疾患解説
フリガナ | ゲンパツセイコウカセイタンカンエン |
別名 | 硬化性胆管炎 |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Primary Sclerosing Cholangitis(PSC) |
ICD10 | K83.0 |
疾患の概念 | 原因不明の慢性進行性の胆汁うっ滞性の疾患で、胆管壁の線維性肥厚と内腔狭窄が見られ、胆汁性肝硬変を発症し肝不全に進展する。病変の75%は。太い胆管と細い胆管の両者に見られ、細い胆管のみが15%、太い胆管のみが10%である。予後は細い胆管のみに見られる患者は良好である。70~80%に炎症性腸疾患を合併し、クローン病の1%、潰瘍性大腸炎の5%に発症することから、自己免疫や細菌感染が関与していると推測されている。また、6~20%の患者に胆管癌が発生する。この疾患は抗平滑筋抗体、核周囲型抗好中球抗体が存在することから、発症には免疫を介した機序が考えられる。また、T細胞が胆管の破壊に関与するとみられることから、細胞性免疫の障害も示唆される。PSCは、家系内に集積する傾向があり自己免疫疾患との相関が報告されている。また、HLAB8およびHLADR3を有する人の発症頻度が高いことから、遺伝的素因の存在が考えられている。40歳代の男性に好発する。 |
診断の手掛 |
肝機能検査で、原因不明の異常が認められたら本症を疑うが、潰瘍性大腸炎やCrohn病と強い関連があることを頭に入れておく。発症は潜行性で、進行性の疲労と、それに続くそう痒が見られるが、黄疸は発症が遅くなる傾向がある。約10~15%の患者は、右上腹部痛と発熱を繰り返し訴える。患者の中には、疾患の晩期まで無症状で、肝腫大や肝硬変が初発症状の場合もある。また、慢性あるいは間欠性胆管閉塞症状、即ち黄疸、搔痒、右上腹部痛、急性胆管炎を呈する患者は本症を強く疑う。PSCと炎症性腸疾患が合併している患者では、大腸癌のリスクが高くなり、また、PSC患者の10~15%は胆管癌が発生するので経過観察を慎重に進める。 【診断基準:1999年Lazaridis】 1.胆管造影による典型的な胆管枝の異常所見。 2.臨床所見(炎症性腸疾患の存在、胆汁うっ滞の症状)、血液・生化学的所見(ALP値が6ヶ月以上にわたって3倍以上に増加)が矛盾しない。 3.以下の原因による二次性硬化性胆管炎を除外する:AIDSに伴う胆道硬化、胆道腫瘍(PSC診断後出現を除く)、胆道系の手術・外傷、胆道結石、先天性胆道系異常、腐食性硬化性胆管炎、虚血性胆道硬化、5-FUなどの動脈内投与による胆道狭窄。 |
主訴 |
黄疸|Jaundice かゆみ|Itching 肝腫大|Hepatomegaly 脂肪便|Steatorrhea 上腹部圧痛|Upper abdominal tenderness 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 腹痛|Abdominal pain やせ|Weight loss |
鑑別疾患 |
胆管癌|Cholangiocarcinoma 原発性胆汁性肝硬変|Primary Biliary Cirrhosis(PBC) 自己免疫性膵炎 薬剤性胆汁うっ滞 二次性硬化性胆管炎 潰瘍性大腸炎|Ulcerative Colitis 門脈圧亢進症 胆石症|Cholecystolithiasis 総胆管結石症 肝硬変|Cirrhosis of Liver 細菌性胆管炎 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] CEA|癌胎児性抗原 [/Bile, /S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
25-Hydroxy Vitamin D3|25-ヒドロキシビタミンD3 [/S] Anti-Neutrophil Cytoplasm Antibodies|抗好中球細胞質プロテナーゼ-3抗体/抗好中球細胞質抗体/好中球細胞質抗体/C-ANCA/PR-3ANCA [/S] Anti-Smooth Muscle Antibodies|抗平滑筋抗体 [/S] Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S] CA 19-9|CA19-9 [/S] Ceruloplasmin|セルロプラスミン/フェロオキシダーゼ [/S] Copper|銅 [/U] Galactose Tolerance|ガラクトース負荷 [/Patient] Metallothionein|メタロチオネイン [/S] Vitamin A|ビタミンA/レチノール [/S] |
関連する検査の読み方 |
【肝機能検査】 6ヶ月以上にわたる胆汁うっ滞があり、ALPは基準範囲上限の1.5~3倍、γ-GTの増加と90%の患者で軽度のAST・ALT増加がみられる。γ-GTはAST・ALT以上に増加率が高い。ビリルビン高値1.5mg/dL以上を持続すれば予後不良の徴候で50%以上の患者に認められる。定期的な肝機能検査で患者のモニタリングを行う。 【ALP】 ALPが高値を呈する炎症性腸疾患は、肝胆道系疾患の所見がなくともPSCの可能性があることに注意する。 【C-ANCA】 65~80%の患者で認められる。抗ミトコンドリア抗体・抗平滑筋抗体・リウマチ因子・抗核抗体は90%以上の患者で陰性である。 【抗ミトコンドリア抗体】 陰性であるのが本症の特徴である。AMAはミトコンドリア内膜抗原に対する自己抗体で原発性胆汁性肝硬変に特異的に検出され、陽性率は90~95%とされている。臨床的には原発性胆汁性肝硬変の診断、薬剤性・自己免疫性胆管炎と原発性胆汁性肝硬変の鑑別に用いる。 【抗核抗体】 50%の患者で陽性となる。 【銅】 肝内の銅が増加し、血清銅・セルロプラスミンとも増加する。 【ビリルビン】 直接ビリルビンが高値を示す 【免疫グロブリン】 γ-グロブリン増加が患者の30%で認められる。40~50%はIgMの増加である。 【リン脂質】 増加する。 【擦過細胞診】 ERCP下での細胞診は胆管癌の発症予測に有用である。 【Charcot三徴】 発熱、黄疸、右季肋部痛の三徴があれば、胆管炎の合併を考える。 |
検体検査以外の検査計画 | 超音波検査、直接胆管造影検査、内視鏡的逆行性膵胆管造影検査、核磁気共鳴膵胆管造影検査 |