疾患解説
フリガナ |
マラリア |
別名 |
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臓器区分 |
寄生動物疾患
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英疾患名 |
Malaria
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ICD10 |
B54
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疾患の概念 |
ハマダラ蚊が伝播するマラリア原虫(Plasmodium属原虫)の感染により発症する。特有の熱発作、貧血、脾腫などを主徴とする全身感染症で、熱帯熱、三日熱、四日熱、卵形マラリアの4種が病因原虫である。潜伏期間は三日熱(12~17日)、熱帯熱(9~14日)、四日熱(18~40日)、卵型(16~18日)である。ただし、三日熱では感染後、数ヶ月から1年以上に亘り臨床症状を現さないものもある。熱帯熱は、免疫のない乳児および成人の脳、腎、肺、消化管で、微小血管閉塞と組織虚血を引き起こし、患者は最初の症状出現から数日以内に死亡することがある。三日熱マラリア、卵形マラリア、および四日熱マラリアは、重要臓器を障害しないので死亡は稀である。マラリアは、4類感染症で診断したら直ちに届け出の義務がある。
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診断の手掛 |
流行地(アフリカ、南アジア、東南アジア、中米、南米北部)に滞在した人が、発熱(39~41℃に達し2~6時間後に解熱)、悪寒戦慄(破裂した赤血球からのmerozoite放出によるマラリア発作)、発汗、溶血性貧血、黄疸、脾腫、肝腫大を訴えたら本症を疑う。特に流行地から戻った旅行者が、発熱と悪寒戦慄を訴えたら、帰国後1~2年経過していても直ちに検査すべきである。マラリア発作は、破裂した赤血球からのメロゾイトの放出と同時に起こり、全身倦怠感、突然の悪寒と39~41℃に達する発熱、速くて弱い脈、多尿、頭痛、筋肉痛と悪心で始まる。発熱は、2~6時間後に解熱し、2~3時間に亘り多量の発汗があり、次いで極度の易疲労感を訴える。感染が成立すると、マラリア発作が原虫の種類に応じて2~3日毎に発生するが、その間隔は、厳密ではない。脾腫は、臨床症状の発症後、最初の1週目の終わりまでには触知可能となり、通常は肝腫を伴う。マラリアは、4類感染症で診断したら直ちに届け出の義務がある。
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主訴 |
黄疸|Jaundice 嘔吐|Vomiting 悪寒戦慄|Chill with shivening 悪心|Nausea 肝腫大|Hepatomegaly 筋肉痛|Myalgia 高熱発作|Paroxysmal high fever 食欲不振|Anorexia 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 多尿|Polyuria 発汗異常|Dyshidrosis/Paridrosis 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 脾腫|Splenomegaly 貧血症状|Anemic symptom
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鑑別疾患 |
インフルエンザ|Influenza ウイルス性出血熱 急性肝炎|Acute Hepatitis アメーバ赤痢|Amebic Dysentery 腸チフス|Typhoid Fever デング熱|Dengue 尿路感染症|Urinary Tract Infection(UTI) 肺水腫|Pulmonary Edema 貧血 アメーバ性肝膿瘍
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スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S, /U] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Activated Partial Thromboplastin Time|活性化部分トロンボプラスチン時間 [/P] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Indirect|間接ビリルビン/非抱合型ビリルビン [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Eosinophils|好酸球 [/B, /B] Erythrocytes|赤血球数 [/B] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P, /P] GFR|糸球体濾過量 [/U] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B, /P, /U] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Iron|鉄/血清鉄 [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Lymphocytes|リンパ球 [/B] Monocytes|単球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Phosphate|無機リン [/S] Platelets|血小板 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S, /CSF] Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S] Sodium|ナトリウム [/S, /RBC] Thyroxine (T4)|総サイロキシン/総T4/サイロキシン/チロキシン [/S] TIBC|総鉄結合能 [/S] Tri-Iodothyronine (T3)|総トリヨードサイロニン/総T3/トリヨードサイロニン/トリヨードチロニン [/S] VDRL|性病研究所梅毒検査法/VDRL法 [Positive/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S]
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異常値を示す検査 |
