疾患解説
フリガナ | マシン |
別名 | はしか |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Measles |
ICD10 | B05.9 |
疾患の概念 | 麻疹は、パラミクソウイルスによって引き起こされる疾患で、病原巣となる動物や無症候性キャリアの存在は知られていない。感染力が極めて高く、曝露した場合の発症率は90%を超える。麻疹は、小児で最も多く見られるウイルス感染症で、乳幼児期が、好発年齢で春に多い。飛沫感染し前駆期と発疹出現後の5日間程度が感染可能期間である。母親が麻疹の免疫を持っていた場合、乳児は母親から胎盤を介して移行した抗体を持つため、この抗体が、生後ほぼ6~12カ月間に亘って感染を防御する。また、感染により終生免疫が獲得される。母体からの免疫が残っている期間やワクチン接種後に感染すると、軽症の不定型の経過をとる。現在は、ワクチンの普及で発症率は著しく低下している。 |
診断の手掛 | 風邪症状に加えて結膜炎症状が出てきた時点で麻疹を疑う。発熱、結膜炎症状(眼脂)、羞明、鼻漏、鼻汁、くしゃみ等の風邪症状の時期に、第一臼歯及び第二臼歯の対側の口腔粘膜に白色小斑点(Koplik斑)が出てきたら診断が確定する。発疹は、前駆症状が始まってから3~4日後に出現し、赤煉瓦色の不規則な斑状丘疹が、顔から始まり下方および外側へ向かって広がり手掌、足裏に達する。合併症として異型麻疹、肺炎、細菌の重複感染、血小板減少性紫斑病、脳炎、肝炎、亜急性硬化性全脳炎があるので、慎重に経過を観察する。鑑別診断としては、1.風疹:前駆症状が無く、発熱などの全身症状も無いか軽度で、耳介後部および後頭部に圧痛を伴うリンパ節腫大が見られる。2.薬疹:前駆症状や風邪症状がみられず、最近の薬剤使用歴がある。3.突発性発疹:麻疹と類似する皮疹が見られるが、3歳以上の小児に発症することは殆どない。初期の体温が高く、コプリック斑と全身倦怠感が無く、解熱と発疹が同時にみられる。 |
主訴 |
眼脂|Dischage くしゃみ|Sneezing/Stemutation/Ptarmus 結膜充血|Conjunctival injection 高熱|High fever/Hyperthermia コプリック斑|Koplik spot 色素沈着|Pigmentation/Chromatosis 羞明|Photophobia/Photosensitibity 咳|Cough 痰|Sputum 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 斑状丘疹状発疹|Maculopapular eczema 鼻汁|Rinorrhea 鼻漏|Rhinorrea/Nasal flow/Nasal discharge 発疹|Eruption/Exanthema |
鑑別疾患 |
エコーウイルス感染症 コクサッキーウイルス感染症 血清病 小児バラ疹 風疹|Rubella Infection 突発性発疹 猩紅熱 水痘 薬疹(フェノバルビタール、スルフォンアミド系) 川崎病|Kawasaki Disease パルボウイルス感染症 伝染性単核球症|Infectious Mononucleosis 伝染性紅斑 リケッチア症 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Amylase|アミラーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Calcium|カルシウム [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/P] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /B] Lymphocytes|リンパ球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] VDRL|性病研究所梅毒検査法/VDRL法 [Positive/S] |
異常値を示す検査 |
Aldolase|アルドラーゼ/アルドラーゼアイソザイム [/S] Amyloid A Protein|血清アミロイドA蛋白/アポSAA/アミロイドA蛋白 [/S] Cells [/CSF, /Sputum] Complement Fixation [/S] Creatine Kinase BB-Isoenzyme|CK-BB [/S] Creatine Kinase MB-Isoenzyme|CK-MB [/S] Hemagglutination Inhibition [/S] Hydroxybutyrate Dehydrogenase|ヒドロキシ酪酸脱水素酵素 [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Lactate Dehydrogenase Isoenzymes|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S] Measles Virus Antibody|麻疹ウイルス抗体/麻疹ウイルスIgG/麻疹ウイルスIgM/抗麻疹ウイルス抗体 [/S] Neopterin|ネオプテリン [/CSF, /S] |
関連する検査の読み方 |
【AST】【ALT】【LD】 成人ではいずれも増加する。 【CBC】 リンパ球、好中球、血小板は減少する。白血球は基準範囲内か減少する。異型リンパ球が出現する。白血球の増加は細菌感染を示唆する。200/μL以下のリンパ球減少は予後不良の徴候である。 【血液像】 好中球の核左方移動がみられ、リンパ球減少と好酸球が減少する。 【抗白血球抗体】 陽性のことがある。 【麻疹ウイルス抗体】 HI抗体は上昇が速いので、発症後1週以内に測定する。感染初期はEIA-IgMが有用であり、ワクチン接種後の抗体チェックは6~8週後に行う。麻疹ウイルスは咳の飛沫、鼻汁などを介して呼吸器感染し微熱、咳、鼻炎、結膜炎、高熱の順に症状が現れ発疹が生じる。抗体測定は麻疹と麻疹に類似する猩紅熱、風疹、突発性発疹などとの鑑別が困難な場合に行う。感染初期の検査はIgMが有用である。また、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)が疑われる患者は血清・髄液の抗体価(1280倍以上)、 【動脈血ガス分析】 肺炎を合併すると低酸素血症を認める。 【尿一般検査】 ジアゾ反応が陽性である。蛋白尿が認められることが多い。 【尿沈渣】 細胞質内封入体細胞を認める。 【リンパ球刺激試験】 PHAとConAが低値である。 【CSF】 麻疹脳炎を起こすとリンパ球と蛋白濃度が増加する。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部CT検査、頭部MRI検査、肺機能検査 |