疾患解説
フリガナ | イエン |
別名 | |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Gastritis |
ICD10 | K29.7 |
疾患の概念 | 胃炎は急性粘膜病変、急性胃炎、慢性萎縮性胃炎の3種に分けられる。急性胃炎は機械的・化学的刺激、細菌や毒素の刺激で起こる胃粘膜の急性障害である。慢性胃炎は胃粘膜の組織的障害が持続する病態である。原因はHelicobacter pylori感染、薬物、ストレス、自己免疫疾患等が認められている。胃炎は症候上、1.びらん性胃炎 2.非びらん性胃炎 3.胃切除後胃炎 4.稀な胃炎症候群(メネトリエ病、好酸球性胃炎、MALTリンパ腫、全身性疾患による胃炎、物理的要因による胃炎、感染性胃炎)に分類される。 |
診断の手掛 | 胃炎には特異的な臨牀症状が無く、多くは無症状であるが、消化不良、悪心、嘔吐などの消化器症状を訴える患者を診たら内視鏡検査で確認する必要がある。患者が受診する最初の切っ掛けは吐血、下血などの消化管出血が多い。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 下血|Melena 消化管出血|Gastrointestinal bleeding 消化不良|Dyspepsia 食欲不振|Anorexia 上腹部痛|Upper abdominal pain 吐血|Hematemesis 腹痛|Abdominal pain 腹部不快感|Abdominal discomfort 腹部膨満感|Sense of Abdominal fullness 胸焼け|Heartbum/Pyrosis |
鑑別疾患 |
胃癌|Gastric Cancer アルコール依存症|Alcoholism 胃MALTリンパ腫 胃潰瘍 狭心症|Angina Pectoris クローン病|Crohn's Disease 結核 サイトメガロウイルス感染症|Cytomegalovirus Infection サルコイドーシス|Sarcoidosis 住血吸虫症|Schistosomiasis 早期胃癌 梅毒|Syphilis ヘリコバクターピロリ感染症|Helicobacter Pylori Infection ゾリンジャー-エリソン症候群|Zollinger-Ellison Syndrome シェーグレン症候群|Sjogren's Syndrome 胆石症|Cholecystolithiasis |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] CEA|癌胎児性抗原 [/S] Eosinophils|好酸球 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/Gastric Material] Leukocytes|白血球数 [/B] MCH|平均赤血球ヘモグロビン量 [/B] MCHC|平均赤血球ヘモグロビン濃度 [/B] MCV|平均赤血球容積 [/B, /B] Neutrophils|好中球 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S, /F] TIBC|総鉄結合能 [/S] |
異常値を示す検査 |
Antibody Titer [/S] Anti-Intrinsic Factor Antibody|抗内因子抗体/抗胃抗体 [Positive/S] Antithyroglobulin Antibodies|抗サイログロブリン抗体/サイロイドテスト [/S] CA 72-4|CA72-4 [/S] Gastrin|ガストリン [/S] Gastrin Stimulation Test|ガストリン刺激試験/胃分泌刺激テスト [/Gastric Fluid] Helicobacter Pylori Antibodies|ヘリコバクター・ピロリ抗体/抗ヘリコバクター・ピロリ抗体 [/S] Helicobacter Pylori Stool Antigen|ヘリコバクター・ピロリ便中抗原/便中ヘリコバクターピロリ抗原 [Positive/Feces] Hydrochloric Acid [/Gastric Fluid] Iron Saturation|鉄飽和度 [/S] Occult Blood|潜血反応(便)/グアヤック法/o-トリジン法/ラテックス凝集法 [/F] Parietal Cell Antibodies|抗胃壁細胞抗体/胃壁細胞抗体 [Positive/S] Pepsin|ペプシン [/Gastric Material] Pepsinogen|ペプシノゲン [/S] Pepsinogen I|ペプシノゲンI/血清ペプシノゲンI [/S] Pepsinogen II|ペプシノゲンII/血清ペプシノゲンII [/S] pH|尿pH [/Gastric Material, /Gastric Material] Urea Nitrogen:Creatinine Ratio|尿素窒素:クレアチニン比 [/S] Uropepsinogen [/U] Vitamin B12|ビタミンB12/コバラミン/シアノコバラミン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 鉄欠乏や栄養吸収不良による貧血を認めることがある。 【胃液一般検査】 粘液が増加する。慢性胃炎と萎縮性胃炎は胃酸分泌能が低下して無酸~低酸になる。 【ガストリン】 酸分泌能の間接的な指標として測定する。無酸症がある慢性胃炎で著しく増加する。 【ガストリン刺激試験】 分泌の亢進を認める。ガストリンは最も生理的で強力な胃酸分泌刺激物質で、胃分泌能が把握できる。 【抗胃壁細胞抗体】 自己免疫性胃炎(A型胃炎)の判定に用いる。胃壁細胞はガストリン、ヒスタミン、アセチルコリンの刺激を受け胃酸分泌を行う細胞で、胃主細胞に次いで多い細胞である。この胃壁細胞に対する自己抗体がPCAで悪性貧血と萎縮性胃炎が疑われる場合に測定される。特に悪性貧血では、この抗体と内因子抗体が産生される。抗胃壁細胞抗体の陽性率は75~100%と高いが健常者でも10%以下、高齢者では10~15%程度である。この抗体が陰性で、かつ血清ペプシノゲン値が低値の場合は胃癌のリスクが高いという報告があるので注意する。 【抗内因子抗体】 自己免疫性胃炎(A型胃炎)の判定に用いる。高度な萎縮性胃炎で陽性になる。内因子は胃壁細胞から分泌され、ビタミンB12と結合し回腸で吸収されるため、ビタミンB12吸収に必須の物質である。IF-ABは内因子に対する自己抗体で,ビタミンB12と内因子の結合を阻害するI型抗体と内因子と回腸の内因子受容体との結合を阻害するII型抗体に分けられる。臨床的には悪性貧血の診断に高い有用性がある。悪性貧血の診断では抗胃壁細胞抗体も用いられているが、抗内因子抗体のほうが特異性が高く、I型抗体の陽性率は70%程度とされているが、II型抗体の陽性率は40%程度である。 【ヘリコバクター・ピロリ】 慢性胃炎と消化性潰瘍の患者の80%に感染が認められる。生検、染色、培養、ウレアーゼテスト、抗体価測定で確認する。 【ヘリコバクター・ピロリ便中抗原】 感染の有無を確認する。ポリクローナル抗体を用い複数のヘリコバクター・ピロリ抗原を認識出来るキットによる迅速検査で、自宅で採取した糞便中の抗原の検出も可能である。臨床的には除菌治療の効果判定に尿素呼気試験と共に推奨され、特に尿素呼気試験が困難な小児などで有用性が高い。 【ヘリコバクター・ピロリ抗体】 ヘリコバクター・ピロリの感染と感染既往を知るための検査で、内視鏡を必要としないヘリコバクター・ピロリの感染診断に用いられる。ただし、ヘリコバクター・ピロリの診断にGold Standardとなる検査法はないため、胃生検培養、糞便中の抗原、迅速ウレアーゼ試験、尿素呼気試験など複数の検査の組み合わせが必要である。この検査はまた、ヘリコバクターの除菌治療モニタリングとしての有用性もある。 【ビタミンB12】 萎縮性胃炎で低値のことがある。 【ペプシノゲンI】【ペプシノゲンII】 萎縮性胃炎で低値を示す。 【葉酸】 無酸性胃炎で赤血球葉酸が低値を示す。 【薬剤】 治療薬、特にNSAIDs服用の有無を確認する。 |
検体検査以外の検査計画 | 胃X線検査、上部消化管内視鏡検査 |