疾患解説
フリガナ | Cガタカンエン |
別名 | |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Hepatitis C |
ICD10 | B18.2 |
疾患の概念 | 原因ウイルスは、フラビウイルスと特徴が類似した1本鎖RNAウイルス(ヘパシウイルス)である。6種の遺伝子型、60種以上のサブタイプが知られている。感染様式は、血液による感染と母乳による母児感染が知られているが、ボディーピアス、血液透析、薬物常用、複数の性的パートナー、tattooも感染を引き起こすことがある。20~120日の潜伏期があり、急性型、慢性型の感染様式をとる。慢性型は肝硬変、肝細胞癌への進展の危険性がある。我が国では肝癌の70%はC型肝炎ウイルス感染に関連している。この疾患はクリオグロブリン血症(感染者の10~25%)、晩発性皮膚ポルフィリン症、糸球体腎炎、皮膚壊死性血管炎、扁平苔癬、リンパ腫、糖尿病、自己免疫疾患のような全身疾患が同時に見られることがあるが、その機序は不明である。 |
診断の手掛 | 消化器症状、発熱、感冒様症状などの非特異的な前駆症状で発症するが、自覚症状は軽く無症状に近い状態である。劇症化することは稀であるが、約70%は慢性化し、20~30%は肝硬変に進展する。HCVによる肝硬変の結果として肝細胞癌が発症するが、肝硬変のない慢性感染による肝細胞癌は稀である。時に血小板減少により健診で偶然見つかる例も多い。急性例ではHCV抗体の出現が発症数か月後になる場合があり、臨床所見と抗体の結果に乖離がある場合はHCV-RNAの検査を行う。HCVは本態性混合グロブリン血症、晩発性皮膚ポルフィリン症、糸球体腎炎などの全身性疾患の患者にも検出されるが当該疾患との関連は不明である。また、アルコール性肝障害やアルコール依存症の患者の多くにHCVが検出されるので、これらの患者を見た場合HCVのチェックは必須である。 |
主訴 |
咽頭痛|Pharyngodynia 黄疸|Jaundice 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 感冒様症状|Symptomes of common cold 食欲不振|Anorexia 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 着色尿|Chromaturia 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 腹痛|Abdominal pain |
鑑別疾患 |
α1-アンチトリプシン欠損症 アルコール依存症|Alcoholism アルコール性肝障害|Alcoholic Liver Disease ウィルソン病/肝レンズ核変性症|Wilson's disease/Hepatolenticular Degeneration 肝硬変|Cirrhosis of Liver 肝性昏睡 原発性胆汁性肝硬変|Primary Biliary Cirrhosis(PBC) 高尿酸血症 自己免疫性肝炎|Autoimmune Hepatitis 脂肪肝|Fatty Liver そう痒症 低コレステロール血症|Hypocholesterolemia 非アルコール性脂肪肝炎|Nonalcoholic Steatohepatitis(NASH) 無月経 薬物依存症 薬剤性肝障害|Drug-induced Liver Injury(DILI) 溶血性貧血 |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Platelet|血小板 [/B] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
2-5AS|2-5A合成酵素/2-5オリゴアデニレートシンターゼ [/S] Acid Ribonuclease|酸性リボヌクレアーゼ [/S] Alkaline Ribonuclease|アルカリ性リボヌクレアーゼ [/S] Complement C4|補体第4成分/β1Eグロブリン/C4 [/S] Hepatitis C Virus Core Antibody|HCV-コア抗体/C22-3抗体/HCV関連コア抗体/抗HCV-コア抗体 [/S] HCV Core Antigen|C型肝炎ウイルス-コア抗原/HCVコア蛋白/HCV抗原 [Positive/S] Hepatitis C Antibodies|C型肝炎ウイルス抗体/C100-3抗体/抗C型肝炎ウイルス抗体 [Positive/S] Hepatitis C Virus RNA|HCV核酸増幅定量/HCVアンプリコア定量/HCVモニター/Amplicorモニター [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Neopterin|ネオプテリン [/S, /U] PT|プロトロンビン時間 [/P] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] |
