疾患解説
フリガナ | ケッセンセイケッショウバンゲンショウセイシハンビョウ |
別名 | |
臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
英疾患名 | Thrombotic Thrombocytopenic Purpura(TTP) |
ICD10 | M31.1 |
疾患の概念 | 消費性血小板減少症、微小血管障害性溶血性貧血、動揺性精神神経症状、腎機能障害、発熱のMoschcowitz 5徴候を呈する疾患群で、血漿中の酵素ADAMTS13の機能不全によるvWFの特異的切断で血小板-vWF凝集塊を作ることが原因である。血小板とフィブリンが小血管に沈着し、血小板と赤血球に損傷を与え、有意な血小板減少症および貧血を引き起こす。血栓は、主に動脈毛細血管の接合部に発生し、血小板-von Willebrand因子血栓が多数の臓器、特に脳、心臓、腎臓で見られる。 |
診断の手掛 |
内皮細胞からvon Willebrand因子や、その他の凝固誘発因子が放出されることで発症する。血小板減少、溶血性貧血、発熱などの症状が認めたら本症を疑うが、この他に血栓性細血管障害に伴う複数の臓器の虚血による症状(筋力低下、錯乱または昏睡、腹痛、悪心、嘔吐、下痢、心筋損傷に起因する不整脈)も見逃さない。日によって症状が変動する精神神経症状、発熱、紫斑、貧血、腎機能不全が5徴候であり、発病1~2週後に見られる。Coombs試験陰性の重度な溶血性貧血、分裂赤血球、断片化赤血球、血小板減少、凝固系活性低下を認めたらTTPを強く疑う。 【診断基準:2015年厚労省】 他に原因を認めない血小板減少を認めた場合、TTPの可能性を考え、下記に従い診断し、確定例、疑い例を対象とする。 確定例:1.ADAMTS13活性が5%未満に著減していること。抗ADAMTS13活性中和抗体が陽性であれば後天性TTPと診断する。陰性であればUpshaw Sohulman症候群と診断する。2.ADAMTS13活性にかかわらず、下記の5徴候の全てを認める。①血小板減少 ②細血管障害性溶血性貧血 ③腎機能障害 ④発熱 ⑤動揺性精神神経症状 加えて⑥心トロポニン上昇 ⑦腹部症状なども参考にする。 疑い例:ADAMTS13活性にかかわらず、5徴候のうち血小板減少と細血管障害性溶血性貧血を認める場合は、除外すべき疾患などを鑑別して他の疾患が否定できれば、TTP疑い例とする。 除外すべき疾患:①DIC ②溶血性尿毒症症候群 ③HELLP症候群 ④Evans症候群 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 黄疸|Jaundice 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 貧血症状|Anemic symptom 微熱|Low grade fever/Febricula 麻痺|Palsy/Paralysis/Numbness |
鑑別疾患 |
Evans症候群 血小板減少症|Thrombocytopenia 腎障害 造血幹細胞移植 播種性血管内凝固症候群|Disseminated Intravascular Coagulation(DIC) 溶血性尿毒症症候群|Hemolytic Uremic Syndrome(HUS) 溶血性貧血 子癇前症/子癇|Preeclampsia/Eclampsia 薬剤(キニン、シクロスポリン、マイトマイシンC) 出血性大腸炎 |
スクリーニング検査 |
Bilirubin-Indirect|間接ビリルビン/非抱合型ビリルビン [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Eosinophils|好酸球 [/B, /Bone Marrow] Erythrocytes|赤血球数 [/U] GFR|糸球体濾過量 [/U] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B, /P] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /U] Lymphocytes|リンパ球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/U] TIBC|総鉄結合能 [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] VDRL|性病研究所梅毒検査法/VDRL法 [Positive/S] |
異常値を示す検査 |
ADAMTS13|vWF切断酵素 [/P] Anti-Endothelial Cell Antibodies|抗内皮細胞抗体 [/S] Bleeding Time|出血時間 [/Patient] Capillary Fragility|毛細血管抵抗試験 [/B] Casts|円柱 [/U] Cells [/Bone Marrow] Clot Retraction|血餅退縮能 [/B] Coombs' Test|クームス試験 [Positive/S] Factor V|第V因子活性/不安定凝固因子/プロアクセレリン/Acグロブリン [/P] Glomerular Filtration Rate|糸球体濾過量 [/U] Haptoglobin|ハプトグロビン [/S] Iron Saturation|鉄飽和度 [/S] LE Cells|LE細胞/LE現象 [Positive/B] Platelet Aggregating Factor|血小板凝集因子 [/S] Platelet Survival|血小板寿命/血小板回転 [/B] Platelet-associated IgG|血小板表面IgG/血小板関連IgG/抗血小板自己抗体 [/B] Reticulocytes|網赤血球/レチクロサイト/網状赤血球数 [/B] Soluble Fas Antigen [/S] Soluble Fas Ligand Antigen [/S] Thrombin Antithrombin III Complex|トロンビン・アンチトロンビンIII複合体/トロンビン・アンチトロンビン複合体/TATテスト [/P] Thrombomodulin|トロンボモジュリン [/P] Urea|尿素 [/S] von Willebrand Factor|フォンウィルブランド因子活性/リストセチン・コファクター活性 [/P] von Willebrand Factor Antigen|第VIII因子様抗原/第VIII因子関連抗原/フォンウィルブランド因子抗原量 [/P] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 微小血管性溶血性貧血が発症時か2~3日以内にみられ、ヘモグロビンは通常10g/dL以下だがしばしば6g/dL以下である。赤血球系では破砕赤血球、赤芽球が出現し網赤血球が増加する。血小板は通常は5万/μL以下が2~3週続く、骨髄巨核球は基準範囲内か増加する。白血球と好中球は増加か基準範囲内である。 【血液像】 多数の断片化赤血球と形態異常の赤血球を認める。網赤血球、有核赤血球、好塩基性斑点、多染性赤血球が増加する。 【毛細血管抵抗試験】 20個以上の出血点を認める。 【PT】【APTT】 通常基準範囲内だがわずかに延長することもある。FDPが低レベルで認められる。 【D-Dimer】 増加することがある。 【LD】 溶血により増加する。 【UN】 一日で50mg/dL以上増加することがあり、しばしば100mg/dLになることもある。 【ハプトグロビン】 溶血したヘモグロビンで消費され低下するか検出不能。 【尿沈渣】 赤血球、蛋白、円柱を認めることがある。 【尿量】 乏尿である。無尿のこともある。 【ADAMTS13インヒビター】 高値である。 【ADAMTS13】 低下~著しく低下する。ADAMST13はvon Willebrand因子を切断するプロテアーゼで、vWFのマルチマーの大きさを減じることで病的な血小板凝集や血栓形成を防止する働きを持つ。血小板血栓で全身の細小動脈が閉塞される全身性重篤疾患であるTTPの原因の一つにADAMTS13活性の低下が知られている。原因不明の血小板減少と溶血性貧血の所見を有する患者を診たら常にTTPを考えADAMTS13活性の測定を行う。 |
検体検査以外の検査計画 |