疾患解説
フリガナ | ウイルスセイズイマクエン |
別名 | ウイルス性髄膜脳炎 |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Viral Meningitis |
ICD10 | A87.9 |
疾患の概念 | ウイルスによる髄膜の炎症で、原因ウイルスは頻度の多い順にEnterovirus、Mumps virus、単純ヘルペスウイルス、EBウイルス、麻疹ウイルス、水痘ウイルス、風疹ウイルスが挙げられる。小児に好発するが、あらゆる年齢層に起こりうる。髄膜炎を引き起こす多くのウイルスは、細菌性髄膜炎を引き起こす細菌と異なり発生は季節性である。 |
診断の手掛 | 急性に発症する発熱、頭痛、悪心、嘔吐を訴える患者を診たら本症を疑う。ウイルス性髄膜炎に伴う頭痛は、通常前頭部、後眼窩部で、しばしば羞明と眼球運動痛を伴う。項部硬直は軽度であり、頸部前屈の制限のみのことが多い。Kernig徴候やBrudzinski徴候が認められることは少ない。Enterovirus髄膜炎は小児に多く、夏~秋が流行期である。臨床像は細菌性髄膜炎のそれに類似するが、通常はより軽度であり、項部硬直はあまり顕著でない。しかし、ときに急性細菌性髄膜炎様の重症所見も見られる。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure ケルニッヒ徴候|Kernig sign 項部硬直|Nuchal stiffness/Stiffness of neck/Stiff neck 髄膜刺激症状|Meningeal irritation sign 頭痛|Headache/Cephalalgia 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever ブルジンスキー徴候|Brudzinski sign |
鑑別疾患 |
細菌性髄膜炎|Bacterial Meningitis 結核性髄膜炎|Tuberculos Meningitis 真菌性髄膜炎 マイコプラズマ髄膜炎 広東住血線虫症 サルコイドーシス|Sarcoidosis |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/CSF] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/CSF, /S] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/CSF] Leukocytes|白血球数 [/CSF] Neutrophils|好中球 [/CSF] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF] |
異常値を示す検査 |
Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [/CSF] Albumin Index [/CSF] Cells [/CSF] IgG Index|IgG合成比 [/S,/CSF] Interferon-inducible T-cell α Chemokine [/CSF] Interferon-γ|インターフェロン-γ [/CSF] Interferon-γ-inducible Protein-10 [/CSF] Interleukin-1|インターロイキン-1/インターロイキン-1α/インターロイキン1β [/CSF] Interleukin-10|インターロイキン-10 [/CSF] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/CSF, /S] Lactate|乳酸/ラクテート [/CSF] Nerve Growth Factor|神経成長因子 [/CSF] Oligoclonal Banding|オリゴクローナルバンド [/CSF] Procalcitonin|プロカルシトニン [/P] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/CSF] Tumor Necrosis Factor|腫瘍壊死因子-α [/CSF] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/CSF, /S] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/CSF, /S] α1-Microglobulin|α1-ミクログロブリン/α1-マイクログロブリン [/CSF] α2-Ceruloplasmin [/CSF, /S] α2-Haptoglobin [/CSF, /S] |
関連する検査の読み方 |
【髄液一般検査】 蛋白は150mg/dL程度上昇するが、急性細菌性髄膜炎よりは値が低い。糖は通常、基準値かそれよりわずかに低い。その他の所見としてリンパ球優位の細胞増加などがある。しかし、髄液中の細胞、蛋白、糖の所見の組合せでは細菌性髄膜炎を除外することはできない。混濁は軽度で日光微塵と表現される。単核球の軽度増加は、他の髄膜炎との鑑別に重要である。脳脊髄液は脳と脊髄のクモ膜下腔および脳室を満たしており、物理的衝撃保護、化学的恒常性維持や栄養物質・代謝産物の輸送と除去を行っている。髄液中の成分は主として血液に由来しているが、血液脳関門が存在するため、両者には濃度差がある。臨床的には中枢神経疾患が存在すると病態を反映して様々な変化をきたすので、これ等疾患を疑う場合は必須の検査である。 【IgG Index】 基準値以上になる。炎症性神経疾患では中枢神経系の組織でIgGの合成が起こっているが、このIgGの合成量を知るために髄液と血清中のIgGとアルブミンの量からIgG合成比として算定する。臨床的にはIgGの値により炎症性神経疾患、感染症の診断、経過観察に用いる。IgG合成比=(髄液IgG×血清アルブミン)÷(血清IgG×髄液アルブミン) 異常値を認めたらオリゴクロナールIgGバンドの検索、髄液中の免疫グロブリンκ/λ比、IgGサブクラス、IgA Index、IgM Indexの測定を行う。 【PCR】 エンテロウイルス、単純ヘルペス、帯状疱疹、ウエストナイルウイルスで用いられる。 【髄液ウイルス培養】 髄液ウイルス培養は感度が低く、日常検査では行われない。 |
検体検査以外の検査計画 | 脳波検査、頭部CT検査、頭部MRI検査 |