疾患解説
フリガナ | カンセイノウショウ |
別名 | |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Hepatic Encephalopathy |
ICD10 | K72.9 |
疾患の概念 | 肝機能低下と門脈系側副血行の2つの因子から発症する重篤な精神神経症状を呈する病態で、肝硬変に伴うものが圧倒的に多く、稀に尿素サイクル酵素異常症によるものがある。疾患分類は、Ⅰ度:睡眠パターンの逆転、軽度の錯乱、イライラ感、振戦 Ⅱ度:傾眠、見当識低下、異常行動、羽ばたき振戦 Ⅲ度:傾眠、重度の錯乱、攻撃的行動、羽ばたき振戦 Ⅳ度:昏睡である。 |
診断の手掛 | 肝硬変などの肝障害を持つ患者が、様々な精神症状と運動系の症状を訴えたら本症を疑う。前昏睡期には多幸気分、異常行動、せん妄などを呈することが多い。症状の安定した肝硬変患者の消化管出血が、最も一般的な発症の誘発因子である。この他の誘発因子としては、高窒素血症、急性肝不全、精神安定薬、オピオイド、鎮静・睡眠薬、低K血症、便秘、感染などがある。診断として肝性脳症を考える因子は1.急性または慢性の肝細胞障害、または明らかな門脈-体循環シャントの存在 2.注意力や知的活動能力の障害 3.神経徴候の出現 4.特徴的な脳波パターンの4種である。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 運動失調|Ataxia 傾眠|Drowsiness/Somonolency 見当識障害|Disorientation 言語障害|Language disorder/Allophasis 構音障害|Dysarthria 昏睡|Coma 昏迷|Stupor 錯乱|Confusion 振戦|Tremor せん妄|Delirium 羽ばたき振戦|Flapping tremor 判断力低下|Degradation of discernment |
鑑別疾患 |
肝硬変|Cirrhosis of Liver 劇症肝炎|Fulminant Hepatitis 代謝性アシドーシス|Metabolic Acidosis 低K血症|Hypokalemia 尿素サイクル異常症 敗血症|Sepsis 門脈圧亢進症 代謝性脳症 Budd-Chiari症候群 |
スクリーニング検査 |
α-Fetoprotein|α-フェトプロテイン [/S] Albumin|アルブミン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Potassium|カリウム [/S] Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P] Sodium|ナトリウム [/U] |
異常値を示す検査 |
Acid Ribonuclease|酸性リボヌクレアーゼ [/S] Alkaline Ribonuclease|アルカリ性リボヌクレアーゼ [/S] Amino Acids|アミノ酸分析/アミノ酸41分画 [/U] Ammonia|アンモニア [/B, /CSF] Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/S] Carbon Dioxide Partial Pressure|動脈血CO2分圧/炭酸ガス分圧/CO2分圧/PCO2/PaCO2 [/B] Dopamine β-Hydroxylase|ドーパミンβ-水酸化酵素 [/S] Factor VII|第VII因子活性/安定因子/プロコンバーチン [/P] Fischer Ratio|フィッシャー比 [/P] Free Fatty Acids|遊離脂肪酸/非エステル型脂肪酸/FFA [/CSF, /S] Gc-Globulin [/S] Gc-Globulin, Free [/S] Glutamine|グルタミン [/CSF, /P] Isoleucine|イソロイシン [/P] Leucine|ロイシン [/P] Methionine|メチオニン [/P] Nickel|ニッケル [/S] pH|尿pH [/B] Phenylalanine|フェニルアラニン [/P] Tryptophan|トリプトファン [/CSF, /P] Urea|尿素 [/S] Valine|バリン [/P] Vitamin B12|ビタミンB12/コバラミン/シアノコバラミン [/S] β-Glucuronidase|β-グルクロニダーゼ [/S] |
関連する検査の読み方 |
【アンモニア】 90%以上の患者で増加するが、昏睡の程度とは相関せず、検査として高感度でも特異的でもない。検体は動脈血が望ましい。 【K】 高K血症は合併症として高頻度に発症し、死亡率の高さと相関する。 【呼吸性アルカローシス】 過換気による呼吸性アルカローシスを認める。 【アミノ酸分画】 異常なパターンを示し、全てのアミノ酸が著増する。 【フィッシャー比】 1.8以下に低下する。Fischer比(BACC/AAA)とは分枝鎖アミノ酸:BACC(イソロイシン、ロイシン、バリン)と芳香族アミノ酸:AAA(チロシン、フェニルアラニン)のモル比肝障害の重症度の評価と治療指針に有用とされている。肝機能が低下すると肝のアミノ酸代謝異常によりAAAの血中濃度が増加するが、筋肉や心臓でのBACCの代謝は阻害されないためBACC/AAAの値は低下する。 |
検体検査以外の検査計画 | 脳波検査 |