疾患解説
フリガナ | マクセイゾウショクセイシキュウタイジンエン |
別名 |
メザンギウム毛細管性糸球体腎炎 小葉性糸球体腎炎 |
臓器区分 | 腎・泌尿器疾患 |
英疾患名 | Membranoproliferative Glomerulonephritis |
ICD10 | N05.5 |
疾患の概念 | 腎炎とネフローゼの混在した症状と徴候を示し、mesangium細胞の増殖と基質の増加、糸球体係蹄の肥厚を特徴とする腎炎で、臨床的には腎炎とネフローゼが混合した所見を示し、殆どは小児に発症する。原因として特発性または全身性疾患に続発する免疫複合体の沈着が挙げられている。I型~III型に分類され、I型は免疫沈着物を伴うメサンギウム増殖が特徴で、症例の80~85%を占め、全身性免疫複合体疾患、慢性感染症、悪性腫瘍などに続発する。II型はI型に類似するが、メサンギウム増殖は少なくGBMの高電子密度沈着物が見られ、症例の15~20%を占め、自己免疫疾患と考えられている。III型はI型と類似の疾患と考えられているが、症例数は少なく原因は不明である。 |
診断の手掛 | ネフローゼ症候群の症状と徴候を持つ患者は、常に本症を念頭に置き検査を進める。診断時に30%の患者は高血圧を、また、20%の患者は腎機能不全が見られる。高血圧は、GFR低下に先行して発症する場合が多い。小児が顕微鏡的血尿、蛋白尿などのネフローゼ症候群様の症状を呈したら本症を疑う。 |
主訴 |
血尿|Hematuria 高血圧|Hypertension 視力障害|Blurred vision/Visual impairment 蛋白尿|Proteinuria |
鑑別疾患 |
糖尿病性腎症|Diabetic Nephropathy アミロイドーシス|Amyloidosis 全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE) C型肝炎|Hepatitis C 抗リン脂質抗体症候群 血栓性血小板減少性紫斑病|Thrombotic Thrombocytopenic Purpura(TTP) 溶血性尿毒症症候群|Hemolytic Uremic Syndrome(HUS) 急性糸球体腎炎|Acute Glomerulonephritis 急性腎炎症候群 IgA腎症|IgA Nephropathy ネフローゼ症候群|Nephrotic Syndrome |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/U] Anti-Streptolysin O|抗ストレプトリジンO価/抗ストレプトリジン抗体 [/S] Chloride|クロール [/S] Complement CH50|補体価/CH50 [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] GFR|糸球体濾過量 [/U] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Leukocytes|白血球数 [/B] Phosphate|無機リン [/S] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S, /U] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] |
異常値を示す検査 |
CD45 Leukocytes|CD45 [/Tissue] Ceruloplasmin|セルロプラスミン/フェロオキシダーゼ [/S] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Complement C4|補体第4成分/β1Eグロブリン/C4 [/S] Complement C5|補体第5成分/C5 [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S] Complement, Total Hemolytic [/S] Copper|銅 [/S] Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [/U] Endothelin|エンドセリン [/U] Intercellular Adhesion Molecule-1|CD54 [/Tissue] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S, /U] Monocyte Chemotactic Protein-1 [/S, /U] Procollagen Type IV Peptide [/S] Properdin Factor B [/P] Soluble Fas Antigen [/S] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S, /U] Tryptophan|トリプトファン [/P] Tumor Necrosis Factor|腫瘍壊死因子-α [/U] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S, /U] Tyrosine|チロシン [/P] α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [/S] β-Hexosaminidase|β-ヘキソサミニダーゼ [/U] |
関連する検査の読み方 |
【補体価】 低補体血症は本症の重要な所見である。本症のマーカーとして測定する。Ⅰ型では、古典的補体経路が活性化され、C3およびC4が低下する。診断時にC4と比べC3がしばしば低下していることがあり、フォローアップ中にさらに低下するが、最終的には正常化する。Ⅱ型では、代替補体経路が活性化され、Ⅰ型と比較してC3がより重度に低下するが、C4は正常である。Ⅲ型では、C3が低下するがC4は正常である。 【C3】 C3はC4に比べ診断時にしばしば低値であり、86mg/dL以下になる。 【C4】 低値になる。 【C5】 8mg/dL以下の低値になる。 【尿中NAG活性】 尿細管障害合併の指標となる。NAGは近位および遠位尿細管や集合管細胞内のライソゾームに含まれる酵素で、尿細管から排泄されるので、尿細管障害の程度を見るために測定される。臨床的には腎毒性のあるアミノグリコシド系抗生剤や重金属などによる尿細管障害の早期発見、腎疾患の診断・経過観察、糖尿病性腎症の早期発見などに用いる。 【β2-ミクログロブリン】 尿細管障害合併の指標となる。β2mは全ての有核細胞の膜抗原を構成しているが、細胞から遊離すると糸球体を通過し近位尿細管で再吸収され分解される。この蛋白の異化経路の大部分は腎を経由するため、腎の排泄機能が低下すると、他の低分子蛋白よりも著しく血中濃度が増加する。また、血中濃度はGFRと良く相関するので、GFRに代用されることもある。臨床的には腎障害部位の推測や腎疾患活動性の推定に用いる。 【尿沈渣】 糸球体型の赤血球を認める。 【生検】 確定診断は腎生検による。 |
検体検査以外の検査計画 | |