疾患解説
フリガナ | ジコメンエキセイカンエン |
別名 | |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Autoimmune Hepatitis |
ICD10 | K75.4 |
疾患の概念 | 原因不明の慢性活動性肝炎で、放置すると早期に肝硬変に進展する。原因として、自己免疫機序の関与が考えられているが、詳細は不明である。40歳以降の中年女性に好発し、男女比は1:7である。若年発症者は、HLA-B8とHLA-DR3が陽性であるが、90%の症例でHLA-DR4が陽性である。Ⅰ型自己免疫性肝炎:最も多い病型で抗核抗体、抗平滑筋抗体と関連する。Ⅱ型自己免疫性肝炎:1型肝腎ミクロソーム抗体が特徴で、小児や若年者に見られる。自己免疫性肝炎の特徴は、1.血清学的免疫マーカーの存在 2.自己免疫疾患に共通するHLAハプロタイプとの関連性(HLA-B1,HLA-B8,HLA-DR3,HLA-DR4)3.肝臓の組織学的病変におけるTリンパ球および形質細胞の優位性 4.In vitroにおける細胞性免疫および免疫調節機能の異常 5.RA、自己免疫性溶血性貧血、増殖性糸球体腎炎などの自己免疫疾患との関連性 6.コルチコステロイドまたは免疫抑制薬による治療に対する反応などである。 |
診断の手掛 |
黄疸、全身倦怠感、食欲不振などの肝疾患の症状に加え、様々な全身症状を訴える患者を診たら本症を疑う。特に、40歳以降の女性(患者の約90%)が圧倒的に多い事に注意する。多くの患者は、持続性または反復性のトランスアミナーゼ上昇で偶然見つかる。 【診断基準:2013年難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班】 1.他の原因による肝障害が否定される。 2.抗核抗体陽性あるいは抗平滑筋抗体陽性。 3.IgG高値(基準範囲の上限1.1倍以上)。 4.組織学的にinterface hepatitisや形質細胞浸潤がみられる。 5.副腎皮質ステロイドが著効する。 典型例:上記項目で1を満たし、2~5のうち3項目以上を認める。 非典型例:上記項目で1を満たし、2~5の所見の1~2項目を認める。国際的な診断基準はHepatology 2002:36(2):479を参照する。 |
主訴 |
黄疸|Jaundice 肝腫大|Hepatomegaly 関節痛|Arthralgia 血管腫|Hemangioma 食欲不振|Anorexia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 脾腫|Splenomegaly 皮疹|Eruption/Exanthema 腹水|Ascites |
鑑別疾患 |
慢性C型肝炎 アルコール依存症|Alcoholism 原発性胆汁性肝硬変|Primary Biliary Cirrhosis(PBC) 非アルコール性脂肪肝炎|Nonalcoholic Steatohepatitis(NASH) 薬剤性肝障害|Drug-induced Liver Injury(DILI) ウイルス性肝炎|Viral Hepatitis 急性アルコール性肝炎 門脈圧亢進症 慢性肝炎|Chronic Hepatitis |
スクリーニング検査 |
Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] CEA|癌胎児性抗原 [/S] Ferritin|フェリチン [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
Acetylcholine Receptor Binding Antibodies|抗アセチルコリンレセプター結合型抗体/抗アセチルコリン受容体結合型抗体/Ach-R非阻害型抗体 [/S] Anti-Actin [/S] Anti-Asialoglycoprotein Receptor [/S] Anti-Centromere Antibody|抗セントロメア抗体 [Positive/S] Anti-Endomysial IgA Antibodies|抗筋肉膜IgA抗体 [/S] Anti-Gliadin Antibodies|抗グリアジン抗体 [/S] Anti-Liver Cytosol 1 Antibodies [/S] Anti-Liver Cytosolic Antigen [/S] Anti-Liver Kidney Microsome Type I Antibody|抗肝腎マイクロゾーム-1抗体/抗LKM-1抗体 [Positive/S] Anti-Liver-Pancreas Protein Antibodies [/S] Anti-Mitochondrial Antibodies|抗ミトコンドリア抗体 [/S] Anti-Neutrophil Cytoplasm Antibodies|抗好中球細胞質プロテナーゼ-3抗体/抗好中球細胞質抗体/好中球細胞質抗体/C-ANCA/PR-3ANCA [/S] Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [Positive/S] Anti-Smooth Muscle Antibodies|抗平滑筋抗体 [/S] Anti-Soluble Liver Antigen [/S] Antibodies to Liver [/S] Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S] CA 19-9|CA19-9 [/S] CD8+ Lymphocytes [/B] LE Cells|LE細胞/LE現象 [Positive/B] Neopterin|ネオプテリン [/S] Transforming Growth Factor-β1|形質転換成長因子-β/トランスフォーミング増殖因子-β [/S] |
関連する検査の読み方 |
【ALP】 基準範囲の2倍を超えることは稀であるが、オーバーラップ症候群では2倍を超える。 【AST】【ALT】 増加し100~1,000単位の間で変動する。 【ビリルビン】 重症例で3~5mg/dL程度に増加する。 【γグロブリン】 2.5g/dL以上に増加する。 【LE細胞】 LE細胞は陽性のことがある。LEテストは陽性である。 【肝炎ウイルスマーカー】 陰性である。 【寒冷凝集反応】 256倍以上である。 【抗LKM-1抗体】 陽性のことがある。Ⅱ型自己免疫性肝炎と関連する。抗肝腎マイクロゾーム抗体はLKM-1、LKM-2、LKM-3の3種があり、LKM-1は肝細胞の細胞質と腎近位尿細管に反応する自己抗体で、自己免疫性肝炎タイプII型に出現する。臨床的にはウイルス性、薬剤性が否定された2~14歳の小児に肝障害が認められ、ウイルス性肝炎、薬剤性肝炎が否定され、かつ、ANA、抗平滑筋抗体が陰性ならば、II型自己免疫性肝炎の可能性が高いので、この抗体を測定する。 【抗核抗体】 陽性で、均質な染色パターンを示す。最も特徴的な抗体である。Ⅰ型自己免疫性肝炎と関連する。 【抗セントロメア抗体】 陽性になる。 【抗平滑筋抗体】 しばしば陽性である。ASMAは筋蛋白成分の一つであるアクチンに対する自己抗体で臓器特異性はない。臨床的には自己免疫の関与が疑われる慢性活動性肝炎などで抗体価が高値を示す。 【抗ミトコンドリア抗体】 陽性のことがある。AMAはミトコンドリア内膜抗原に対する自己抗体で原発性胆汁性肝硬変に特異的に検出され、陽性率は90~95%とされている。臨床的には原発性胆汁性肝硬変の診断、薬剤性・自己免疫性胆管炎と原発性胆汁性肝硬変の鑑別に用いる。 【肝生検】 診断に必須の検査である。慢性活動性肝炎像を示す。 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部超音波検査 |