疾患解説
フリガナ | ショクドウガン |
別名 | 悪性腫瘍(食道) |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Esophageal Carcinoma |
ICD10 | C15.9 |
疾患の概念 | 腺癌と扁平上皮癌に分けられるが、わが国では90%が扁平上皮癌であり、喫煙、飲酒、肥満、胃食道逆流症、Barrett食道、アカラシア、腐食性損傷が発症に関与している。腺癌は胃食道逆流症に伴うBarrett食道由来が増加しつつある。50~70歳が好発年齢で、男女比は3:1である。発生部位は食道上部1/3が15%、中部1/3が40%、下部1/3が45%である。下部は腺癌、上部、中部は扁平上皮癌が多い。扁平上皮癌の主なリスクファクターは、飲酒と喫煙であるが、その他の因子としてアカラシア、ヒトパピローマウイルス、アルカリ溶液誤飲、硬化療法、プラマー-ビンソン症候群、食道へのX線照射、食道ウェブなどが挙げられる。遺伝学的には、常染色体優性遺伝疾患である掌蹠角化症患者での食道癌の発生が45歳までに50%、55歳までには95%に認められる。腺癌は下部食道に発生し、リスクファクターは喫煙で、アルコールはリスクファクターではない。殆どの腺癌はバレット食道から発生するが、この病態は慢性の胃食道逆流症によって引き起こされる。食道癌の3%は転移癌であり、転移する癌としては、黒色腫と乳癌が最も頻度が高く、その他、頭頸部癌、肺癌、胃癌、肝癌、腎癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨腫瘍などがある。 |
診断の手掛 | 進行性の嚥下障害と体重減少を訴える患者を診たら本症を疑う。嚥下障害は、食道の内径が14mm未満に狭窄(食道周囲の60%以上に浸潤が見られる)すると発症し、最初に固形物、次に半固形物、最後に流動食及び唾液を飲み込むのが困難になる。食欲が良好でも、ほぼ全ての患者に体重減少がみられる。また、反回神経の圧迫により嗄声や声帯麻痺が初発症状のこともある。交感神経の圧迫はホルネル症候群を発症することがあり、他の神経圧迫は、脊髄痛、吃逆または横隔膜麻痺をもたらす場合がある。Barrett食道を有する患者は、定期的に内視鏡検査や細胞診を行う。この疾患にはスクリーニング検査はないので、疑いのある患者は、全て内視鏡検査、細胞診および生検を行うべきである。 |
主訴 |
嚥下障害|Dysphagia 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 胸骨後部異常感|Infrasternal dysesthesia/Retrosternal dysesthesia 狭窄感|Constriction 胸痛|Chest pain 嗄声|Hoarseness 咳|Cough 体重減少|Weight loss 痰|Sputum 通過障害感|Feeling of Obstruction 貧血症状|Anemic symptom やせ|Weight loss |
鑑別疾患 |
胃食道逆流症|Gastroesophageal Reflux 異所性胃粘膜 食道炎|Esophagitis 食道静脈瘤|Esophageal Varices Mallory-Weiss症候群 食道アカラシア 下咽頭癌 横隔膜ヘルニア |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Calcium|カルシウム [/S] CEA|癌胎児性抗原 [/AsF, /PeF, /PlF, /S] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Leukocytes|白血球数 [/B] Lymphocytes|リンパ球 [/B] Monocytes|単球 [/B] Phosphate|無機リン [/S] Uric Acid|尿酸 [/S] |
異常値を示す検査 |
Aldolase|アルドラーゼ/アルドラーゼアイソザイム [/S] Anti-p53 Antibodies|抗p53抗体 [Positive/S] CA 19-9|CA19-9 [/S] CA 195 [/S] CA 242 [/S] CA 50|CA50 [/S] CA 72-4|CA72-4 [/S] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Complement C4|補体第4成分/β1Eグロブリン/C4 [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S] Copper Zinc Superoxide Dismutase|スーパーオキサイドディスムターゼ/スーパーオキサイドジスムターゼ [/S] Epidermal Growth Factor|上皮細胞増殖因子/上皮細胞成長因子 [/U] Galactosyltransferase Isoenzyme II [/S] Hexokinase|ヘキソキナーゼ(赤血球) [/S] Laminin|ラミニン [/S] Metallopanstimulin [/S] Occult Blood|潜血反応(便)/グアヤック法/o-トリジン法/ラテックス凝集法 [/F] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/P] Parathyroid Hormone 1-84|副甲状腺ホルモン1-84 [/P] Parathyroid Hormone-related Peptide|副甲状腺ホルモン関連蛋白 [/P] Sialyltransferase [/S] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/P] Squamous Cell Carcinoma Antigen|扁平上皮癌関連抗原/SCC抗原 [Positive/S] Urokinase Plasminogen Activator|ウロキナーゼプラスミノゲンプロアクチベータ [/Tissue] |
関連する検査の読み方 |
【Ca】 末期癌で高値のことがある。 【p53遺伝子】 遺伝子変異を認める。p53遺伝子の変異はヒトのあらゆる組織の腫瘍で認められる。変異は多くの場合17番染色体短腕(17p)の一方のアレル欠失と点突然変異である。この遺伝子の変異はヒトのあらゆる組織由来の腫瘍で認められる。臨床的には癌の悪性度の評価や予後推定に有用である。 【SCC抗原】 高値のことがある。SCC抗原は健常者の血中にもわずかに存在するが、子宮頸部、肺、食道、頭頸部などの扁平上皮癌患者血清中に多量に出現する。臨床的には子宮頸部扁平上皮癌のマーカーとして高い陽性率を示し、しかも腺癌、未分化癌、子宮体癌、卵巣癌の陽性率が低いことから子宮頸癌マーカーとして有用性が高い。 【可溶性ICAM-1】 高値である。sICAM-1は免疫担当細胞、血管内皮細胞、癌細胞などに発現し免疫担当細胞との接着、白血球の血管外遊出、Tリンパ球の活性化などに関与している。生理的には自己免疫、感染、腫瘍の浸潤、アレルギーなどでもたらされる炎症性病態に深くかかわっている。臨床的には炎症性疾患の活動性の評価、癌侵潤の程度推定などに用いる。 【抗p53抗体】 高値である。p53はアポトーシス誘導、遺伝子修復、細胞周期回転抑制などの生理機能を持ち、癌抑制遺伝子としての働きを持つ。胃、大腸、食道、肺、脳などの多くの悪性腫瘍ではp53遺伝子が変異により失活し、変異p53蛋白が産生され抗p53抗体が出現する。抗p53抗体は癌細胞特異抗原に対する抗体であること、癌細胞が微量であっても検出が可能なことから、臨床的には癌の早期発見と再発モニタリングに有用とされている。陽性の場合は病理組織検査で腫瘍細胞のp53遺伝子変異の有無を確認する。 【食道洗浄液細胞診】 陽性率は75%以上である。 【組織ポリペプチド抗原】 増加することがあるが組織特異性はない。 【AST】【ALT】【ALP】 活性値の上昇は肝や骨への転移を考える。 【細胞診・生検】 疑わしい患者すべてに行う。 |
検体検査以外の検査計画 | X線検査、内視鏡検査、胸部・腹部CT検査、超音波内視鏡検査、FDG-PET |