疾患解説
フリガナ | ループスジンエン |
別名 | |
臓器区分 | 膠原病・免疫疾患 |
英疾患名 | Lupus Nephritis |
ICD10 | M32.1 |
疾患の概念 | 全身性エリテマトーデスが原因の糸球体腎炎で、SLE患者の50~70%で、SLE診断後1年以内に発症するといわれている。核抗原、高親和性補体結合IgG抗核抗体及びDNAに対する抗体からなる免疫複合体が、発症に関与している。SLEの患者は、最大1/3でループス腎炎の有無にかかわらず抗リン脂質抗体症候群腎症を発症する可能性がある。 |
診断の手掛 | SLE患者または臨床所見はないがSLEが推測される患者は、全て本症の発症の可能性がある。著明な症状は、SLEによるものであるが、腎疾患を有する患者では、浮腫、泡沫尿、高血圧とこれらの合併が見られることがあるので注意する。本症は、SLE診断後1年以内に発症するので、SLEが診断または推測された場合は、尿検査を定期的に行う必要がある。特にSLE患者に顕微鏡的血尿と赤血球円柱を伴うかまたは伴わない蛋白尿を見たら本症を強く疑う。 |
主訴 |
血尿|Hematuria 高血圧|Hypertension 蛋白尿|Proteinuria 浮腫|Edema/Dropsy |
鑑別疾患 |
全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE) IgA腎症|IgA Nephropathy 急性糸球体腎炎|Acute Glomerulonephritis 急性腎炎症候群 全身性硬化症/強皮症|Systemic Sclerosis/Scleroderma(SSc) シェーグレン症候群|Sjogren's Syndrome ANCA関連血管炎 ヘノッホ-シェーンライン紫斑病|Henoch-Schönlein Purpura グッドパスチャー症候群|Goodpasture's Syndrome |
スクリーニング検査 |
Chloride|クロール [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Potassium|カリウム [/S] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/U] |
異常値を示す検査 |
Ammonium Ions|アンモニウムイオン [/U] Anion Gap|アニオンギャップ [/U] Anti-DNA Antibodies|抗DNA抗体 [/S] Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [Positive/S] CD45 Leukocytes|CD45 [/Tissue] Complement,Total|補体価/CH50 [/S] Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [/U] Estimated Glomerular Filtration Rate|推算GFR [/S] Endothelin|エンドセリン [/U] Intercellular Adhesion Molecule-1|CD54 [/Tissue] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S, /U] Inulin Clearance|イヌリンクリアランス [/Specimen] N-Acetyl-Glucosaminidase|N-アセチルβ-D-グルコサミニダーゼ活性(尿)/尿中NAG活性 [/U] pH|尿pH [/U] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S, /U] |
関連する検査の読み方 |
【尿一般検査】 尿量は減少する。顕微鏡的血尿のことが多い。尿蛋白は高度に増加する。 【尿沈渣】 糸球体型の赤血球、上皮円柱、脂肪円柱、赤血球円柱、白血球円柱、赤血球・顆粒の混合円柱を認める。 【クレアチニン】 上昇は腎機能の悪化を示唆する。SLEが診断又は推測された場合は、尿検査とともに定期的に検査する。 【eGFR】 低値になる。eGFRは日本腎臓学会が示したCKDガイドラインに記載されているGFRの算定法で、イヌリンクリアランスで求めたGFRと酵素法で測定した血清クレアチニン値から計算式で求められる。eGFRは簡便な方法であるが、スクリーニングや疫学研究を目的に作成されているので、実際の臨床の場で個々の患者を評価するためにはイヌリンクリアランスやクレアチニンクリアランスを用いることが薦められている。臨床的には糸球体濾過量の推定とCKDの病期分類に用いる。個々の患者評価:eGFR=0.719×Ccr(実測クレアチニ 【クレアチニンクリアランス】 低値になる。クレアチニンは筋量に比例し、ほぼ一定の割合で産生され、腎糸球体から濾過され、尿細管で再吸収や分泌が殆んどない物質で、そのクリアランスは糸球体濾過量(GFR)とほぼ近似した値となるため、GFRの近似指標として用いられる。臨床的には腎糸球体や尿細管の障害が疑われる糖尿病腎症などの早期発見に用いられる。 【イヌリンクリアランス】 低値になる。イヌリンは生体内で合成されず、糸球体で100%濾過され尿細管で再吸収されないことから、Cinは真の糸球体濾過量(GFR)を表す最良のマーカーとされている。臨床的にはGFRのゴールドスタンダードとして慢性腎疾患(CKD)のステージ分類や血液透析導入時の正確な腎機能評価に用いられる。 【尿中NAG活性】 高度に増加する。NAGは近位および遠位尿細管や集合管細胞内のライソゾームに含まれる酵素で、尿細管から排泄されるので、尿細管障害の程度を見るために測定される。臨床的には腎毒性のあるアミノグリコシド系抗生剤や重金属などによる尿細管障害の早期発見、腎疾患の診断・経過観察、糖尿病性腎症の早期発見などに用いる。 【補体価】 75~90%の患者で低補体血症が見られる。疾患活動性の把握に有用である。補体は抗原抗体反応により活性化される古典的経路と、菌体成分やエンドトキシンにより活性化される副経路がある。CH50は古典的経路と副経路を介したものを総合的に表わすので、疾患への補体系の関与が推測出来る。臨床的には低補体価が重要で、低下の原因は、1.免疫複合体による補体系の活性化 2.補体成分の産生低下 3.異化亢進 4.先天的補体欠損である。臨床的には古典的経路の活性化による低下が、全身性エリテマトーデス、悪性関節リウマチ、結合組織病、自己免疫性溶血性貧血などで見られる。また、補体第2経路活性化による低値は、急性糸球体腎炎、膜性増殖性腎炎、エンドトキシンショックなどで見られる。産生低下は肝硬変、劇症肝炎、補体成分欠損症で見られる。異常値を見た場合はC3、C4、免疫複合体などを経過を追って測定する。 【抗核抗体】 殆どの患者で陽性である。ANAは膠原病やその類縁疾患で出現する自己抗体で、抗ヒストン抗体、抗DNA抗体、抗ENA抗体、抗RNA抗体、抗セントロメア抗体など種々の抗体が含まれる。個々の抗体は細胞核の蛍光染色パターンで分類する。この検査はあくまでもスクリーニング検査であり、陽性になった場合は疾患特異的な抗体検査を選択し定量測定する。臨床的には膠原病やその類縁疾患のスクリーニングや経過観察に用いられる。 【抗DNA抗体】 上昇は疾患活動性の上昇を示唆する。抗DNA抗体には1本鎖(single stranded:ss)DNAに対する抗体と2本鎖(double stranded:ds)DNAに対する抗体が含まれる。抗ss-DNA抗体は全身性エリテマトーデスに特異的で、70%程度の陽性率がある。このほか、強皮症、慢性肝炎、伝染性単核球症などで陽性になることがある。抗ss-DNA抗体はSLEの約70%で陽性になるが、強皮症や慢性肝炎、伝染性単核症などでも陽性になることがある。抗ds-DNA抗体は急性活動期の全身性エリテマトーデスに認められSLEの活動性や治療効果と相関する。 【腎生検】 診断確定に用いる。病理組織像はWHOの基準で分類する。 |
検体検査以外の検査計画 | |