全な肉の摂取で感染する。幼虫は小腸粘膜で成虫となり、最終的には横紋筋細胞内に定着する。旋毛虫症は世界中で発生し、Trichinella spiralisに加え、T. pseudospiralis、T. nativa、T. nelsoni、T. britoviも旋毛虫症の原因となり、それぞれ地理的に異なる分布をする。ヒトが摂取した幼虫は、小腸内で脱嚢し、粘膜を通過して6~8日で成虫となる。成熟した雌虫は活動性の幼虫を4~6週間放出し、その後死ぬが、新生幼虫は、1~2カ月で完全に被嚢化し、横紋筋細胞内寄生虫として数年間生き続ける。 |
診断の手掛 | 多くの感染は、無症候性または軽症であるが、汚染された肉の摂取後1週目に悪心、嘔吐、下痢、腹部痙攣を訴えることがある。典型的な感染症状は、感染後1~2週間で出現する全身的な症状および徴候で、顔面または眼窩周囲の浮腫、筋肉痛、持続性の発熱、頭痛ならびに結膜下出血および点状出血で、このような症状を訴える患者を診たら本症を疑う。旋毛虫は感染後約2週間で筋肉に侵入し多発性筋炎に類似した症状を呈する。発熱は弛張熱で、39℃以上に上昇し、数日間続き、その後徐々に解熱する。好酸球数は、新生幼虫が組織に侵入すると増加が始まり、感染後2~4週でピークに達し、幼虫の被嚢化に伴い徐々に減少する。時間の経過とともに、症状および徴候は徐々に軽快し、幼虫が筋細胞内で完全に被嚢化し、臓器および組織から排除される3カ月目頃までには殆どが消失するが、漠然とした筋肉痛と易疲労感は数カ月間続くことがある。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 眼瞼浮腫|Palpebral edema 眼痛|Eye pain/Ocular pain 筋肉痛|Myalgia 下痢|Diarrhea 羞明|Photophobia/Photosensitibity 頭痛|Headache/Cephalalgia 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 腹部痙攣|Convulsion of abdomen |
鑑別疾患 |
急性リウマチ熱 急性関節炎 血管性浮腫 多発性筋炎 結核 腸チフス|Typhoid Fever 敗血症|Sepsis 肺炎|Pneumonia 髄膜炎|Meningitis 脳炎|Encephalitis ホジキンリンパ腫|Hodgkin's Disease 好酸球性白血病 結節性多発動脈炎|Polyarteritis Nodosa(PAN) |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S, /U] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Cholinesterase|コリンエステラーゼ/ブチルコリンエステラーゼ/偽コリンエステラーゼ [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Eosinophils|好酸球 [/B] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B, /B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
Aldolase|アルドラーゼ/アルドラーゼアイソザイム [/S] Complement Fixation [/S] Creatine|クレアチン [/U] Hemagglutination Inhibition [/S] Hyaline Casts|円柱 [/U] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] Precipitins [/S] |
関連する検査の読み方 |
【血清学的検査】 感染後2~3週以内は偽陰性なので、疑わしい場合は1ヶ月後に再検査する。抗体は何年間も持続するので、初回陰性でも繰り返し検査する。 【EIA】 T. spiralis排泄分泌抗原を用いた酵素免疫測定法が、感染を知る最も迅速な方法である。感染後最初の3~5週間は抗体がしばしば検出不能であるため、初回結果が陰性であった場合は、検査を週1回の頻度で繰り返すべきである。 【好酸球数】 90%の患者で好酸球増加が見られ、50%以上は感染後2~4週でピークとなる。 【CK】【LD】【AST】 50%の患者で増加し、筋電図異常と相関する。 【IgE】 上昇する。 【筋生検】 感染から2週目以降は筋生検で幼虫及びシストを検出できるが、殆ど必要ない。 【皮膚テスト】 幼虫抗原の皮膚テストは信頼性が低い。 【確定診断】 少なくとも1gの感染筋肉を必要とする。腱の挿入部に近いところが幼虫の発見率が高い。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、筋電図検査 |