疾患解説
フリガナ | ネッチュウショウ |
別名 | 熱射病 |
臓器区分 | 救急疾患 |
英疾患名 | Heatstroke |
ICD10 | T67.9 |
疾患の概念 | 暑熱環境での身体適応障害で起る状態の総称である。日常生活の中で発症するのを古典的熱中症、スポーツなどの負荷が加わって発症するものを労作性熱中症と呼ぶ。体温調節機構が機能しなくなり、深部体温が大きく上昇した場合に発症する。炎症性サイトカインが活性化すると多臓器不全を来す。熱中症(heat illness)には、筋痙攣(muscle cramps)および熱疲労(heat exhaustion)から生命を脅かす緊急事態の熱射病(heatstroke)まで、様々な重症度の疾患が含まれる。熱疲労の患者は、熱を放散する能力を維持しており、中枢神経系機能は正常である。熱射病では、熱を放散するための代償機序が機能しなくなり、発汗が認められていても中枢神経系機能が障害されている。高体温、精神状態の変化やその他の中枢神経系機能障害がある患者では、発汗にかかわらず、熱射病を考慮すべきで、迅速かつ効果的に治療されないと死亡率は80%近くになる。高齢者および小児は熱中症の発症リスクが高い。高齢者は、リスクを高める薬剤の使用頻度が高い、脱水や心不全の発症率が高い、加齢に関連する熱ショック蛋白の喪失などで、発症のリスクがより高くなる。小児は、身体の容積に対する体表面積の比率が高く、その結果として、暑い日に取り込む熱が大きいこと、また、汗を産生する速度が遅いためリスクが高い。 |
診断の手掛 | 特徴的な中枢神経機能障害による頻脈、頻呼吸、錯乱、せん妄、皮膚乾燥などの症状が見られ、体温が40~46℃を超える患者を診たら本症を疑う。頻脈は患者が仰臥位であっても発生するという特徴がある。通常よりも高い気温または湿度の中での運動をしていた場合や、抗コリン剤(抗ヒスタミン剤を含む)、抗Parkinson病薬、利尿薬、フェノチアジン系薬物服用者は特に注意する。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 筋肉痙攣|Spasm of muscles 筋肉痛|Myalgia 下痢|Diarrhea 高熱|High fever/Hyperthermia 昏睡|Coma 昏迷|Stupor 錯乱|Confusion 失神|Syncope せん妄|Delirium 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 発汗異常|Dyshidrosis/Paridrosis 皮膚乾燥|Xeroderma 頻呼吸|Tachypnea 頻脈|Tachycardia 腹痛|Abdominal pain めまい|Dizziness |
鑑別疾患 |
悪性症候群 褐色細胞腫|Pheochromocytoma 急性心筋梗塞|Acute Myocardial Infarction(AMI) 甲状腺クリーゼ|Thyroid Crisis 腎不全 髄膜炎|Meningitis 糖尿病性昏睡 脳炎|Encephalitis 脳血管障害 脳膿瘍|Brain Abscess 敗血症|Sepsis 薬物中毒 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Calcium|カルシウム [/S] Chloride|クロール [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Phosphate|無機リン [/S, /S] Platelets|血小板 [/B] Potassium|カリウム [/S, /S] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S] Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] Uric Acid|尿酸 [/S] |
異常値を示す検査 |
Aldosterone|アルドステロン [/P] Bleeding Time|出血時間 [/Patient] BSP Retention|BSP test/ブロムサルファレイン試験 [/S] Clotting Time|全血凝固時間 [/B] Factor VIII|第VIII因子活性/抗血友病因子 [/P] Ketones|ケトン体定性 [/S, /U] Lactate Dehydrogenase Isoenzyme-1|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S] Lactate Dehydrogenase Isoenzyme-2|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S] Lactate Dehydrogenase Isoenzyme-4|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S] Lead|鉛 [/B] Myoglobin|ミオグロビン [/U] Plasma Renin Activity|活性型レニン/血漿レニン活性/総レニン [/P] Volume [/P, /U] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【AST】【ALT】【LD】 ASTは基準範囲の20倍、ALTは10倍、LDは5倍に増加し、3日目にピークに達し2週間で基準範囲内に戻る。 【CK-MMアイソザイム】 重症度に比例し、著しく高値になれば致命的な結果を考える。 【酸塩基平衡】 初期は呼吸性アルカローシスであるが、後に乳酸アシドーシスと高K血症である。 【浸透圧】 著しく増加する。 【腎機能検査】 腎機能は軽度の蛋白尿から、高窒素血症や急性乏尿性腎不全に至るものまで様々である。 【DICの発症】 重症例で発症する。 【臓器機能評価】 CBC、PT、APTT、UN、クレアチニン、Caを測定する。 |
検体検査以外の検査計画 | 心電図検査、深部体温連続モニタリング |