疾患解説
フリガナ | カワサキビョウ |
別名 |
皮膚粘膜リンパ節症候群 川崎症候群 |
臓器区分 | 小児疾患 |
英疾患名 | Kawasaki Disease |
ICD10 | M30.3 |
疾患の概念 | 1~8歳の小児に好発する原因不明の熱性疾患で、全身の中型動脈の血管炎が主病変であるが、20%の患者は冠動脈が侵され、血栓性閉塞を伴う動脈瘤形成による突然死が0.3%~0.6%の患者にみられる。小児の後天性心疾患の主要原因である。遷延する発熱、発疹、結膜炎、粘膜炎症、リンパ節腫脹を特徴とするが、冠動脈瘤の破裂あるいは心筋梗塞を発症する可能性がある。原因は不明で、疫学および臨床像からは、遺伝的素因をもつ小児の感染に対する、異常免疫反応や自己免疫疾患が示唆されている。発症は年間を通じてみられるが、春季または冬季が最も多い。集団発症が報告されているが、ヒトからヒトへの伝播の明確な証拠は得られていない。 |
診断の手掛 | 川崎病の診断基準による。1.5日以上続く発熱(通常は39℃以上の弛緩熱) 2.滲出液を伴わない両眼眼球結膜の充血 3.口唇の潮紅、イチゴ舌、口咽頭粘膜のびまん性発赤 4.不定形発疹 5.手足の硬性浮腫、指趾尖端の紅斑 6.圧痛のある非化膿性頸部リンパ節腫脹の6症状のうち、5つ以上の症状を伴うものを本症とする。39℃を超える発熱が5日間以上続き、川崎病の5つの基準のうち2つ以上を認める場合は、非定型川崎病を念頭に置き検査すべきである。死亡につながる心臓症状は、発症から約1~4週間後の亜急性期に、発疹、発熱その他の初期急性臨床症状が、沈静化し始めるとともに現れるので注意する。 |
主訴 |
イチゴ舌|Strawberry tongue 結膜充血|Conjunctival injection 口唇潮紅|Flushing lip 紅斑|Erythema/Rubedo 指趾先端紅斑|Finger tip erythema 弛張熱|Remittent fever 手足硬性浮腫|Indurative edema of foot and hand 舌異常|Abnormal findings of tongue 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 浮腫|Edema/Dropsy 不定形発疹|Protean eruotion 発疹|Eruption/Exanthema 発赤|Flare/Rubor リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
EBウイルス感染症|Epstein-Barr Virus Infection アデノウイルス感染症|Adenovirus Infections エルシニア感染症 冠動脈疾患|Coronary Artery Disease(CAD) 心筋炎|Myocarditis 尿道炎|Urethritis マイコプラズマ感染症|Mycoplasma Infection 麻痺性イレウス 溶血連鎖球菌感染症 パルボウイルス感染症 若年性関節リウマチ 麻疹|Measles 多形滲出性紅斑 ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 薬物反応 レプトスピラ症/ワイル病 ロッキー山紅斑熱|Rocky Mountain Spotted Fever(RMSF) |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B, /B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/U] |
異常値を示す検査 |
Amyloid A Protein|血清アミロイドA蛋白/アポSAA/アミロイドA蛋白 [/S] Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/S] Anti-Endothelial Cell Antibodies|抗内皮細胞抗体 [/S] Anti-Neutrophil Cytoplasm Antibodies|抗好中球細胞質プロテナーゼ-3抗体/抗好中球細胞質抗体/好中球細胞質抗体/C-ANCA/PR-3ANCA [/S] Endothelin-1|エンドセリン [/P] Epstein Barr Virus Antibodies|EBウイルス抗体/抗EBウイルス抗体 [/S] Interferon-γ|インターフェロン-γ [/S] Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] Interleukin-10|インターロイキン-10 [/S] Interleukin-4|インターロイキン-4 [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S, /U] N-Acetyl-Glucosaminidase|N-アセチルβ-D-グルコサミニダーゼ活性(尿)/尿中NAG活性 [/U] Nerve Growth Factor|神経成長因子 [/S] Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor-p60 [/S] Thrombopoietin|トロンボポエチン [/P] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] Vascular Endothelial Growth Factor|血管内皮増殖因子 [/S] β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [/U] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 約50%の患者に貧血がみられ、2週の終わりごろに最低値になり、病状回復とともに改善する。白血球は1週目に主として好中球が増加(20,000~30,000/μL)、その後リンパ球が増加し、2週の終わりごろにピークに達する。また、単球の増加も見られる。血小板は発症2~3週目に45万/μL程度に増加する。 【活性化ヘルパーT細胞】 増加する。ヘルパーT細胞が活性化すると表面のCD4がシグナルを送り、このシグナルでキラーT細胞の表面にあるCD8が刺激され活性化し、病原体の破壊やB細胞への抗体産生を指示する。 【可溶性IL-2受容体】 上昇する。sIL-2Rは細胞表面に存在し、リンパ球などと結合し刺激を細胞内に伝える働きがある。悪性リンパ腫では受容体の発現が亢進している為、血液中のsIL-2Rが増加するので、これら疾患の重症度推定、治療効果判定などに用いる。臨床的にはATLLと非ホジキンリンパ腫の病勢や治療効果判定、再発の早期発見に使われる。 【髄液一般検査】 単核球が1/3の症例で増加するが、蛋白とグルコースは基準範囲内である。 【ESR】【CRP】 赤沈は亢進し、CRPは高値を示すが6~8週後には正常化する。 【トロンボモジュリン】 尿では高値を示す 【尿一般検査】 蛋白尿、白血球の増加を認める。 【ビリルビン】 増加することがある。 【ブドウ球菌】 毒素性ショック症候群トキシン1を産生するブドウ球菌と本症との強い関連が報告されている。 |
検体検査以外の検査計画 | 心電図検査、胸部X線検査、断層心超音波検査 |