疾患解説
フリガナ | ゴーシェビョウ |
別名 | |
臓器区分 | 代謝性疾患 |
英疾患名 | Gaucher's Disease |
ICD10 | E75.2 |
疾患の概念 | ライソゾーム蓄積病の一種で、酸性β-グルコシダーゼの欠損が原因で、グルコセレブロシドと関連物質の沈着を引き起こすスフィンゴ脂質症である。症状は、病型によって異なるが、肝・脾腫と中枢神経の変化が最も多い。発症年齢と神経症状の有無によりⅠ型(非神経細胞性)、Ⅱ型(急性神経細胞性)、Ⅲ型(亜急性神経細胞障害性)に分けられる。I型(非神経型)は、全患者の90%を占め最も頻度が高く、残存酵素活性は最も高い。発症年齢は2歳から成人期後期までである。II型(急性神経型)は最も頻度が低く、残存酵素活性が最も低い。乳児期に発症する。III型(亜急性神経型)は、発症率、酵素活性および臨床重症度が、I型とII型の中間に位置する。発症は小児期のあらゆる時期に見られる。 |
診断の手掛 | 7~16歳頃に暗赤色の紅斑または丘疹が、臍の周囲に出現した患者を診たら本症を疑う。また幼少時から無汗症と下痢を訴える患者、神経症状として四肢、特に手指と足指にFabry painと呼ばれる激痛発作を訴える患者は本症を強く疑う。肝・脾腫が、全ての患者に認められる。I型は肝・脾腫、骨減少症、疼痛発作、骨折を伴う溶骨性病変などの骨疾患、発育不全、思春期遅発、斑状出血、瞼裂斑などが見られ、血小板減少による鼻出血および斑状出血がよく見られる。II型は進行性の硬直、痙攣発作を伴う神経機能が低下する。III型は進行性の認知障害および運動失調、骨および内臓障害、角膜混濁を伴う核上性麻痺などである。 |
主訴 |
肝腫大|Hepatomegaly 丘疹|Papule 下痢|Diarrhea 紅斑|Erythema/Rubedo 多尿|Polyuria 聴力障害|Hypoacusis 疼痛|Pain/Ache 発汗異常|Dyshidrosis/Paridrosis 脾腫|Splenomegaly 皮疹|Eruption/Exanthema 貧血症状|Anemic symptom 鼻出血|Nosebleed/Nasal hemorrhage/Epistaxis |
鑑別疾患 |
脾機能亢進症|Hypersplenism 血小板減少症|Thrombocytopenia 認知症|Dementia 白血球減少症 貧血 |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Erythrocytes|赤血球数 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Iron|鉄/血清鉄 [/S, /S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Monocytes|単球 [/B] Platelets|血小板 [/B] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
5'-Nucleotidase|5'-ヌクレオチダーゼ [/S] Acid Phosphatase|酸性ホスファターゼ [/S] Acid Phosphatase, Tartrate Resistant|骨型酒石酸抵抗性フォスファターゼ [/S] Alkaline Phosphatase, Bone Isoenzyme|骨型アルカリホスファターゼ/骨性ALP [/S] Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/S] Anisocytes|赤血球大小不同 [/B] Cerebroside β-Glucosidase [/Liver, /RBC, /S] Chitotriosidase [/S] Factor IX|第IX因子活性/クリスマス因子 [/P] Lysosome-associated Membrane Protein-2 [/S] Lysosome-associated Membrane Protein-2:Lysosome-associated Membrane Protein-1 Ratio [/S] Lysozyme|リゾチーム/ムラミダーゼ/ムコペプタイド/グリコヒドロラーゼ [/S] Osteocalcin|オステオカルシン [/S] Oxygen Partial Pressure|動脈血O2分圧/酸素分圧/O2分圧/PO2 [/B] Oxygen Saturation|酸素飽和度/O2飽和度 [/B] Poikilocytes|赤血球大小不同 [/B] Reticulocytes|網赤血球/レチクロサイト/網状赤血球数 [/B] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] β-Glucosidase [/Fibroblasts, /S, /WBC] β-Hexosaminidase|β-ヘキソサミニダーゼ [/S] β-Hexosaminidase A [/S] |
関連する検査の読み方 |
【β-グルコシダーゼ】 白血球中の活性が低下している(基準範囲0~20%)。この酵素は体液中には存在しないが、確定診断に有用である。 【酸性ホスファターゼ】 高値になる。ACPはアルカリホスファターゼと同様にリン酸モノエステルを加水分解する酵素であるが、触媒反応がpH5という酸性条件下で行われるという違いがある。臓器分布は赤血球、血小板、肝、骨、脾、腎、前立腺などで5種のアイソザイムが存在し、細胞虚血により血中に逸脱する。前立腺に含まれる前立腺酸性ホスファターゼはL-酒石酸により活性が阻害されるという特徴があり、臨床的に前立腺癌の腫瘍マーカーとして測定される。骨吸収疾患では破骨細胞に由来するACPが骨代謝の指標として測定される。測定に際しては、赤血球に多量に含まれるため溶血を避けること、血清室温放置によるpHのアルカリ化による失活に注意する。 【アンジオテンシン転換酵素】 上昇する。 【ゴーシェ細胞】 丸めたティッシュペーパー様に見える脂質が蓄積した組織マクロファージが、肝臓、脾臓、リンパ節、骨髄で認められれば診断が確定する。 |
検体検査以外の検査計画 | 骨X線検査、腹部CT検査、腹部MRI検査、二重エネルギーX線吸収スキャンニング |