疾患解説
フリガナ | ゲンパツセイマクログロブリンケッショウ |
別名 |
Waldenstromマクログロブリン血症 マクログロブリン血症 |
臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
英疾患名 | Waldenstrom's Macroglobulinemia |
ICD10 | C88.0 |
疾患の概念 | IgM産生細胞(B細胞)が腫瘍性に増殖し、血液中に単クローン性のマクログロブリンが増加することにより、血液過粘稠、出血、反復性感染症、全身性リンパ節腫脹などの様々な症候を来す疾患で、60歳代に好発し男女比は2:1である。この疾患は、単クローン性免疫グロブリン血症を伴う悪性疾患としては骨髄腫の次に2番目に多い。臨床像は、血漿中に分子量の大きい単クローン性のIgM蛋白が大量に出現することによるが、殆どの患者は、IgM高値に関連する問題は生じない。IgMの一部はリウマトイド因子や寒冷凝集素であり、約10%はクリオグロブリンである。 |
診断の手掛 | 血漿粘稠度が高いか、過粘稠度症候群によると思われる症状(易疲労感、全身倦怠感、筋力低下、皮膚出血、粘膜出血、視力障害、頭痛、末梢神経障害)を訴える患者で、特に貧血がある場合は本症を疑う。寒冷感受性、レイノー現象、再発性の細菌感染症、心不全などの症状も診断の手掛かりになる。また、多くの患者で、肝・脾腫、リンパ節腫大、網膜静脈の分節化と拡張が認められる。患者の5%が、続発性アミロイドーシスを発症するので注意する。 |
主訴 |
易感染性|Susceptibility to infection 意識障害|Memory impaiment 易疲労感|Fatigue 肝腫大|Hepatomegaly 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 出血斑|Ecchymosis 視力障害|Blurred vision/Visual impairment 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 脾腫|Splenomegaly 貧血症状|Anemic symptom めまい|Dizziness リンパ節腫脹|Lymphadenopathy レイノー現象|Raynaud phenomenon |
鑑別疾患 |
悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma 過粘稠度症候群 多発性骨髄腫|Multiple Myeloma 貧血 慢性リンパ性白血病|Chronic Lymphocytic Leukemia(CLL) |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Basophils|好塩基球 [/Bone Marrow] Eosinophils|好酸球 [/B] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Lymphocytes|リンパ球 [/B, /Bone Marrow] Monocytes|単球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S, /U] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] Uric Acid|尿酸 [/S] VDRL|性病研究所梅毒検査法/VDRL法 [Positive/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
Acid Phosphatase|酸性ホスファターゼ [/WBC] Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S] Antithyroglobulin Antibodies|抗サイログロブリン抗体/サイロイドテスト [/S] Bence-Jones Protein|ベンスジョーンズ蛋白 [Present/U] Bleeding Time|出血時間 [/Patient] Calprotectin|カルプロテクチン [/P] Cells [/Bone Marrow] Chylomicrons [/S] Clot Retraction|血餅退縮能 [/B] Cold Agglutinins|寒冷凝集反応/寒冷血球凝集反応 [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S] Cryofibrinogen|クリオフィブリノゲン [/P] Cryoglobulins|クリオグロブリン [/S] Erythrocyte Survival|赤血球寿命 [/RBC] Factor II|第II因子活性/プロトロンビン [/P] Factor V|第V因子活性/不安定凝固因子/プロアクセレリン/Acグロブリン [/P] Factor VII|第VII因子活性/安定因子/プロコンバーチン [/P] Factor VIII|第VIII因子活性/抗血友病因子 [/P] Factor X|第X因子活性/シュチュワート・プロワー因子 [/P] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Plasma Cells|形質細胞 [/Bone Marrow] Prothrombin Consumption [/B] Thrombin Time|トロンビン時間 [/B] Thromboplastin Time [/B] Viscosity|血液粘稠度/血液流体特性検査/血液流体変動能検査 [/S] VLDL-Cholesterol [/S] Volume [/P] β2-Macroglobulin [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 白血球は減少、リンパ球は増加するが、リンパ性白血病の所見は認めない。単球と好酸球が増加することがある。血液希釈で重症な正色素性生正球性貧血を呈する。 【血液像】 赤血球の連銭形成を認める。交差適合試験の判定が困難になる。異常な形質細胞性リンパ球が、少数認められる。連銭形成は赤血球が貨幣を連ねるように連続して結合している状態で、γ-グロブリン分画など高分子の血漿蛋白が増加している場合に見られる。 【骨髄像】 形質細胞、リンパ球、形質細胞様リンパ球、肥満細胞の様々な増加がみられる。リンパ系細胞中にPAS染色陽性物資がみられる。 【出血時間】【全血凝固時間】【PT】 血小板低下、出血時間と凝固時間延長とPT-INRの延長などを認める。 【血漿粘稠度】 基準範囲は1.4~1.8だが通常4.0以上に増加する。血液粘稠度は血漿粘度、ヘマトクリット値、赤血球変形能によって規定されるが、特に赤血球の集合と変形が大きく影響する。臨床的には高粘稠度を疑わせる頭痛、めまい、失神、血栓形成などの症状を持つ患者を見た場合に検査する。 【蛋白分画】 グロブリン分画に鋭いピーク、免疫電気泳動ではIgMとして同定される。IgMの量は3g/dL以上であるが正常なIgMは低下している。 【M蛋白】 3.0g/dL以上認められるが、腎排泄はほとんどない。寒冷凝集素あるいはクリオグロブリンの性質を有する。M成分は多発性骨髄腫などで腫瘍化し、単クローン性に異常増殖した形質細胞が産生するグロブリン分子で、完全なグロブリン分子、H鎖のダイマー、L鎖のダイマーがある。電気泳動ではγ-グロブリン分画にM蛋白質のみの場合は鋭いスパイク(Mバンド)がみられる。 【ベンスジョーンズ蛋白】 10%の患者に認められるが、単クローン性L鎖は70~80%に検出される。ベンスジョーンズ蛋白は単クローン性に産生された免疫グロブリンのL鎖で、56℃付近で白濁凝固するが90~95℃で再溶解する性質がある。分子量が小さいため殆どが尿中に排泄され、腎障害がない限り血中の増加は見られない。尿蛋白試験紙は主としてアルブミンと反応するためベンスジョーンズ蛋白の検出には使えない。熱凝固法によりこの蛋白の存在を疑えば、免疫電気泳動で確認する。臨床的には多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症、Amyloidosis、単クローン性免疫グロブリン血症などで測定する。 【免疫グロブリン】 患者の50%はIgM分子の巨大効果で過粘稠度症候群を起こし、口腔や鼻腔からの出血がみられる。神経障害、視覚障害、うっ血性心不全やクリオグロブリン血症を認める。半数の患者で、正常な免疫グロブリンが減少する。 【クームス試験】 IgMパラプロテインにより陽性となる。 【寒冷凝集反応】 認められることがある。寒冷凝集素が認められた場合、直接クームス試験が陽性となる。 【骨髄生検】 細胞成分が過多で異型性を示すリンパ球と形質細胞の広範囲の浸潤が認められる。肥満細胞も増加している。約50%の患者では肝や脾にも浸潤を認める。 【リンパ節生検】 悪性リンパ腫の像を呈し、形質細胞の性質を持つ高分化型リンパ球性リンパ腫の形態を示す。 【腎機能検査】 腎機能低下の頻度は骨髄腫よりも低い。 |
検体検査以外の検査計画 |