疾患解説
フリガナ | シキュウケイガン |
別名 | 悪性腫瘍(子宮頸部) |
臓器区分 | 女性性器疾患 |
英疾患名 | Cancer of Cervix |
ICD10 | C53.9 |
疾患の概念 | 組織学的に1.扁平上皮癌、2.腺癌、3.腺扁平上皮癌に分類される子宮頸部の悪性腫瘍で、約80~85%は扁平上皮癌である。癌が基底膜を貫いて組織内に浸潤するには2~10年を要するため、細胞診が早期発見に効果的である。子宮頸癌は、子宮頸部上皮内腫瘍に続いて発症し、原因ウイルスは、ヒトパピローマウイルス(HPV)16型、18型、31型、33型、35型、39型によるとされているが、95%はHPV16と18である。子宮頸癌の危険因子には、1.初交年齢が低い、2.セックスパートナーの数が多い、3.子宮頸癌に罹患していた女性と性交渉のあった男性との性交のほか喫煙や免疫不全なども寄与するとされている。子宮頸癌はCIN1(子宮頸部軽度異形成)、CIN2(中等度異形成)、CIN3(高度異形成および上皮内癌)に分類される。CIN3は自然退縮する可能性が低く、無治療の場合は数カ月~数年後には基底膜を越えて浸潤癌となりうる。浸潤癌は、直接進展により周囲組織へ、またはリンパ管経由で、骨盤リンパ節および傍大動脈リンパ節へ拡がる。血行性進展もあるが稀である。 |
診断の手掛 | 早期の子宮頸癌は、無症状であることが多い。通常は不正出血が初発症状で、性交後の出血が最も多く、中間期の自然出血、月経時の出血量の増加が見られることもある。腫瘍が大きいほど自然出血の可能性が高く、悪臭のある帯下や骨盤痛を見ることがある。腫瘍の進展が広範に及ぶと、閉塞性尿路疾患、背部痛、静脈やリンパ管の閉塞による下肢の腫脹が発生する。多くの場合、健診での目に見える子宮頸部病変、パパニコロウ細胞診異常(90~95%の正診率)、不正膣出血を訴える患者で診断される可能性が高い。また、黄色の腟分泌物、腰仙背部痛、排尿障害を訴える患者にも注意する。子宮頸部細胞診の結果報告形式はベセスダ分類として標準化されている。 |
主訴 |
下肢痛|Calf pain 下肢浮腫|Lower extremity edema 下腹部痛|Hypogastric pain 胸水|Pleural effusion 血尿|Hematuria 血便|Bloody stool/Hemorrhagic stool/Hematochezia 性交後出血|Postcoital bleeding 帯下|Vaginal discharge 排尿痛|Scalding/Micturition pain 排便痛|Dyschezia 頻尿|Pollakiuria/Pollakisuria 腹痛|Abdominal pain 浮腫|Edema/Dropsy 不正出血|Abnormal bleeding リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
月経困難症|Dysmenorrhea 子宮筋腫 子宮頸管ポリープ ヘルペスウイルス感染症 子宮頸部悪性リンパ腫 悪性黒色腫|Malignant Melanoma 子宮膣部びらん |
スクリーニング検査 |
α-Fetoprotein|α-フェトプロテイン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] CEA|癌胎児性抗原 [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/U] Ferritin|フェリチン [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Lymphocytes|リンパ球 [/B] Platelets|血小板 [/B] Transferrin|トランスフェリン [/S] |
異常値を示す検査 |
Aldolase|アルドラーゼ/アルドラーゼアイソザイム [/S] Alkaline Phosphatase Isoenzymes|アルカリホスファターゼアイソザイム/ALPアイソザイム [/S] Alkaline Phosphatase, Placental Isoenzyme|胎盤型アルカリホスファターゼ [/S] CA 125|CA125 [/S] Ceruloplasmin|セルロプラスミン/フェロオキシダーゼ [/S] Cholesterol, Esterified|エステル型コレステロール/コレステロールエステル [/U] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Complement C4|補体第4成分/β1Eグロブリン/C4 [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S] Copper|銅 [/S] Cytokeratin 19 Fragment|サイトケラチン19フラグメント/シフラ/シフラ21-1/CYFRA [/S] Epidermal Growth Factor|上皮細胞増殖因子/上皮細胞成長因子 [/U] Fucose|フコース [/S] Galactosyltransferase Isoenzyme II [/S] Gonadotropin Peptide|ゴナドトロピン ペプタイド [/U] Hexokinase|ヘキソキナーゼ(赤血球) [/S] an Papilloma Virus-DNA [Positive/Tissue] Macrophage Colony Stimulating Factor|マクロファージコロニー刺激因子 [/S] Neopterin|ネオプテリン [/U] Phosphohexoseisomerase|ホスホヘキソイソメラーゼ/グルコースリン酸イソメラーゼ/ホスホへキソムターゼ [/S] Procollagen Type III Peptide|プロコラーゲンIIIペプチド [/S] Prolactin|プロラクチン/乳汁分泌ホルモン [/P] Sialic Acid, Lipid-associated [/S] Sialyl-Tn Antigen|シアリルTn抗原 [/S] Sialyltransferase [/S] Squamous Cell Carcinoma Antigen|扁平上皮癌関連抗原/SCC抗原 [/S] Steroid Sulfatase|ステロイドスルファターゼ [/S] TA-4 [/S] Tissue Polypeptide Antigen|組織ポリペプチド抗原 [/S] Urokinase Plasminogen Activator|ウロキナーゼプラスミノゲンプロアクチベータ [/Tissue] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/S] β-Chorionic Gonadotropin|ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット [/P] β-Glucuronidase|β-グルクロニダーゼ [/S] |
関連する検査の読み方 |
【シアリルTn抗原】 軽度~中等度に増加する。STNは正常人の睾丸Lydig細胞、結腸のGoblet細胞、胃のParietal細胞や毛細血管内皮に存在し発育分化抗原としての意義を持つとされるが、なぜ癌細胞で増加するかについては諸説がある。臨床的には卵巣癌と消化器癌で高値を示す特徴があり、卵巣癌では40~50%の陽性率を示し偽陽性が少ない。 【組織ポリペプチド抗原】 増加する。TPAはサイトケラチンを認識するモノクローナル抗体で検出される非特異的腫瘍マーカーである。悪性腫瘍で増加し腫瘍の進行度と関連するとされている。臓器特異性に乏しく良性疾患でも陽性を示すため早期診断には不適であるが、転移の確認、治療効果判定などに用いられる。 【ヒトパピローマウイルスDNA型】 陽性である。ヒトパピローマウイルスはパルボウイルス科に属する小型DNAウイルスで子宮頸癌、外陰癌、陰茎癌、皮膚癌、尖圭コンジローマなどの原因ウイルスとされている。現在100種類以上のタイプが同定されているが、そのうち約40種が外陰部や子宮頸部組織に選択的に感染することが知られている。特にHPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68の13種は子宮頸癌のハイリスク型に分類されているため、HPVゲノタイピング検査で、子宮頸部生検でC1N1又はC1N2の患者に対してHPVの有無を確認する。また尖圭コンジロームは6型と11型が原因ウイルスである。臨床的には16型と18型の持続感染者は子宮頸癌のハイリスク患者であるため、スクリーニング検査の一つとして用いる。また、健診の場では子宮頸部細胞診と併用することで、診断の感度が上がる。 【子宮頸部細胞診】【子宮頸部生検】 細胞診はパパニコロウ染色で行う。頸部と膣内の両方から細胞採取を行うと陽性率が高くなる。確定診断は細胞診と生検で行う。 【尿沈渣】 膀胱浸潤例で異型細胞(扁平上皮癌細胞)を認めることがある。 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部・骨盤部CT検査、MRI検査、膀胱鏡検査、S状結腸鏡検査、経静脈的尿路造影、コルポスコピー、骨盤部PET検査 |