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疾患解説

フリガナ HELLPショウコウグン
別名 ヘルプショウコウグン
臓器区分 妊産婦疾患
英疾患名 HELLP Syndrome
ICD10 O14.1
疾患の概念 重症の子癇前症の一型で、溶血(hemolysis)、肝酵素増加(elevated liver enzymes)、血小板減少(low platelet count)が特徴的で、頭文字をとって名付けられた。発症機序は不明であるが、稀に肝の被膜下血腫の自然破裂を引き起こす。被膜下血腫は、子癇前症の9~12%に発症するといわれている。HELLP症候群は重症の妊娠高血圧腎症または子癇を有する女性の10~20%に発症するとされている。
診断の手掛 妊娠中、出産後48時間以内または子癇前症の患者が、心窩部痛、悪心、嘔吐などを訴えたら本症の発症を疑い、溶血所見、肝酵素上昇、血小板減少を確認する。特に末梢血塗抹標本中の分裂赤血球やヘルメット細胞などの微小血管障害の所見に注意する。HELLP症候群は妊娠高血圧症候群がなくとも発症することがあるので注意する。診断に際しては、ウイルス性肝炎、薬剤性肝障害、胆嚢炎、ITP、TTPなどの疾患を除外する必要がある。
主訴 息切れ|Shortness of breath/Breathlessness
嘔吐|Vomiting
悪心|Nausea
呼吸困難|Dyspnea
錯乱|Confusion
視野暗点|Scotoma
視力障害|Blurred vision/Visual impairment
心窩部痛|Epigastralgia/Epigastric pain/Upper abdominal pein
上腹部痛|Upper abdominal pain
頭痛|Headache/Cephalalgia
知覚障害|Esthesia disorder/Sensitivity disorder
点状出血|Petechiae
乏尿|Oliguria
網膜出血|Retinal hemorrhage
痙攣
鑑別疾患 ウイルス性肝炎|Viral Hepatitis
ウイルス性劇症肝炎
急性呼吸促迫症候群|Acute Respiratory Distress Syndrome(ARDS)
急性妊娠性脂肪肝
虚血性急性尿細管壊死
血栓性血小板減少性紫斑病|Thrombotic Thrombocytopenic Purpura(TTP)
原発性発作失調
膵疾患
胆嚢疾患
肺水腫|Pulmonary Edema
慢性高血圧症
慢性腎臓病|Chronic Kidney Disease
溶血性尿毒症症候群|Hemolytic Uremic Syndrome(HUS)
スクリーニング検査 ALT|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S]
Albumin|アルブミン [/S,/S]
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S]
AST|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S]
Bilirubin|総ビリルビン/ビリルビン [/S]
Bilirubin-Indirect|間接ビリルビン/非抱合型ビリルビン [/S]
Bilirubin-Direct|直接ビリルビン/抱合型ビリルビン [/S]
Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P]
γ-GT|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S]
Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B]
Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B]
International Normalized Ratio|プロトロンビン-INR [/P]
Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S]
Platelets|血小板 [/B]
Protein|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/U]
Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P]
異常値を示す検査 Antithrombin III|アンチトロンビンIII/アンチトロンビン [/P]
Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [/P]
Glutathione|グルタチオン [/B]
Haptoglobin|ハプトグロビン [/S]
Interleukin-12|インターロイキン-12 [/S]
Matrix Metalloproteinase-8|マトリックスメタロプロテイナーゼ-8 [/S]
Matrix Metalloproteinase-9|マトリックスメタロプロテイナーゼ-9 [/S]
Plasminogen Activator Inhibitor-1|プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1 [/P]
Tissue Inhibitor of Metalloproteinase-1|組織メタプロテアーゼインヒビター/コラゲナーゼインヒビター1 [/S]
Tissue Plasminogen Activator|組織プラスミノゲンアクチベータ [/P]
Urokinase Plasminogen Activator|ウロキナーゼプラスミノゲンプロアクチベータ [/P]
関連する検査の読み方 【Bilirubin-Indirect】
溶血により間接ビリルビンは1.2mg/dLを超える濃度になる。
【蛋白】
5g/24時間以上の蛋白尿が見られる。
【肝機能検査】
AST、ALT、LDが高値になる。ALTは80IU/Lを超え、LDは600IU/Lを超える。
【CBC】
血小板は10万/μL以下になる。
【末梢血液塗抹標本】
微小血管障害の所見である分裂赤血球、ヘルメット細胞などがみられる。
【血液凝固】
PTは延長することがある。APTT、Fibrinogen、FDPは基準範囲内である。
【遊離ヘモグロビン】
溶血のため高値になる。
【DIC】
合併症として高率にDICを発症するので、注意する。
検体検査以外の検査計画 胸部X線検査、頭部CT検査、MRI検査

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