関連する検査の読み方 |
【2-5A合成酵素】 2-5ASはインターフェロンが細胞膜に結合した際に誘導される酵素で、mRNAを分解し蛋白質合成を低下させる作用があり細胞やウイルスの蛋白合成を阻害する。また、ウイルス感染により免疫担当細胞で産生されるためウイルス感染初期の生体防御機構としても働いている。臨床的にこの酵素はインターフェロン療法をする際の生体反応の指標として測定される。 【ALP】 胆汁うっ滞が激しくない限り増加は軽度である。 【ALT】 通常800IU/L以下で、300IU/L以上の無黄疸性の患者は慢性化のハイリスク患者である。ALTは治療の第一選択モニターである。 【AST】 症例の25%が漸増してから漸減し基準範囲内に戻る特徴的なパターンを示す。増減が単相性の患者は予後が良い。 【AST:ALT比】 慢性肝炎では1以下であるが、肝硬変に進展すると1以上になる。AST:ALT比を算定することにより肝の病態評価に用いる。1.急性肝炎:大量の肝細胞が破壊されるためAST,ALTは500U/L以上になるが、肝細胞の含有量を反映し初期はAST>ALTとなる。極期を過ぎると半減期の長いALTが残るためAST<ALTとなる 2.劇症肝炎:肝細胞壊死が高度であるためAST,ALTは2,000U/Lを超える。肝含有量とAST-mの逸脱でAST>ALTとなる 3.慢性肝炎、脂肪肝:AST,ALTは中等度に上昇するが半減期の差によりAST<ALTとなる 4.肝硬変:肝細胞が減少するのでAST,ALTの上昇は軽度であり、更に細胞内のALT活性が低下するためAST>ALTになる 5.アルコール性肝障害:障害がミトコンドリアにも及ぶためAST>ALTとなる。 【CBC】 白血球は低値から基準範囲内で、塗抹標本で少数の異型リンパ球を認める。血小板は肝線維化の進展度と比例する。15万以下は線維化が進展した慢性肝炎、10万以下は肝硬変の確率が高い。 【C型肝炎ウイルス核酸増幅定性】 この検査はHCVの遺伝子(RNA)を検出する定性検査である。検査は1.急性C型肝炎を疑う場合、2.HCVキャリアの診断、3.C型肝炎ウイルス存在の確認、4.HCV抗体陽性者のウイルス持続感染の確認、5.インターフェロン治療の効果判定とウイルス消滅の有無確認に用いる。 【C型肝炎ウイルス核酸増幅定量】 この検査は1.C型肝炎ウイルス量の把握、2.治療法の選択と治療効果の判定、3.病勢の推移などを知るために行う。ウイルス量が1,000コピー/mL以下であってもHCV感染は否定できない。 【HCVグルーピング】 わが国のHCV感染者の70%は1b、20%が2a、5%が2bである。このうち1b型はインターフェロンの抵抗性があり、治癒率は20%とされている。これに対し2aは65%、2bは50%の治癒率であるため、インターフェロン治療効果の予測にはHCV型群別判定が重要となる。ただし、2014年経口治療としてダクラタスビルとアスナプレビルの併用療法が開発され、インターフェロンとともに使用されている。臨床的には型群別判定とHCV-RNA定量によって、最適なインターフェロン療法を選択するために行う。 【遺伝子型】 1型、4型以外でウイルス量が少なく、肝の繊維化が乏しい患者は治療成績がよい。 【C型肝炎ウイルス抗体】 急性期では50%程度が陽性となり、3ヶ月後には90%、6ヶ月後には100%陽性である。感度は95~99%であるが、特異度はこれよりやや低い。自己免疫性肝炎や高γグロブリン血症では偽陽性(HCV抗体陽性、HCV RNA陰性)、また、免疫抑制患者や血液透析患者では偽陰性(HVV抗体陰性、HCV RNA陽性)になることがある。HCV抗体の存在はほとんどの場合活動性感染を意味する。 【C型肝炎ウイルス抗体】【C型肝炎ウイルス核酸増幅定性】 両者が陽性なら診断は確定する。 【HCV-コア抗体】 HCV-コア抗体はHCV感染後3~6ヶ月後に陽性になるが、これとコア領域の抗体を組み合わせた測定系は感染後1~2ヶ月後に陽性化する。抗体価が10単位以上ならHCV-RNAは確実に存在し抗体価が陰性ならHCV-RNAも陰性である。臨床的にはHCV感染の間接的把握、感染既往の有無、インターフェロン療法の効果判定、抗ウイルス剤の治療効果判定、予後の推定、肝機能異常者のスクリーニング、輸血前検査、針刺し事故等の対応などに用いる。 【IgM型HCV抗体】 急性期のみならず慢性期でも検出されるので急性期の診断には使えない。 【PT】 著しい延長は認められないが、認められれば激しい症状の前兆である。 【免疫グロブリン】 γ-グロブリンとIgGは慢性化の指標となる。 【クリオグロブリン】 陽性のことがある。クリオグロブリンを形成する免疫グロブリンは多クローン性である。 【胆汁】 尿中の胆汁色素は黄疸に先行するので早期に見つければ診断的な意義がある。 【肝生検】 炎症と線維化の程度の評価に有用である。また肝脂肪化の程度や治療方針の決定にも用いられる。 |
検体検査以外の検査計画 |