疾患解説
| フリガナ | リウマチネツ |
| 別名 | 急性リウマチ熱 |
| 臓器区分 | 膠原病・免疫疾患 |
| 英疾患名 | Rheumatic Fever |
| ICD10 | I01.9 |
| 疾患の概念 | A群β溶血連鎖球菌による上気道感染の1~3週後に心、関節、皮膚、中枢神経などに非化膿性炎症を生じる病態で、6~8歳の児童に好発し3歳以前と21歳以降は珍しい。わが国では、近年、典型例の発症は少なくなった。この疾患は、関節、心臓、皮膚、中枢神経系が最も多く侵される。関節病変は、滑膜に非特異的炎症像が見られ、ときにアショフ体に似た病巣を伴う。心臓病変は、心炎として発症し、病変は弁および心内膜から始まり、心筋を侵し、最後に心膜へ拡がる。時に、何年かの経過後に慢性リウマチ性心疾患となり、弁狭窄症が発症する。皮下結節は、生検でアショフ体に類似した特徴を示す。輪状紅斑は、全身型若年性特発性関節炎の発疹、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、慢性遊走性紅斑、多形紅斑などと肉眼的に類似するが、組織学的には異なり、真皮の血管周囲に好中球および単核細胞浸潤が見られる。急性リウマチ熱では、シデナム舞踏病を併発することがある。 |
| 診断の手掛 |
連鎖球菌感染後1~3週後に発症する移動性多関節炎、皮下結節、輪状紅斑を見たら本症を疑う。診断ガイドラインは1.主症状:心筋炎、多関節炎、舞踏病、輪状紅斑、皮下結節。2.副所見:関節痛、発熱、ESR亢進、CRP高値、PR時間延長。3.先行A群溶血連鎖球菌感染の証拠のうち3が証明された患者で、主症状2項目または主症状1項目と副症状2項目以上あれば本症の可能性が高い。鑑別診断としては、全身性若年性特発性関節炎、ライム病、反応性関節炎、鎌状赤血球症の関節疾患、白血病やその他の癌、全身性エリテマトーデス、塞栓性の細菌性心内膜炎、血清病、川崎病、薬物反応、淋菌性関節炎などが挙げられる。診断は病歴、診察所見、臨床検査情報をジョーンズ基準に当てはめて行う。 【診断基準:1992年Jones】 1.大基準:心臓炎、移動性多発関節炎、Sydenham舞踏病、皮下結節、輪状紅斑。 2.小基準:発熱、関節痛、急性相反応物質の増加、PR間隔延長 これらに加え最近のA群レンサ球菌感染の証明。 |
| 主訴 |
移動性紅斑|Erythema migrans 関節痛|Arthralgia 胸痛|Chest pain 紅斑|Erythema/Rubedo 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 皮下結節|Subcutaneous nodule 舞踏病様運動|Choreic movement 輪状紅斑|Erythema marginatum |
| 鑑別疾患 |
溶血連鎖球菌感染症 化膿性関節炎 急性糸球体腎炎|Acute Glomerulonephritis 細菌性心内膜炎 若年性関節リウマチ 心外膜炎 心不全|Heart Failure 全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE) 僧帽弁狭窄症 大動脈炎症候群 敗血症|Sepsis 扁桃腺炎 |
| スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [ Anti-Streptolysin O|抗ストレプトリジンO価/抗ストレプトリジン抗体 [ Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [ C-reactive Protein|C反応性蛋白 [ Erythrocytes|赤血球数 [ Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [ Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [ Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [ Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [ Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [ Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [ Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [ Leukocytes|白血球数 [ Neutrophils|好中球 [ Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [ VDRL|性病研究所梅毒検査法/VDRL法 [Positive/S] α1-Globulin|α1-グロブリン [ α2-Globulin|α2-グロブリン [ γ-Globulin|γ-グロブリン [ |
