疾患解説
フリガナ | トクハツセイケッショウバンゲンショウセイシハンビョウ |
別名 |
免疫性血小板減少症 自己免疫性血小板減少性紫斑病 |
臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
英疾患名 | Idiopathic Thrombocytopenic Purpura(ITP) |
ICD10 | D69.3 |
疾患の概念 | 全身性疾患と関連のない血小板減少が原因の出血性疾患で、血小板に対する自己抗体により血小板が減少し、出血傾向を来す、後天性の血小板減少症である。急性型は小児に多く、6ヶ月以内に治癒するが、成人(20~40歳代の女性)では、血小板減少が遷延する慢性型が多く、出血傾向を繰り返す。妊娠中に悪化する傾向があり、母体の合併症発症のリスクが高い。患者の10%は自己免疫性溶血性貧血(エヴァンズ症候群)を合併している。 |
診断の手掛 |
原因不明の血小板減少症があれば本症を疑う。臨床的には点状出血、粘膜出血、歯肉出血、鼻出血、性器出血などが見られる。発症の1~3週間前にウイルス感染症に罹患していることが多いので、慎重に既往歴を聞く。ただし、血小板数が5万/μL以上あれば出血傾向は見られない。HIVに関連した血小板減少は、ITPとの鑑別が困難なため、HIV感染のリスクのある患者は、HIV検査が必要である。 【診断基準:2015年血液凝固異常症に関する調査研究班】 1.自覚症状・理学所見:出血症状がある。出血症状は紫斑(点状出血及び斑状出血)が主で、歯肉出血、鼻出血、下血、月経過多などもみられる。関節出血は通常認めない。出血症状は自覚していないが血小板減少を指摘され、受診することもある。 2.検査所見:(1)末梢血:①血小板減少、血小板100,000/μL以下。②赤血球及び白血球は数、形態ともに正常、時に失血性又は鉄欠乏性貧血を伴い、また軽度の白血球増減をきたすことがある。(2)骨髄:①骨髄巨核球数は正常ないし増加、巨核球は血小板付着像を欠くものが多い。②赤芽球、顆粒球の両系統は数、形態ともに正常、M/E比は正常で、全体として正形成を呈する。(3)免疫学的検査:血小板結合性免疫グロブリン(PAIgG)増加、時に増加を認めないことがあり、他方、ITP以外の血小板減少症でも増加を示しうる。 3.血小板減少をきたす可能性のある各種疾患を否定できる。 4.診断:1および2の特徴を備え、更に3の条件を満たせばITPの診断を下す。 |
主訴 |
歯肉出血|Gingival bleeding/Ulorrhagia 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 性器出血|Genital bleeding 粘膜出血|Submucous bleeding 皮膚点状出血|Petechia hemorrhage of skin 皮膚斑状出血|Eccimosis of skin 鼻出血|Nosebleed/Nasal hemorrhage/Epistaxis 不正出血|Abnormal bleeding |
鑑別疾患 |
B型肝炎|Hepatitis B C型肝炎|Hepatitis C EDTA依存性偽血小板減少症 HIV感染症 転移性骨髄腫瘍 造血器悪性腫瘍 エイズ/HIV感染症|Acquired Immune Deficiency Syndrome(AIDS) 巨赤芽球性貧血|Megaloblastic Anemia 血小板減少症|Thrombocytopenia 血栓性血小板減少性紫斑病|Thrombotic Thrombocytopenic Purpura(TTP) 骨髄異形成症候群|Myelodysplastic Syndrome 再生不良性貧血|Aplastic Anemia 播種性血管内凝固症候群|Disseminated Intravascular Coagulation(DIC) 発作性夜間血色素尿症|Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria(PNH) 全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE) 肝硬変|Cirrhosis of Liver 抗リン脂質抗体症候群 Bernard-Soulier症候群 Wiskott-Aldrich症候群 ヘノッホ-シェーンライン紫斑病|Henoch-Schönlein Purpura 薬剤性血小板減少 |
スクリーニング検査 |
Eosinophils|好酸球 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S, /S] Leukocytes|白血球数 [/B] Lymphocytes|リンパ球 [/B] MCV|平均赤血球容積 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B] TIBC|総鉄結合能 [/S] Thyroid Stimulating Hormone|甲状腺刺激ホルモン [/S] |
異常値を示す検査 |
Acid Phosphatase|酸性ホスファターゼ [/S] Bleeding Time|出血時間 [/Patient] Capillary Fragility|毛細血管抵抗試験 [/B] Cells [/Bone Marrow] Clot Retraction|血餅退縮能 [/B] Coombs' Test|クームス試験 [Positive/S] Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [/P] LE Cells|LE細胞/LE現象 [Positive/B] Mean Platelet Volume|平均血小板容積 [/Platelets] Platelet Survival|血小板寿命/血小板回転 [/B] Prothrombin Consumption [/B] Reticulocytes|網赤血球/レチクロサイト/網状赤血球数 [/B] Thrombopoietin|トロンボポエチン [/P] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 血小板は1万/μL以下に低下する。骨髄の巨核球の数と大きさは、正常または増加、血小板以外の血球数は、基準範囲内である。また、血小板数の減少は、SLEの初期症状であることもあるので、一度は抗核抗体検査をする必要がある。 【血液像】 赤血球、白血球の形態は正常である。 【骨髄像】 通常は正常であるが、巨核球の増加を認めることがある。診断には必要ないが、慢性ITPの患者は定期的に骨髄をチェックする。 【PT】【APTT】 基準範囲内である。 【血小板第4因子】 低値である。PF4は血小板α顆粒に含まれる血小板固有の蛋白で血小板が活性化すると血中に放出される。放出されたPF4は血管内皮のヘパリン様物質に結合し数分で消失する。血中のPF4の増加は、血小板活性の亢進、凝固の亢進などの病態が原因と考えられので、臨床的には血栓症の診断と治療効果判定、血栓形成準備状態の予知に用いられる。 【血小板表面IgG】 高値である。血小板減少を来す疾患を見た場合に抗血小板抗体の存在を確認するための検査で、血小板に直接結合している抗体を見る場合と血清中に存在する抗体を見る方法がある。PA-IgGは、特に特発性血小板減少性紫斑病で高値になることから診断に有用とされている。 【血餅退縮能】 血餅退縮能は不良である。ガラス試験管に一定量の全血をとり、一定時間放置して凝固させ、出来た血餅を取り出し残った血清量を測定し血餅量と血餅収縮度を算出して血小板機能を推測する検査である。 【抗血小板抗体】 陽性になるが、感度と陰性的中率が低いため診断に役立たない。APAには輸血や妊娠後にみられる抗血小板同種抗体(PA-IgG)と抗血小板自己抗体(PB-IgG)がある。抗血小板自己抗体が存在すると、血小板輸血を行っても血小板が増加しない。この状態を血小板輸血不応状態と呼び、検出される抗体の多くは抗HLA抗体である。このため、血小板不応状態の患者に血小板輸血をする場合は、HLA型を判定し適合するHLA型の供血者からの血小板を使用する。 |
検体検査以外の検査計画 |