疾患解説
フリガナ | マンセイヘイソクセイハイシッカン |
別名 | |
臓器区分 | 呼吸器疾患 |
英疾患名 | Chronic Obstructive Pulmonary Disease(COPD) |
ICD10 | J44.9 |
疾患の概念 | 呼吸器学会の定義では「有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応に基づく進行性の気流制限を呈する疾患である」としている。以前は、肺気腫型と慢性気管支炎型に分類されていたが、最近は両者を一つにしてCOPDと呼ぶ。COPDに伴う最も一般的な病態は、肺気腫と慢性気管支炎である。病因としては、炎症、肺での蛋白分解酵素と抗蛋白分解酵素の不均衡、酸化ストレス、アポトーシスがあげられている。 |
診断の手掛 |
40歳以上で、長期にわたる喫煙歴(一日20本/日以上を20年)がある患者が、湿性咳、息切れの症状を訴えたら本症を疑う。呼吸困難の症状は、進行性、持続性、労作性で、50歳後半に達する前に発症する。進行すると夜間の酸素不足により起床時に頭痛を訴えるようになる。ばち指が見られるときは、肺癌を疑い検査を進める。 【診断基準:日本呼吸器学会】 A.診断の手引き:下記1~3の臨床症状のいずれか、あるいは、臨床症状がなくてもCOPD発症の危険因子、特に長期間の喫煙歴がある時には、常にCOPDである可能性を念頭に入れて、スパイロメトリーを行うべきである。スパイロメトリーはCOPDの診断において最も基本的な検査である。1.慢性の咳嗽 2.慢性の喀痰 3.労作性呼吸困難 4.長期間の喫煙あるいは職業性粉塵暴露 B.診断基準:Aの診断の手引きを参考にしたうえで、1.気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーでFEV1/FVC<70%を満たすこと。 2.他の気流制限を来しうる疾患を除外すること。 C.鑑別を要する疾患:気管支喘息、びまん性汎細気管支炎、先天性副鼻腔気管支症候群、閉塞性細気管支炎、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、肺リンパ脈管筋腫症、うっ血性心不全。 |
主訴 |
息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 口すぼめ呼吸|Pursed lips breathing 頭痛|Headache/Cephalalgia 咳|Cough 喘鳴|Wheeze/Stridor 体重減少|Weight loss 痰|Sputum チアノーゼ|Cyanosis/Cyanopathy ばち指|Dubbed finger 頻呼吸|Tachypnea ビア樽状胸郭|Barrel chest フーバー徴候|Hoover sign 慢性咳|Chronic cough やせ|Weight loss 労作時呼吸困難|Exertional dyspnea |
鑑別疾患 |
肺癌|Lung Cancer 気管支拡張症|Bronchiectasis 気管支喘息 気胸 好酸球性肉芽腫 呼吸障害 肺結核|Pulmonary Tuberculosis 肺リンパ管筋腫症 びまん性汎細気管支炎 閉塞性細気管支炎 慢性気管支炎 喘息|Asthma 心不全|Heart Failure 先天性副鼻腔気管支症候群 塵肺症 |
スクリーニング検査 |
Chloride|クロール [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Eosinophils|好酸球 [/B] Erythrocytes|赤血球数 [/B] GFR|糸球体濾過量 [/U] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B, /B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B, /B] Leukocytes|白血球数 [/B] Neutrophils|好中球 [/B, /Sputum] Potassium|カリウム [/S, /S] Sodium|ナトリウム [/U] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
2,3-Diphosphoglycerate|2,3-ジホスホグリセレート/2,3-ジホスホグリセリン/2,3-ビスホスホグリセリン酸 [/RBC] Alanine|アラニン [/P] Aldosterone|アルドステロン [/P] Ammonia|アンモニア [/B] Arginine|アルギニン [/Muscle] Asparagine|アスパラギン [/P] Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/S] Cancer-associated Serum Antigen [/S] Carbon Dioxide Partial Pressure|動脈血CO2分圧/炭酸ガス分圧/CO2分圧/PCO2/PaCO2 [/B] Citrulline|シトルリン [/Muscle] Cytokeratin 19 Fragment|サイトケラチン19フラグメント/シフラ/シフラ21-1/CYFRA [/S] Desmosine [/U] Elastin Peptide [/S, /U] Eosinophil Cationic Protein|好酸球塩基性蛋白/好酸球顆粒蛋白/好酸球陽イオン蛋白/好酸球陽性荷電蛋白 [/S, /Sputum] Gastrin|ガストリン [/BAL Fluid, /S] Glutamic Acid|グルタミン酸 [/Muscle, /P, /RBC] Glutamine|グルタミン [/P, /Muscle] Immunoglobulin A2|免疫グロブリンA2 [/Sputum] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] Isodesmosine [/U] Lactoferrin|ラクトフェリン [/Sputum] Leptin|レプチン [/S] Lipids|総脂質 [/RBC] Lysylpyridinoline [/U] Myeloperoxidase|ミエロペルオキシダーゼ抗原/MPO抗原 [/Sputum] Nitrate plus Nitrite [/S] Ornithine|オルニチン [/Muscle] Oxygen Partial Pressure|動脈血O2分圧/酸素分圧/O2分圧/PO2 [/B] Oxygen Saturation|酸素飽和度/O2飽和度 [/B] pH|尿pH [/B] Pyridinoline|ピリジノリン [/U] Plasma Renin Activity|活性型レニン/血漿レニン活性/総レニン [/P] Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor-p55 [/S] Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor-p75 [/S] Thiol Groups, Total [/S] Tryptase|トリプターゼ [/Sputum] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] Viscosity|血液粘稠度/血液流体特性検査/血液流体変動能検査 [/S] Volume [/P] α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/S] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/S] α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [/S] β-Lipoprotein|β-リポ蛋白 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【α1-アンチトリプシン】 若年発症、肺底部に有意な肺気腫、喫煙歴のない慢性気管支炎、特発性の気管支拡張症の患者は測定する。低値であれば遺伝子型を調べる。 【経皮的動脈血酸素飽和度】 低下する。 【動脈血ガス分析】 PaO₂は低下し、PaCO₂は増加する。 PaO2は動脈血中に溶解しているO2の分圧で、その値は血液中のO2の利用度を反映している。血中O2濃度低下やCO2濃度上昇があれば、肺のガス交換機能や換気運動の障害を考える。体内の酸素予備能は1リットル程度で極めて少なく、数分の供給停止は死にいたる。臨床的にはpH、PCO2、So2、HCO3-などと同時に測定し、肺のガス交換能を評価するPaCO2は動脈血中に溶解しているO2の分圧で、その値は血液中のO2の利用度を反映している。血中O2濃度低下やCO2濃度上昇があれば、肺のガス交換機能や換気運動の障害を考える。体内の酸素予備能は1リットル程度で極めて少なく、数分の供給停止は死にいたる。臨床的にはpH、PCO2、So2、HCO3-などと同時に測定し、肺のガス交換能を評価する。 【呼吸機能検査】 本症に必須の検査で、1秒率が70%未満なら気流制限ありと判断する。病期の分類は%1秒率を用いる。 【フローボリューム曲線】 フローボリューム曲線で最大呼吸速度低下、下降脚が下に凸の曲線、勾配の平低化を確認する。 【CBC】 診断的価値は殆どないが、ヘマトクリットが48%を超えることがある。 【喀痰】 黄色または緑色の喀痰は細菌のコロニー化または感染を示す。 【青いマス(blue bloaters)】 低酸素血症とCO2分圧の増加を認める。患者はやせてチアノーゼ様の顔色のため「青いマス」とよばれ、早くから肺高血圧、肺性心と高炭酸ガス血症が起こり重篤な低酸素血症になる。 【赤いフグ(pink puffers)】 軽度の低酸素血症、動脈血pHおよびCO₂分圧が正常の患者は樽状の胸郭、口をすぼめた呼吸、二次性の多血症で「赤いフグ」と呼ばれる。 |
検体検査以外の検査計画 | 呼吸機能検査、胸部X線検査、高分解能CT検査、心電図検査、心超音波検査、運動負荷試験 |