疾患解説
フリガナ | ハンセンビョウ |
別名 | らい |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Leprosy |
ICD10 | A30.9 |
疾患の概念 | 末梢神経、皮膚、粘膜に指向性をもつ細胞内偏在寄生体である抗酸性桿菌(Mycobacterium leprae)による慢性感染症で、感染しても発病することは稀であるが、一旦発症すると血行性播種が起こる。全ての年齢層で発症するが、5~15歳または30歳以上の人々に発症することが最も多い。症状は多彩で、感覚消失を伴う多形性の皮膚病変や末梢神経障害などがみられる。ヒトはらい菌の主要な自然病原巣であるが、ヒト以外ではアルマジロが確認された唯一の感染源である。感染は、鼻腔の飛沫や分泌物を介すると考えられ、軽度な患者への接触や短期間の接触では感染することはない。ハンセン病患者の約半数は、感染者との密接な長期にわたる接触によると思われる。らい菌の発育は緩徐で、潜伏期間は、6カ月から10年である。細胞性免疫応答と臨床所見により、類結核型、らい腫型、境界型に分類される。 |
診断の手掛 | 感染者と長期に接触する環境にあるヒトが、知覚麻痺を主体とする末梢神経障害や皮膚病変を訴えたら本症を疑う。サルコイドーシス、リーシュマニア症、尋常性狼瘡、リンパ腫、梅毒、イチゴ腫、環状肉芽腫などは類似の病巣を示すので慎重に鑑別する。類結核型ハンセン病では、皮膚病変は中央に色素減少を伴う1つないし数個の斑が見られ、知覚鈍麻を伴い、境界部は明瞭で隆起している。発疹が生じた部位は、末梢神経の損傷により無感覚になり神経は腫大して触知可能になる。らい腫型ハンセン病は、皮膚の大部分、鼻、腎臓、精巣などが侵され、皮膚の斑点、丘疹、小結節が見られる。末梢神経障害は類結核型ハンセン病よりも重症で、しびれのある部位が多くなり、筋力低下も見られることがある。境界型ハンセン病は、類結核型とらい腫型の両方の特徴をもち、治療をしないと軽症化して類結核型のようになることもあれば、悪化してよりらい腫型のようになることもある。 |
主訴 |
運動障害|Dyskinesia 環状紅斑|Erythema annulare/Erthema circinatum 丘疹|Papule 結節|Node/Tuber/Tuberdle 紅斑|Erythema/Rubedo 知覚障害|Esthesia disorder/Sensitivity disorder 地図状紅斑|Geographic erythema |
鑑別疾患 |
皮膚結核 非結核性抗酸菌症|Non-Tuberculous Mycobacteria(NTM) 末梢神経炎 皮膚潰瘍 虹彩炎 性腺機能低下症 アミロイドーシス|Amyloidosis 腎不全 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Calcium|カルシウム [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Magnesium|マグネシウム [/S] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S] VDRL|性病研究所梅毒検査法/VDRL法 [Positive/S] α1-Globulin|α1-グロブリン [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/S] Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S] Arginase|アルギナーゼ [/Lymphocytes, /S] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S] Cryoglobulins|クリオグロブリン [/S] Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [/P] Histamine|ヒスタミン [/P] Interleukin-1β|インターロイキン-1β [/S] LE Cells|LE細胞/LE現象 [Positive/B] Lymphocyte T-Cells|T細胞 [/B] Neopterin|ネオプテリン [/S] Plasma Cells|形質細胞 [/B] Precipitins [/S] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] |
関連する検査の読み方 |
【レプロミン反応】 らい菌の死菌であるレプロミンの皮内投与による反応で、2~3週後の水疱形成(光田反応)を見る。感度、特異度ともに低いので推奨できない。 【光田反応】 レプロミン反応の一種で、らい結節の抽出物を皮内に接種し3~4週後に結節が出現したら陽性とする。らい菌に対する免疫能の指標とする。 【フェノーリックグリコリピド/PGL-1】 PGL-1に対するIgM抗体は未治療患者の90%で陽性となる。 【リンパ球幼若化試験】 PHA、ConA共に低値になる。 【IgM抗体】 M.lepraeに対するIgM抗体は特異的であるが、感度は低い。らい腫患者はほぼ全員が抗体を持つが、類結核型ハンセン病患者では、保有率は2/3程度である。 【皮膚生検】 皮膚または鼻擦過物中に抗酸性桿菌を認める。 【確定診断】 感染神経の生検による。 |
検体検査以外の検査計画 |