疾患解説
フリガナ | ジュウケツキュウチュウショウ |
別名 |
ビルハルツ住血吸虫症 日本住血吸虫症 |
臓器区分 | 寄生動物疾患 |
英疾患名 | Schistosomiasis |
ICD10 | B65.9 |
疾患の概念 | 経皮的に侵入し、血管内に寄生する吸虫によって発症する熱帯感染症で、汚染された淡水中での遊泳または歩行により経皮的に感染する。流行地への旅行や感染外国人の来日によつて患者数が増加している。ヒトへの感染は、尿路住血吸虫のビルハルツ住血吸虫、腸管住血吸虫の日本住血吸虫、メコン住血吸虫、マンソン住血吸虫が大部分である。川や水田などに生息する感染型のセルカリアが経皮感染し、1~2ヶ月の潜伏期を経て発症する。日本住血吸虫の病原巣はイヌ、ネコ、齧歯類、ブタ、ウマ、ヤギで、発生地は主に中国、フィリピン、タイ、インドネシアである。日本住血吸虫およびマンソン住血吸虫の成虫は、腸間膜の細静脈内に、また、ビルハルツ住血吸虫は、膀胱の細静脈内に寄生する。虫卵は、腸管あるいは膀胱粘膜から便中または尿中に排出され、排出された虫卵は淡水中で孵化してミラシジウムを放出し、巻貝に侵入し、スポロシストを経てセルカリアになる。水中に放出されたセルカリアは、皮膚からヒトの体内に侵入して幼住血吸虫に変態し、血流に入り肝臓に到達し成虫になる。その後、成虫は最終的な生息部位である腸管静脈または膀胱の静脈叢に移行する。 |
診断の手掛 | 自覚症状、他覚症状に乏しいので、流行地に生活歴がある人や渡航歴がある人が、原因不明の皮膚紅斑、下痢、食欲不振、全身倦怠感、腹痛などを訴えたら本症を疑う。流行地への旅行歴、湖水や川の水との接触、淡水魚の摂取を確認する。帰国した旅行者に認められる臨牀症状のセルカリア皮膚炎(片山熱)を見逃さない。殆どの感染は無症状で、過去に感作されている患者は、セルカリアが通過した部位の皮膚にそう痒を伴う丘疹が見られることがある。片山熱は大量曝露後2~4週間後に産卵の開始と共に、発熱、悪寒、咳嗽、悪心、腹痛、全身倦怠感、筋肉痛、蕁麻疹、好酸球増多などの症状を発症し、流行地域の住民よりも外来者に発症の頻度が高い。慢性住血吸虫症は、主として組織内に残った虫卵に対する宿主反応で発症するが、初期には、マンソン住血吸虫や日本住血吸虫による腸管粘膜の潰瘍からの出血として血性下痢を見るが、病変の進行により腸管の限局性線維化、狭窄、瘻孔および乳頭腫状増殖が起こることもある。マンソン住血吸虫および日本住血吸虫が、肝に寄生すれば、虫卵に対する肉芽腫性反応が起こるが、この場合は、肝線維症や肝硬変を引き起こすこし、門脈圧亢進症を発症することがある。ビルハルツ住血吸虫では、膀胱壁の潰瘍により排尿困難、血尿および頻尿を見ることがある。 |
主訴 |
黄疸|Jaundice 肝腫大|Hepatomegaly 丘疹状紅斑|Erythema papulatum 血性下痢|Bloody diarrhea 血尿|Hematuria 下痢|Diarrhea 紅斑|Erythema/Rubedo 咳|Cough 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 痰|Sputum 吐血|Hematemesis 排尿障害|Urinary disturbance/Dysuria 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 脾腫|Splenomegaly 腹水|Ascites 腹痛|Abdominal pain 門脈圧亢進症状|Portal hypertension やせ|Weight loss リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
ウイルス性肝炎|Viral Hepatitis マラリア|Malaria 内臓リーシュマニア症 細菌性膀胱炎 尿管結石症 悪性腫瘍 肝膿瘍|Liver Abscess 門脈圧亢進症 肝硬変|Cirrhosis of Liver 膀胱腫瘍 肝線維症|Hepatic Fibrosis 肺肉芽腫症 てんかん|Epilepsy 肺高血圧症 肺性心|Cor Pulmonale 横断性脊髄炎 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Calcium|カルシウム [/U] Eosinophils|好酸球 [/B] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Leucine Aminopeptidase|ロイシンアミノペプチダーゼ [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Phosphate|無機リン [/U] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
5'-Nucleotidase|5'-ヌクレオチダーゼ [/S] BSP Retention|BSP test/ブロムサルファレイン試験 [/S] Complement Fixation [/S] Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [/U] Hemagglutination Inhibition [/S] Histamine|ヒスタミン [/P] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] Lactate Dehydrogenase Isoenzymes|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S] Mucopolysaccharides|酸性ムコ多糖分画/コンドロイチン硫酸分画/グリコサミノグリカン分画 [/U] Neopterin|ネオプテリン [/S] Oligoclonal Banding|オリゴクローナルバンド [/CSF] Ornithine Carbamoyl Transferase|オルニチンカルバミルトランスフェラーゼ [/S] Procollagen Type III Peptide|プロコラーゲンIIIペプチド [/S] Sorbitol Dehydrogenase|ソルビトール脱水素酵素 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 好酸球が急性期には増加するが、慢性期は基準範囲内である。好中球は低下し1,000/μL以下である。 【胆汁一般検査】 肝吸虫では虫卵を認めることがある。 【日本住血吸虫抗体検査】 日本住血吸虫のスクリーニング検査としては、multi-dot ELISAが優れている。 【虫卵周囲沈降反応】 活動性の感染に有用な検査である。 【尿一般検査】 ビルハルツ住血吸虫卵やミラシジウム(有毛幼虫)がみられる。同時に血尿、蛋白尿を認める。 【糞便虫卵】【寄生虫】 虫卵(日本住血吸虫、マンソン住血吸虫、ビルハルツ住血吸虫)を認める。日を変えて数回繰り返す必要がある。 【直腸生検】 日本住血吸虫やマンソン住血吸虫では直腸粘膜内に虫卵や石灰化した虫卵を認めることがある。 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、上部消化管内視鏡検査 |