Alanine|アラニン [/P] Anticardiolipin Antibodies|抗リン脂質抗体/抗PL抗体/抗カルジオリピン(CL)抗体/ループスアンチコアグラント(LA)/リン脂質抗体 [/S] Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S] Antiphospholipid Antibodies|抗リン脂質抗体/抗PL抗体/抗カルジオリピン(CL)抗体/ループスアンチコアグラント(LA)/リン脂質抗体 [/S] Basic Fibroblast Growth Factor|塩基性線維芽細胞成長因子 [/S] CA 19-9|CA19-9 [/S] Ceruloplasmin|セルロプラスミン/フェロオキシダーゼ [/S] Ceruloplasmin Ferroxidase|セルロプラスミン/フェロオキシダーゼ [/S] Cold Agglutinins|寒冷凝集反応/寒冷血球凝集反応 [/S] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Complement Fixation [/S] Coombs' Test|クームス試験 [Positive/S] Copper|銅 [/S] Factor II|第II因子活性/プロトロンビン [/P] Factor IV|第IV因子活性/フリーCaイオン [/P] Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [/P] Glycated Protein|糖化蛋白 [/S] Haptoglobin|ハプトグロビン [/S] Hemagglutination Inhibition [/S] HIV-1 RNA|HIV-1 RNA定量/ヒト免疫不全ウイルス1型RNA定量試験 [/S] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] Immunoglobulins|免疫グロブリン [/S] Indirect Fluorescent Antibodies [/S] Intercellular Adhesion Molecule-1|CD54 [/S] Interferon-γ|インターフェロン-γ [/S] Interleukin-10|インターロイキン-10 [/S] Interleukin-4|インターロイキン-4 [/S, /S] Interleukin-4 Receptor|インターロイキン4レセプター [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Interleukin-8|インターロイキン-8 [/S] Ionized Calcium|イオン化カルシウム/Caイオン [/S] Lactate|乳酸/ラクテート [/B] Laminin|ラミニン [/S] Lutein [/S] Lycopene [/S] Lymphotoxin [/S] Macrophage Inflammatory Protein-1α [/S] Malondialdehyde [/CSF] Myoglobin|ミオグロビン [/U] Neopterin|ネオプテリン [/S, /U] Neutrophil Elastase|顆粒球エラスターゼ/好中球エラスターゼ [/S] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/P] Phospholipase A2 Type II [/S] Procalcitonin|プロカルシトニン [/P] Prolactin|プロラクチン/乳汁分泌ホルモン [/P] Protein Casts [/U] Prothrombin Consumption [/B] Plasma Renin Activity|活性型レニン/血漿レニン活性/総レニン [/P] Reticulocytes|網赤血球/レチクロサイト/網状赤血球数 [/B] Retinol|ビタミンA/レチノール [/S] Retinol-binding Protein|レチノール結合蛋白 [/S] Soluble E-Selectin|可溶性E-セレクチン/可溶性CD62E/可溶性ELAM-1 [/S] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S] Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] Soluble Vascular Cell Adhesion Molecule-1|可溶性VCAM-1/可溶性CD106/可溶性血管細胞接着分子-1 [/S] Thrombin Time|トロンビン時間 [/B] Thrombin Antithrombin III Complex|トロンビン・アンチトロンビンIII複合体/トロンビン・アンチトロンビン複合体/TATテスト [/P] Thrombomodulin|トロンボモジュリン [/P] Thyroxine Binding Globulin|サイロキシン結合グロブリン/チロキシン結合グロブリン [/S] Transforming Growth Factor Receptor [/S] Transforming Growth Factor-α [/S] Transforming Growth Factor-β|形質転換成長因子-β/トランスフォーミング増殖因子-β [/S] Transthyretin|トランスサイレチン/プレアルブミン [/S] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] Tumor Necrosis Factor-β|腫瘍壊死因子-β/リンホトキシン [/S] Viscosity|血液粘稠度/血液流体特性検査/血液流体変動能検査 [/S] Vitamin C|ビタミンC/アスコルビン酸 [/S] Volume [/P, /P] α-Carotene [/S] α-Tocopherol [/S] α-Tocopherol:Cholesterol Ratio [/S] β-Carotene|β-カロチン [/S] β-Cryptoxanthin [/S]
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関連する検査の読み方 |
【CBC】 低色素性貧血(250万/μL)を認める。白血球は減少するが、単球は増加する。 【厚層塗抹標本】 血液細胞が重なり合うように、血液をスライドガラス上に15mmの円形に塗抹する。ライト-ギムザ染色後、緩衝水ですすぎ、赤血球を溶血させる。マラリア原虫は赤血球ストロマを背景に認められる。検体採取は発熱発作の前に行う。最初の標本が陰性なら、4~6時間毎に検査を繰り返す。三日熱マラリア、卵型マラリア、四日熱マラリア、熱帯熱マラリアなどは各型にそれぞれ特徴ある所見を示すので、原虫の鑑別もおおむね可能である。三日熱マラリア、卵型マラリアはSchueffre斑点、熱帯熱マラリアはMaurer斑点がみられる。感度は赤血球100万個当たり虫体が2個存在すれば検出可能である。 【ヒスチジンリッチ蛋白-2】 マラリア原虫迅速検査で熱帯熱マラリアが特異的に分泌するヒスチジン・リッチ蛋白-2を検出する。ヒスチジンリッチ蛋白-2に対するモノクローナル抗体を用いたベッドサイド検査で血液塗抹標本に匹敵する感度を持つ。 【骨髄像】 赤血球系の過形成と虫体を含んだ赤血球がみれる。網内系細胞には色素沈着を認める。 【蛋白分画】 アルブミンは減少し、グロブリンは増加する。 【ハプトグロビン】 溶血により著しく低下する。 【ビリルビン】 溶血により間接ビリルビンが増加する。 高値である。 【熱帯熱マラリア原虫】 急性溶血性貧血を発症し、ヘモグロビン尿症や尿細管壊死を合併することがある。 【四日熱マラリア原虫】 急性出血性腎炎を発症することがある。 【生物学的偽陽性反応】 しばしば認められる。 【血清学的検査】 スクリーニングには有用であるが虫体の種類は確定できない。 【間接蛍光抗体法】 高い感度と特異度があり診断に有用である。
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検体検査以外の検査計画 |
胸部X線検査
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