疾患解説
フリガナ | カルチノイドショウコウグン |
別名 | |
臓器区分 | 内分泌疾患 |
英疾患名 | Carcinoid Syndrome |
ICD10 | E34.0 |
疾患の概念 | 腸クロム親和性細胞(Kulchitsky細胞)に由来する腫瘍で、セロトニンに代表される多種類の生理活性物質を産生・分泌する。発生部位は消化管(胃、直腸、虫垂、十二指腸、膵)が最多であるが、残りは肺、気管支が多く、胸腺、卵巣などにも発生する。消化管カルチノイドは、肝転移が生じない限り本症候群を引き起こすことはない。これは腫瘍の放出する代謝物が、酵素や肝酵素によって門脈循環中で急速に分解されるからである。肝転移があると、代謝物は肝静脈を経由し分解されないで、循環中に直接放出される。また、肺や卵巣原発のカルチノイドから放出される代謝物は、門脈系を迂回するので、症状を誘発することがある。 |
診断の手掛 | セロトニンは、平滑筋に作用し下痢、仙痛、吸収不良を引き起こす。また、ヒスタミンとブラジキニンは、血管拡張作用を持つので潮紅を来す。症状は頭部あるいは頸部に現れる不快な発作性の潮紅(63~74%)、下痢(68~84%)、腹痛(34%)、喘息様発作(3~18%)などである。これ等の症状は、ストレス、食物(チーズ)、温かい飲料、アルコール飲料、運動などで誘発される。反復性の下痢を伴う腹部痙攣は、しばしば主訴となるので注意が必要である。 |
主訴 |
下痢|Diarrhea 呼吸困難|Dyspnea 喘息様発作|Asthmatoid attack 潮紅|Flush 皮疹|Eruption/Exanthema 皮膚潮紅|Skin flush/Rubedo 腹痛|Abdominal pain 腹部痙攣|Convulsion of abdomen ペラグラ様皮疹|Pellagra-like eruption |
鑑別疾患 |
大腸癌|Cancer of Colon 潰瘍性大腸炎|Ulcerative Colitis 虫垂炎 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma 肥満細胞症|Mastocytosis 腎細胞癌|Renal Cell Carcinoma(RCC) VIP産生腫瘍|VIPoma 甲状腺髄様癌|Medullary Carcinoma of Thyroid |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Platelets|血小板 [/B] Potassium|カリウム [/S] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S] |
異常値を示す検査 |
17-Hydroxycorticosteroids|17-ヒドロキシコルチコステロイド [/U] 5-Hydroxyindoleacetic Acid|5-ヒドロキシインドール酢酸 [/U] Amino Acids|アミノ酸分析/アミノ酸41分画 [/P] BSP Retention|BSP test/ブロムサルファレイン試験 [/S] Calcitonin|カルシトニン [/P] Carbon Dioxide Partial Pressure|動脈血CO2分圧/炭酸ガス分圧/CO2分圧/PCO2/PaCO2 [/B] Carotene|カロチン/プロビタミンA/カロチノイド [/S] Catecholamines|カテコールアミン総 [/U] Chromogranin A|クロモグラニンA [/S,/P] Corticotropin|副腎皮質刺激ホルモン/コルチコトロピン [/P] Cytokeratin 19 Fragment|サイトケラチン19フラグメント/シフラ/シフラ21-1/CYFRA [/S] Fat|脂肪(糞便) [/F] Growth Hormone|成長ホルモン [/P] Histamine|ヒスタミン [/U] Isoleucine|イソロイシン [/P] Lipotropic Hormone|リポトロピン [/P] Lysine|リジン [/P] Methionine|メチオニン [/P] Nicotinic Acid|ナイアシン/ニコチン酸/抗ペラグラ因子 [/B] Pancreatic Polypeptide|膵臓ポリペプチド [/S] pH|尿pH [/B] Proopiomelanocortin|プロオピオメラノコルチン [/P] Prostaglandins|プロスタグランジンD2 [/P] Serotonin|セロトニン/5-ヒドロキシトリプタミン [/B, /Platelets, /U] Substance P|サブスタンスP/ニューロキニンA [/P] Tryptophan|トリプトファン [/P] Valine|バリン [/P] Vitamin A|ビタミンA/レチノール [/S] |
関連する検査の読み方 |
【セロトニン】 全血で230ng/mL以上、尿で0.4μg/mL以上に増加することがある。5-HTは約90%が消化管に、残りが脳と血小板に分布し血管や気管支の平滑筋収縮、消化管運動・分泌調節、知覚・睡眠などへの関与、血小板凝集促進などの作用がある。血中セロトニンの大部分は5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)として尿中に排泄されるので、両者の同時測定が望ましい。臨床的にはCarcinoid症候群を疑う症状を見た場合に測定するが、確定診断のためには5-HIAAが有用である。 【ニコチン酸】 全血総ニコチン酸は低値を示す。 【5-HIAA】 尿中の5-HIAAは著しく増加(50mg/日以上)するが、広範な転移でも基準範囲内のこともある。測定は疾患の進展と予後の推定に有用である。感度73%、特異度100%である。測定前数日は全ての薬物とバナナ、トマト、ナス、アボカド、パイナップルのようなセロトニンの多い食物は摂取しない。5-HIAAはセロトニンの主要代謝産物で、血液中の殆どのセロトニンは5-HIAAとして尿中に排泄される。尿中排泄値が高い場合はCarcinoid症候群が強く示唆され診断的有用性が高い。紅潮を呈するが、5-HIAA排泄の増加していない患者は、全身性の肥満細胞活性症と特発性アナフィラキシーの関与を考える。 【VMA】 尿中VMAは基準範囲内である。 【クロモグラニンA】 患者の50~100%で上昇し、その値はカルチノイド腫瘍の大きさと相関する。同様に神経特異エノラーゼの上昇もしばしば見られる。 クロモグラニンは脳や神経内分泌システム内に神経伝達物質とともに貯蔵されている酸性蛋白で、ホルモン顆粒の産生やホルモン輸送の生理作用を持つ。クロモグラニンAはカテコールアミン顆粒内でカテコールアミン、ATPと複合体を作っている。子の複合体は一つの顆粒に200万個含まれているとされている。褐色細胞腫やカルチノイドなどの神経内分泌腫瘍では、クロモグラニンAが血液中に分泌されるため、神経内分泌腫瘍の好感度マーカーとして有用性がある。 |
検体検査以外の検査計画 | 超音波内視鏡検査、CT検査、MRI検査、超音波検査、ソマトスタチン受容体シンチグラフィ、[11C]5-HTP-PET |