疾患解説
フリガナ | ボウコウガン |
別名 | 悪性腫瘍(膀胱) |
臓器区分 | 腎・泌尿器疾患 |
英疾患名 | Bladder Carcinoma |
ICD10 | C67.9 |
疾患の概念 | 膀胱粘膜移行上皮から発生する癌で、90%以上は、尿路移行上皮癌、うち70%は、乳頭状表在癌、30%が非乳頭上皮癌である。50歳以上の男性に好発し、p53遺伝子の発現が進行に関連する場合がある。喫煙が最も高い危険因子で、新規症例の50%以上の原因とされている。その他の危険因子は、フェナセチンの乱用、シクロホスファミドの長期使用、住血吸虫症、長期カテーテル留置、膀胱結石による慢性的な刺激、炭化水素、トリプトファン代謝物、アニリン色素などの化学薬品への曝露がある。40%を超える患者では、再発が見られるが、腫瘍が大型または低分化型であるか、複数ある場合にその傾向が強くなる。この癌は、リンパ節、肺、肝および骨に転移する傾向がある。 |
診断の手掛 | 原因不明の血尿(肉眼的または顕微鏡的)、刺激性の排尿症状(排尿障害、灼熱感、頻尿)などを訴える患者を診たら本症を疑う。患者の80~90%に血尿が見られるが、殆どは肉眼的血尿である。膀胱は、肉眼的血尿の原因臓器として最も一般的である。 |
主訴 |
下腹部痛|Hypogastric pain 血尿|Hematuria 残尿感|Residual urine 側腹部痛|Lateroabdominal pain 排尿障害|Urinary disturbance/Dysuria 排尿時灼熱感|Urine ardor 貧血症状|Anemic symptom 頻尿|Pollakiuria/Pollakisuria 腹痛|Abdominal pain |
鑑別疾患 |
腎盂癌/尿管癌 腎細胞癌|Renal Cell Carcinoma(RCC) 前立腺炎 突発性腎出血 尿路結石症|Urinary Calculi 膀胱炎 膀胱結石 慢性膀胱炎 無症候性血尿 子宮内膜症|Endometriosis 子宮癌 直腸癌 間質性膀胱炎 前立腺癌|Cancer of Prostate |
スクリーニング検査 |
α-Fetoprotein|α-フェトプロテイン [/S] Albumin|アルブミン [/S, /U] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/U] Calcium|カルシウム [/S, /U] CEA|癌胎児性抗原 [/AsF, /S, /U] Creatinine|クレアチニン [/S] Erythrocytes|赤血球数 [/U] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/U] Leukocytes|白血球数 [/U] MCH|平均赤血球ヘモグロビン量 [/B] MCHC|平均赤血球ヘモグロビン濃度 [/B] MCV|平均赤血球容積 [/B] Monocytes|単球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] TIBC|総鉄結合能 [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] Uric Acid|尿酸 [/S] |
異常値を示す検査 |
4-Aminophenyl Hemoglobin Adduct [/B] Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [/Lymphocytes, /RBC, /S] Arylsulfatase [/U] Bladder Tumor Antigen|膀胱腫瘍抗原 [/U] BTA TRAK|膀胱腫瘍抗原 [/U] c-erb-B2 Oncoprirein [/S] CA 19-9|CA19-9 [/S, /U] Cathepsin B|カテプシンB/カテプシンL [/Tissue] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Complement C4|補体第4成分/β1Eグロブリン/C4 [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S] Cryofibrinogen|クリオフィブリノゲン [/P] Cytokeratin 19 Fragment|サイトケラチン19フラグメント/シフラ/シフラ21-1/CYFRA [/S] Galactosyltransferase Isoenzyme II [/S] HER2/neu Protein [Positive/Tissue] Iron Saturation|鉄飽和度 [/S] Laminin P1 [/S] Metallopanstimulin [/S] Neopterin|ネオプテリン [/S, /U] Nuclear Matrix Protein 22|核マトリックス蛋白22 [/U] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/P] Parathyroid Hormone-related Peptide|副甲状腺ホルモン関連蛋白 [/P] Phosphohexoseisomerase|ホスホヘキソイソメラーゼ/グルコースリン酸イソメラーゼ/ホスホへキソムターゼ [/S] Phospholipase A|ホスホリパーゼA [/S] Pseudouridine|シュードウリジン [/U] Sialyltransferase [/S] Soluble CD44 Splice Variant 5 [/S] Soluble CD44 Splice Variant 6 [/S] Soluble CD44 Standard [/S] Tissue Factor Pathway Inhibitor [/P] Tissue Polypeptide Antigen|組織ポリペプチド抗原 [/S, /U] Tissue Polypeptide Antigen Epitope M3 [/S] Urokinase Plasminogen Activator|ウロキナーゼプラスミノゲンプロアクチベータ [/Tissue] β-Chorionic Gonadotropin|ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット [/P, /U] |
関連する検査の読み方 |
【DNA検査】 尿中細胞のDNA量を測定し異常DNAを持つ細胞があれば悪性細胞であり、早期発見の指標になる。 【HER2/neu遺伝子】 増幅を認める。 【HER2/neu蛋白】 過剰に発現する。HER2蛋白は癌遺伝子HER-2/neuの産物で細胞の増殖と分化に関与するシグナル伝達系の一部を担当している。HER2/neu遺伝子は 乳癌や胃癌などで過剰発現が認められ、乳癌では20~30%程度に発現しているが、これは細胞膜にHER-2蛋白の存在を意味する。臨床的には癌の再発や重症化を規定する予後推定因子として、またホルモン療法や化学療法の効果を規定する因子として測定される。 【p53遺伝子】 遺伝子変異を認める。p53遺伝子の変異はヒトのあらゆる組織の腫瘍で認められる。変異は多くの場合17番染色体短腕(17p)の一方のアレル欠失と点突然変異である。この遺伝子の変異はヒトのあ 【核マトリックス蛋白22】 治療後3~6ヶ月の再発予測に使う腫瘍マーカーで、感度と特異度に優れている。NMP22は核マトリックス蛋白質を免疫原として作られたモノクローナル抗体302-22と302-18によつて認識される核蛋白質で、本体は核内のNuMA蛋白(nuclear mitotic apparatus protein)で細胞分裂の制御に関与している。癌細胞では正常細胞に比べ発現量が増加するが、尿路上皮癌細胞が崩壊すると核内のマトリックス蛋白が可溶性になって尿中に出現する。臨床的には尿沈渣に赤血球が認められ、膀胱癌が疑われる場合のスクリーニング検査として用いられる。NMP22は血尿を認める腎・尿路疾患、膀胱炎、術後などで陽性となるので注意が必要である。 【LD】 尿中のLD検査は化学染料(アニリン染料)を扱う無症状患者のスクリーニング検査に有用なことがある。 【尿一般検査】 通常は肉眼的血尿だが顕微鏡的血尿のこともある。異型細胞(尿路上皮癌細胞)を認める。 【膀胱腫瘍抗原】 膀胱癌のスクリーニング検査として有用である。膀胱癌の際に産生されるプロテアーゼが膀胱基底膜を破壊すると、基底膜に含まれるIV型コラーゲンなどの細胞外基質は断片化され尿中に放出される。この基底膜の断片は蛋白断片複合体(BTA)を形成するするので、測定により膀胱癌の診断が可能となる。臨床的には膀胱癌治療後の再発マーカーとして細胞診より感度が高く、有用性が認められている。ただし、陰性でも再発は否定できない。 |
検体検査以外の検査計画 | 膀胱鏡検査、超音波断層検査、静脈性尿路造影検査 |