疾患解説
フリガナ | レプトスピラショウ |
別名 | |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Leptospirosis |
ICD10 | A27.9 |
疾患の概念 | レプトスピラ症は、スピロヘータの一種であるLeptospira属細菌によって引き起こされる家畜や野生動物に発生する人獣共通感染症で、不顕性感染のこともあれば、時に死に至る重篤な疾患を引き起こすこともある。保菌状態となった動物は、何年にも亘りレプトスピラを尿中に排出する。ヒトへの感染は、感染動物の尿もしくは組織との直接接触または汚染された水や土壌との間接接触による。侵入門戸は、皮膚の擦過傷、結膜、鼻粘膜、口腔粘膜である。レプトスピラ症は、農業従事者、下水処理場や食肉処理場の従業員の職業病であるが、多くの患者が、汚染された水中での遊泳などのレジャー中に偶発的に感染している。この疾患は4類感染症である。 |
診断の手掛 | 潜伏期間は2~20日(通常は7~13日)で、特徴的な二相性の症状を示す。敗血症期は、突然始まり頭痛、重度の筋肉痛、悪寒、発熱、咳嗽、咽頭炎、胸痛や一部の患者では喀血がみられる。通常は3~4日目に結膜充血が出現する。脾腫および肝腫大は稀である。敗血症期は4~9日続きその間、悪寒と発熱を繰り返し、しばしば体温は39℃以上に上昇するが、その後解熱する。第2期または免疫期は、第6~12病日に抗体出現に伴って始まる。発熱と早期症状が再発するほか、髄膜炎を発症することもある。稀に虹彩毛様体炎、視神経炎および末梢神経障害が発症する。死亡率は、黄疸のない患者では0%、黄疸がある患者は5~10%で、60歳以上の患者ではさらに高率となる。レプトスピラ症の重症型が、ワイル病(黄疸出血性レプトスピラ症)で、黄疸のほか、高窒素血症、貧血、意識障害および持続性の発熱が見られる。発症後に毛細血管損傷による鼻出血、点状出血、紫斑、斑状出血などが出現し、3~6日目には肝および腎の機能障害が現れる。腎の異常としては、タンパク尿、膿尿、血尿、高窒素血症などがみられる。肝細胞傷害は軽度であり完治する。 |
主訴 |
悪寒 咽頭痛|Pharyngodynia 黄疸|Jaundice 胸痛|Chest pain 筋肉痛|Myalgia 結膜充血|Conjunctival injection 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 頭痛|Headache/Cephalalgia 咳|Cough 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever |
鑑別疾患 |
悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma インフルエンザ|Influenza 肝炎 腎症候性出血熱 胆嚢炎 腸チフス|Typhoid Fever 敗血症|Sepsis パラチフス マラリア|Malaria 溶血性貧血 リウマチ熱|Rheumatic Fever 流行性髄膜炎 |
スクリーニング検査 |
ALT|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Albumin|アルブミン [/S] ALP|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] AST|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Bilirubin,Direct|直接ビリルビン/抱合型ビリルビン [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] ESR|赤血球沈降速度 [/B] Erythrocytes|赤血球数 [/U] α2-Globulin|α2-グロブリン [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Leukocytes|白血球数 [/B] Lymphocytes|リンパ球 [/CSF] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B] Potassium|カリウム [/S] Protein|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF] PT|プロトロンビン時間 [/P] UN|尿素窒素 [/S] VDRL|性病研究所梅毒検査法/VDRL法 [Positive/S] |
異常値を示す検査 |
Aggulutination Tests [Positive/S] Antibody Titer [/S] Casts|円柱 [/U] Cells [/CSF] Complement Fixation [/S] Lactate|乳酸/ラクテート [/B] Cccult Blood [/Feces] Urobilinogen|ウロビリノゲン定性(尿) [/U] |
関連する検査の読み方 |
【CSF】 髄液細胞数は10~1000/μLで、単核球が優勢である。髄液中グルコース値は正常で、タンパクは100mg/dL未満である。ビリルビンの髄液中濃度は血清中濃度よりも高くなる。 【CBC】 白血球数は大部分の患者で基準範囲内またはわずかに高値となるが、黄疸を伴う重症患者では50,000/μLに達することがある。70%を超える好中球の存在はレプトスピラ症をウイルス性疾患と鑑別するのに役立つ。 【ビリルビン】 黄疸のある患者では、ビリルビン値は通常20mg/dL未満であるが、重症例では40mg/dLに達することがある。ビリルビンの血中濃度はALTの血中濃度と釣り合いが取れない。 【PCR】 血中のレプトスピラ検出に用いる。 |
検体検査以外の検査計画 |