| 異常値を示す検査 |
Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [ Antibody Titer [ Anti-Deoxyribonuclease-B Antibody|抗デオキシリボヌクレアーゼB抗体/抗DNase-B抗体 [ Anti-Hyaluronidase Antibody|抗ヒアルロニダーゼ抗体 [ Casts|円柱 [ Catecholamines|カテコールアミン総 [ CD25+ Lymphocytes [ CD4+ Lymphocytes [ CD4+:CD8+ Lymphocytes Ratio [ Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [ Complement, Total|補体価/CH50 [ Copper|銅 [ Coproporphyrin|コプロポルフィリン [ Cryofibrinogen|クリオフィブリノゲン [ Epinephrine|カテコールアミン総 [ Group A-β Streptococci-Rapid Detection|A群β溶血連鎖球菌迅速試験 [Positive/Specimen] Haptoglobin|ハプトグロビン [ Immunoglobulins|免疫グロブリン [ Interleukin-1α [ Interleukin-2|インターロイキン-2 [ Neopterin|ネオプテリン [ Norepinephrine|カテコールアミン総 [ Vanillylmandelic Acid|バニリルマンデル酸 [ Viscosity|血液粘稠度/血液流体特性検査/血液流体変動能検査 [ |
| 関連する検査の読み方 |
【CBC】 ヘモグロビンが8~12g/dL程度の小球性貧血を認める。白血球は10,000~16,000/μL程度に増加する。 【ESR】【CRP】 本症の活動性に対する高い指標で、しばしば120mm/時を超え、治療により基準範囲内に戻る。CRPはしばしば2mg/dLを超えるが正常化は炎症の消失と考えてよい。 【蛋白分画】 アルブミンは低下。α2、γ-グロブリン、フィブリノゲンは増加。A群溶連菌感染ではα2-グロブリンは増加しない。 【ASO】 増加は最近2ヶ月以内の感染を示し、感染2週後に上昇、4~6週後に最高値に達する。ただし、診断に有意な増加例は、80%にとどまる。急性リウマチ熱患者の95%は、ASOと抗DNasa-B抗体のうち一つ以上が高値である。 【抗DNase-B抗体】 患者の15%以上はASOが上昇しないので同時測定が望ましい。この抗体は皮膚感染後の抗体検出ではASOより優れている。DNase-BはStreptolysin Oと同じ溶血性連鎖球菌が産生する菌体外毒素の一つで、A群溶連菌の殆どの菌株が産生し、C群、G群では一部しか産生しないことから、A群溶血性連鎖球菌に特異性が高い。異常値を認めたらASO、ASK、急性相反応蛋白を測定する。臨床的にはスクリーニング検査としてASOが陽性を示した場合にA群溶血性連鎖球菌の感染をより確実にするために行う。 【抗ヒアルロニダーゼ抗体】 1,000~1,500倍は最近の感染、4,000倍以上ではリウマチ熱の可能性が高い。抗ヒアルロニダーゼは溶血性連鎖球菌の産生する酵素(ヒアルロニダーゼ)に対する抗体で、主としてA群溶血性連鎖球菌の感染診断に用いる。 【A群β溶血連鎖球菌迅速試験】 検出感度は1万~10万CFU/mLである。A群溶血性連鎖球菌感染を疑わせる咽頭炎や扁桃炎の患者の咽頭拭い液を検体として菌体抗原を迅速に検出する検査である。臨床的には迅速に原因菌を確定することで、早期の感染コントロールが可能となる。ただし、検査材料中の菌数が少ない場合は、陰性となる可能性もあるので注意が必要である。また、最近増加が報告されている劇症型溶連菌感染症では、迅速検査の有用性が評価されているので、中高齢者の咽頭炎を見たら積極的に検査を進める。 【咽頭拭い液細菌培養】 A群溶血性連鎖菌と急性期反応(赤沈、 CRP 、白血球)が陽性である。 【関節液一般検査】 炎症性関節液の所見で、白血球は2,000~50,000/μLである。 【尿一般検査】 軽度の熱性アルブミン尿を認める。患者の2.5%は糸球体腎炎を続発する。 |
| 検体検査以外の検査計画 | 心電図検査、心超音波検査、胸部X線検査、冠動脈造影検査 |